イツモ出掛ける度に、正規の料金の他に御祝儀をくれる太っ腹なクライアントがいる。ここんとこアマリお呼びがかからなくて寂しいな（フトコロが。）と思っていたトコロ、久々にお呼び出しがかかった。やったぁ！と心の中では飛び跳ねながら、表面上はつらそうな雰囲気を繕って出掛けるコトにした。

　仕事の内容は書いてもしょうがないので省略。案の定御祝儀をくれた。フトコロもググっと暖まる。このコトを何げに食いしん坊隊隊長に話したトコロ、表情がイキナリ変わった。目の大きさが通常の1.5倍。頬の色もバラ色に上気している。

　突然、『おーやーつっ！おーやーつっ！』と片腕を振りながら食いしん坊隊隊長は低い声で唸りだした。呆気にとられてしばし呆然と見つめていると、アピールが足りないと思ったのかどうか次に、『けーえーきっ！けーえーきっ！』と自分の欲しいモノを直接訴える手段に出てきた。『子供か！』とか思ったが、もう何が何でもおごらせるツモリらしい。結局車2台で出掛けるコトとなった。

　複数台の車で同じ目的地に向かう場合、信号などではぐれたりしないように気を使うモノだが、今回の場合そんなコトまで気にしていられない。逆に信号で引き離したいぐらいである。と思っていた矢先、黄色信号が飛び込んできた。アクセルを踏み込んだのは言うまでもない。食いしん坊隊隊長の車がルームミラーの中で見る見る小さくなっていく。

　ま、どうせ目的地まで5分位だし、現地でチョット待っていれば良いだろ！とか思って運転していたら、後から物凄い勢いで接近してくる車がある。やばい！あおられてる！と思い、車線を変更しようとしたが、良く見るとソレは食いしん坊隊隊長の車だった。チーズケーキに対する物凄い執念を感じる走りだった。ビビッた。

　店の前に着いて、『良く追いついたな。』と話したら、『ぅあぁ〜ん。酷いですぅ〜。』と運転席でつぶやきながら走ってきたのだそうだ。その話が本当らしいコトは、その走りが証明している。チーズケーキに対する物凄い執念を感じた。おかしかった。

　店の中にはいろんなチーズと、おそらく店主の趣味であろうワインがおかれていた。チーズケーキを発見する。何やら変わった外見をしている。そして小さい。値段は\300。コレで\300とはチョット高いな、と思ったが、食いしん坊隊隊長のチーズケーキに対する物凄い執念に気圧され、買うコトにした。食いしん坊隊隊長の顔に至福の笑みが浮かぶ。

　肝心のチーズケーキはどんなかと言うと、レアチーズケーキの表面をバーナーで焦がしている感じ。そして激ウマ。チーズが違うのか？アノ値段ではそう度々買うワケにも行かないが、是非ともリピーターなりたい気分である。今度は何か適当な理由を付けて、食いしん坊隊隊長におごらせるコトにしよう。