店  名
 手打ちそば 一会寮
食べた日
2006/04/05

住  所
 秋田県秋田市河辺和田字坂本南257
営業時間
11:00〜16:30

電話番号
 018-882-2903
定休日
月曜日

店外観
二八そば 細打
二八そば細打アップ
蕎麦の実
前  説

 B食クラバーの、秋田のソバ再発見の旅は、マダマダ続く。秋田県内にも美味しいそば屋って結構あるのだなと、何様のツモリでか思い直したB食クラバーだが、それらは秋田市外の結構時間がかかるトコロにあり、なんだかチョットソバ食べたい気分になっちゃったよ!ってな時に気軽に出掛けられる距離にはない。もっと近いトコロにないかなぁ〜と考える、ドコまでも無精なB食クラバーに、クラバーRさんの御友人から、耳寄りな情報が届いた。

 全国各地で、まるで廃藩置県の様に展開されている市町村合併の影響で現在は秋田市となっているが、ソレ以前は秋田市の隣に位置する河辺町だった場所にあるソバ屋が、どうやら美味しいらしい。その御友人は、日本はおろか、海外にもカナリ出掛ける機会が多く、当然の様に世界中の美味しいモノを食べ慣れているらしい。そしてマタ、無類なソバ好きであるとも。そんな方が美味しい!と言って教えてくれるトコロなのだから、美味しくないワケはない!と、思いを馳せるB食クラバー。

 ソノ店の名は一会寮。実は数年前から、ココのソバは美味い!と言う話は聞いていたのだが、特に理由もなく、遠ざけていた。いや、理由はあって、ソレはロケーションによるモノなのだが。こう言った味とは全く関係ない要素で店を選ぶ辺り、B食クラバーもまだまだ修行が足りない。

 1ヶ月で1年分の雪が降った上に、コレ以上の解り易さって無い!ってぐらいにストレートにネーミングされた平成18年豪雪も、ようやく収まりの気配を見せ始め、春めいた気分になって来た。実際には、2月の終わりくらいからまとまった雪など降っていなく、例え積もったとしても3日位で解けていた。そして残りの半分はポカポカ陽気の春。

 ハッキリ言って1週間で春と真冬の2つを体験できると言うコトは、例えばコパカパーナとシベリアを1週間で往復するツアーにでも申し込まない限り、コレからも滅多に無いであろう。いや、あって欲しくない。

 そんな春っぽい気分に誘われて、ツルッと爽やかなモノが食べたくなり、遂にと言うかようやくと言うか、一会寮に出掛ける時がやって来た。


Comment

 ツルッとした爽やかなモノを食べたい!と思っていたにもかかわらず、あいにく当日の天候は雨。爽やかさを求める胃袋と天気は正反対だがココは1つ、せめてツルッとしたモノを食べて、気分だけでも爽やかになろう!と言う、雨降りの運動会で、『皆の元気で雨雲を吹っ飛ばしましょう!』と言う校長先生の挨拶の様な言葉が頭に浮かぶ。或いは雨模様の結婚披露宴で親族の方が、『え〜、雨降って、地、固まると申しまして…。』とでも言う様な。

 色々言ってしまったが、前日の夜から、明日の昼はソバ!と決めていいて、100%ソバを食べるモノだと信じていた胃袋に、今更他のモノは流し込めまい。ココでニラレバ定食なんか放り込んだ日には、胃袋の反逆にあいかねない。等と藤子不2雄の書く短編SFみたいな発想をしてみたり。

 一会寮のある大体の場所は知っていたのだが、実際に行くとなると初めてだったので、駐車場に車を停めてから30秒位の間、あれ?ドコにあるんだろう?と考え込んでしまった。店も駐車場も国道に面していると言うのに何たる不思議。ソレと言うのもソノ駐車場は、他に何かの事業所や、数年間も空き家になっている元ビデオ店なんかと共通になっているからで、ソノ全てが、ウチはココにありますよっ!的な自己主張を一切していないからだ。

 辺りを見回すと辛うじて、一会寮と書かれた建物があるのだが、ソレは4畳半位のプレハブの建物で、その中でソバが食べられるとは到底思えない。やや途方に暮れながらソコから一歩踏み出してみると、『よぐ来たんしな』と言う文字が、まるで何かの暗号の様に書かれた、斜めに切られ、地面に打ち付けられている丸太を発見した。不思議な力に導かれる様に更に歩みを進めると、このエリアで今迄目に入ったモノとは種類の違う建物が、ソコにはあった。

 もしかしてココがソバ屋ですか!と、まだイマイチ信用できないのは、そのエクステリアが、アマリにもナチュラルで、いや、ナチュラルと言うか自然ソノモノに感じられたからだ。ホンの5m横には、秋田の幹線道路たる国道13号線が走っているとはとても考えられない。その建物の入り口に、一会寮の名前を発見した時は、もの凄く安心した。僅かな距離と時間を移動したダケでコンナ気分を味わえるとは。何かのアドベンチャーランドにでも迷い込んだかの様だ。

 まだイマイチ信用しきれていない手で扉を開けると、『いらっしゃいませ!』と言う元気な声が聞こえ、安心する。女性店員が2人と、あともう1人、男性店員がいる。あの男性店員がソバを打っているのだろう。

 昔の、母の実家を思い出す風情の店内。土間と木に心なしかホッとする。古めの畳や座布団も、何故か心地よい。良く他にもこう言う感じを売りにしている店があるが、それらとは違って、こんな店内も良いでしょう?とか言うお仕着せがましさが一切感じられない。切った丸太に、『とにかぐゆっくりしていってけれ』と書かれている様に、ヒタスラのんびりした気分になる。

 店員さんがやって来て、今の時間は二八の細打ちしか出来ないと言うので、ソレを頼むコトにした。本当はコノ店では挽きぐるみと呼んでいる、十割の太打ち麺を食べたかったのだが。辺りを見回すと、ソバを待つ間に使って下さいとか言って、将棋盤とか枕があるのも何とも言えない。桜の幹の一部に穴が空いていて、ソコから鳥のフィギュアが顔を出し、『覗くな』とか言っているのを見ると、思わず覗きたくなる。

 そうこうしている間にソバが到着したので、早速食べてみた。!正直、二八と言うコトでソレ程期待していなかったのだが、麺にはソリッド感が溢れ、素晴らしいコシがあってビックリ。コレほどのコシは十割でなければ味わえないと思っていたのに。更につなぎを使っている分、かえってマイルドさもある。コレは今迄食べに来なかったのが恨まれる美味さだ。

 コチラのソバ粉はモチロン自家製で、毎年その畑ではジャズなどのライブが開催されているそうだ。そんな催しがあるとは今迄一切聞いたコトがなかったが、真っ白い花を咲かせたソバ畑の真ん中で、バイオリンを弾いている女性の姿を撮影した写真を見ると、是非今年はソノ催しを体験してみたい!と思う様になった。

 そんなコンナで、ヤケに温かいムードに全身が包まれた帰り際。外が雨だったと言うコトさえ忘れていた。最初店に来た時、何かのアドベンチャーランドかと思ったコノ店の佇まいは、せめてソバを食べてる時間ダケは、下界のコトなどスッカリ忘れ去ったらどうですか?と言う、店からのメッセージの様に感じられた。