店  名
 うし亭
食べた日
2005/10/14

住  所
 岩手県盛岡市菜園1-11-20
営業時間
11:30〜14:00 17:00〜23:00

電話番号
 019-624-6945
定休日
日曜日

外観
ねぎそば
プラチナポークのカツ丼
前  説

 1年位前の、確かサライ(か、おとなの週末)だったと思うが、その雑誌に、うし亭は掲載されていた。日本全国の名物どんぶりを特集している号で、しかしソノ内容を見ると殆どが東京の店で、他には例えば、北海道のウニ丼・イクラ丼とか、名古屋のひつまぶし、広島のアナゴ丼など、誰でもが知ってる御当地丼が僅かに並ぶ程度で、だからコソ一層、ソノ報は一際輝いて見えた。

 東北地方で、他にもドコか紹介されていたかもしれないが、もし紹介されていたとしてもそれは恐らく海鮮系の丼で、まさか肉を使ったどんぶりなんてものが、東北で名物足り得るワケがない。もしあったとしても、米沢牛丼とか三梨牛丼とか、えっらい勘違いしたグルメ気取りの観光客が、そのままのウカレ気分で食べてしまう様な、そんなモノしかないんじゃ無いかと思っていたB食クラバーに、うし亭の記事は新鮮さを持って飛び込んできた。

 白金豚と言う珍しい品種の豚肉で作ったカツ丼が、庶民価格の\650で食べられると言う。白金豚とは『はっきんとん』と読み、英語で言うと、プラチナポークと呼ぶらしい。プラチナ。その響きから漂う、絶対的な高級感。ゴールド以上の希少性を持ち、世の殆どの女性を魅了する貴金属。

 残念ながらB食クラバーは、プラチナって響きから連想される世界とは程遠いトコロに住んでおり、普段の生活ではまず接点など持ち合わせていない。が、一番身近に感じられる言葉として、プラチナペーパーが挙げられる。

 その凄まじいバカリの人気により入手困難なイベントの入場券のコトだが、例えば02年のサッカーワールドカップの決勝戦等では\80,000のチケットが\200,000迄値上がりしたり、某ポンコツ超特急映画の上映会では、6,000のチケットが\50,000に迄値上がりしたりと、その希少さと貴重さについては、自分自身が入手にチャレンジしてみたりしているダケに、充分に理解しているツモリだ。

 一般的に貴重とされるモノとしては、ダイヤモンドとかゴールドとか真っ先に連想されると思うが、ダイヤモンドペーパーとかゴールドペーパーとか呼ばれずに、プラチナペーパーと呼ばれる部分にコソ、プラチナのプラチナたる所以を感じるコトが出来はしないだろうか。

 そんなプラチナの名を冠する豚を使用したカツ丼が\650とは、ニワカには信じがたい。プラチナってただ呼んでいるダケで実はそうでもないのかも?とか思いながら、うし亭についての興味は、B食クラバーの心の奥底に、ひっそりと格納されるコトとなった。


Comment

 それから暫く経ったある日、クラバーKと共に盛岡に出掛ける用事があった。迂闊にもソノ時は白金豚の存在を忘れており、なんだったか忘れたが、普段食べ慣れた何かを口にし、秋田に帰ってしまった。数日経った後、あぁ〜っ!そう言えばプラチナポークぅぅぅぅっ!と思ったのも後の祭り、目の前で一万円札がメラメラと燃えて行ってるのに、どうするコトも出来ない様な切なさに似た感情の高ぶりを覚えた。

 そんなエモーショナルパッションを抱き続けるコト数ヶ月。遂にリベンジのチャンスが訪れた。謎のRさんと共に、盛岡こども科学館へと出掛ける用事が出来たからだ。コレだ。ココを逃せば、また当分ソノ機会は巡って来ないであろう。盛岡こども科学館も大事だが、白金豚のカツ丼も大事。よく、男女関係の機微の中で、『私と仕事、ドッチが大事なのよっ!』とか言う言葉が女子から発せられて、答えに窮する男子の図と言うのは見かけられると思うが、マサにソノ状態。盛岡こども科学館と白金豚のカツ丼とドチラが大切なのか、そんな疑問を謎のRさんに投げ掛けられなくて、ホッとしている心境である。

 盛岡こども科学館で充実した時間を過ごした謎のRさん&B食クラバーは、次に舌と胃袋を充実させるべく、うし亭へと向かった。最近のB食クラバーは、知らない土地に行って新しい店を探す時、結構時間を浪費する。簡単に言うと、道に迷うってコトだが。

 しかし、例えば美味しくない店に入ってしまった時でも、他に何か面白い情報は無いかと店内を検索する習性のあるB食クラバー的には、道に迷うってコトも含めて、ソノ店で食事をする楽しさだと感じていると言う、他人からみると迷惑コノ上無い人間性を持ち合わせてしまっている。特に最近その犠牲になり続けているのが謎のRさんソノ人で、申し訳ないなと思いながらも、今度はどんな迷い道が待ち構えているのだろう!と、胸の奥底から込み上げてくる気持ちも抑えきるコトが出来ない。

 そんな感じで何気なく停めた駐車場の、道路を挟んだ向かい側に、うし亭はあった。さあコレから探すぞ!と意気込んでいた瞬間の、出鼻をくじく出来事に面食らうB食クラバー。

いや、ソコにあるのは『うし亭』じゃなくて、『うレ亭』なんじゃないだろうかと、看板を注視してみたが、何度目を擦って見直してみても、ソコには『うし亭』と書かれている。

 まだ気づいていない謎のRさんを煙に巻いて、『あれぇ〜、ドコにあるのかなぁ〜?』とか、知らんぷりして自ら迷おうかとか思ったりもしたが、目の前にプラチナポークがあるのかと思うと我慢出来ず、そしてソノ喜びを隠すコトも出来ず、うし亭目掛けて進んで行った。

 店内はテーブルが10ヶ位と、更にカウンターが10席位で、カナリの人数を収容できそうなのにも関わらず、そして時間は13:00を回っていたのに、1つのテーブルを除いて満席であった。平日の昼に、コンナに混んでいる飲食店を、秋田では見たコトがない。しかも13:00過ぎだと言うのに。秋田と盛岡のパワーの違いを、こんなトコにも感じてしまう。運良くその1つダケ空いたテーブル席に座る事が出来た。

 食べたいメニューは白金豚のカツ丼であるが、コノ店はねぎそばも評判だと言うので、ソチラも食べてみたくて仕方なくなった。しかし、カツ丼の他にラーメンを食べるなんて、運動部の大学生でもあるまいし、到底食べ切れないだろうと諦めかけた。

 しかしソノ直後、半ねぎそばと言うメニューが目に入った。コレを謎のRさんと分けるのならば、恐らく2人の胃袋に無駄なく収まりきるだろう。しかし、元々半分のねぎそばを、更に半分にする辺り、何と言う2人の胃袋の小ささよ!と言うか、店員になんて貧乏な2人組なの?って思われやしないかと少々冷や汗モノではあったが。

 念願の、白金豚のカツ丼到着。カツ丼と言えば半熟卵好きなB食クラバーであるが、ココのカツ丼は3/4熟。まぁ、コレもコレで良い感じ。長い時間の果て、ようやくめぐり会えた白金豚を口にする。しかし、若干柔らかい豚肉と言う以外、何も感じるコトが出来ない。

 ポケェ〜とした表情のまま固まるB食クラバーを見て、怪訝そうな表情を見せる謎のRさん。自分が今感じているコトを包み隠さず言うと、『コンナに柔らかくて、しかも色んな味がして美味しいのに何言ってんの!』と捲し立てる様に怒られた。

 実はコノ時B食クラバーは風邪を引いていて、欠落した味覚しか持ち合わせていなかったのだ。無念と言う言葉以外、思い浮かぶモノはない。悔しさを抑えながら脂身の部分を食べてみると、他の豚肉とは全く違う食感を得、ようやくと言うか色めき立つコトが出来た。

 異常に柔らかいのである。他の豚肉の脂身は、ワリと固いイメージがあるのだが、口の中に入れると溶ける!と言う程では無いモノの、それ程力を入れなくても噛み切れるのだ。

 さすが白金豚。そのプラチナの実力を、風邪を引いたB食クラバーも実感するコトができ、遅ればせながらであるが盛り上がって来た。しかしその頃には、カツ丼を食べ終わるタイミングでもあり、何て言うか世の中って、上手く行かないコトの方が多いよなぁ〜と、人生の無情さを冷めざめと感じるに到った。

 そんなワケでねぎそばも、美味しいとは思ったのだが、本来の味を100%満喫したとは到底言えるハズもない。その実力を隅々まで味わうために、もう1度行かなくてはならない!ってコトは、言うまでもない。