前　　説

　　2002年東京B食第3弾。GW前のある日、B食クラバーKが、MILESと言う雑誌で『ニッポンの焼き肉』と言う特集を見たと言って、やたら熱く語っていた。

　コレを食べなきゃ焼き肉じゃない！と言わんばかりだ。一緒にその雑誌を見てみたが、特にそそられるモノは無し。何がB食クラバーKをそんなに熱くさせるのか不思議でならない。パラパラとページをめくる指先が止まったのは、そんな時だった。

　ステーキ肉をチョット薄目にスライスした様な肉が、今正に網に乗っかろうとしている、その瞬間の写真。何コレ？と思った。しかも見事に霜降りが掛かっている。今迄何件も焼き肉屋を渡り歩いてきたが、コンナ肉にはお目に掛かったコトがない。

コレはカナリ変わった肉だろうと思い、記事に目をやると、神戸牛、松阪牛の生後24ヶ月から28ヶ月の処女牛の肉を使用しているとのコト。

　だからどうなんだってコトは良く解らないのだが、かなりコダワリ抜いた店には違いない。東京に行った暁には是非コノ店へ！と心は急速に傾いていった。

Comment

　ココ数年で東京の方向感覚はカナリ消えかかっている。雑誌で地図を見た時は、大体コノ辺だろう、と当たりを付けていたのだが、実際に行ってみると、かなり大体過ぎだったコトが判明した。渋谷駅からそんなに離れていないハズなのだが、幾つかの道路が放射状に延びているので、違う道に入ると一生見つからない。30〜40分掛けてようやく見つけたその店は、まともに行けば、駅から10分も掛からない場所にあった。

　店内は小上がりにテーブルが4つ。椅子のテーブルが3つ。あとはカウンターが5席位と、思っていたよりも少々小さい作りだった。カウンター以外は皆埋まっていて、我々は最後の椅子のテーブルに着いた。

　早速メニューを見る。雑誌で見たあの肉を食べよう！と思ったのだが、メニューに写真が載っていなく、どれだか解らない。おそらくコレだろう！とアタリをつけ、頼んでみたが、今日は売り切れだとのコト。残念。せっかく勇気を出して\3,000とか書いている肉を頼んだのに。

　これじゃイツモの焼き肉と替わらないんじゃないかなぁ〜と思いながら、タン、ロース、カルビと、イツモ通りのオーダーをする。レモン汁が小皿になみなみと注がれているのが、期待をそそる。

　出てきたタンは、初めて見る形をしていた。とにかくデカイ。そして厚い。こんなタン大丈夫ですかぁ〜？と思いながら口にしてみると、見た目の大きさも厚さも、全く気にならない程柔らかかった。想像以上の美味しさ。って言うか、タンってこんなに美味しいモノなのか？と認識を新たにした感じ。

　次に出てきたロースとカルビは、ハッキリ言ってどっちがどっち何だか区別が付きませんでした。カルビのようなロース。じゃぁドッチかイッコだけ頼めば良かったのだが、とにかくもう、霜の降りかかったロースには、今迄食べていたのはロースじゃないよ！って言われても納 得するしか無い説得力があった。

　B食クラバーKと、会話をしながら焼いているのだが、そのペースが気に入らなかったらしい。突然店の親父がやって来て、『はいコレ焼けてますよぉ〜』と言って、網から取り皿に肉を移し替えた。更に、まだ焼いていない肉を網に乗せ焼き始め、『はい、どうぞぉ〜』とか言って、我々のテーブルを仕切始めた。

　いつもB食クラバーKは、肉に良く火を通してから食べている。以前に比べればそうでも無なってきたのだが、店の親父から見れば、まだまだ修行が足りんって感じに見えたのだろう。

　牛肉のささみを頼む。コレも初めて見る肉だ。焼くのはヤッパリ店の親父。我々には任せておけないらしい。コッチとしても楽だし、食べ頃で皿に乗っけてくれるし、有り難い。店の親父によると、この肉はナカナカ取れない部位で、三越とか松坂屋で買うと同じ量で\5,000とかするらしい。確か\1,500位で出していたと思う。

　ぱっぷHOUSEでは、店の親父が直接築地の市場に行き、そこで品定めをしてくるので、珍しい肉、美味しい肉を、格安で提供できるのらしい。ホントに、今迄他の店で食べてきた牛肉は、あんなの牛肉じゃないよ！と素直に感じてしまう。

　調子に乗ってホルモンも頼んでみた。今度は親父は焼いてくれないみたいだ。で、今迄の感じでチョットだけ焼いて食べようとしたトコロ、今度は女性従業員が飛んできて、『これはホルモンだからチャンと火を通さないと駄目です！』と言って、メチャクチャ焼き始めた。トーシロさんは手を出しちゃいけませんゼ！と言われている様な気がした。

　その女性は無言のまま5〜6分も焼いていたと思う。我々も無口になった。その間にホルモンは、最初の大きさの半分位になっていった。この女性はこのままホルモンを蒸発させようとしているんじゃないだろうな？と思った頃、ようやく『どうぞ！』と言ってくれた。食べてみる。が、コレは良く解らない。女性従業員には悪いコトをしてしまった。

　隣のテーブルには、4人の（おそらく）大学生だと思われるグループが座っていた。彼らは食い放題コースにしているようだ。5人から受け付けますとメニューには書いていたが、4人でも問題ないようだ。そのコースは\3,500。こんな美味い肉を次から次へと食べ続けて\3,000かよ！と思ったが、こちらは2人なので仕方ない。

　結局、\12,000程の会計をし、ぱっぷHOUSEを後にした。しかし、我々の心には後悔の2文字は無く、只々幸せな気分に満ち足りていた。その後の渋谷の夜の街並みが、更にキレイに見えたのは言うまでもない。

後　　説

　この日はシティーボーイズのライブ当日。大笑いしたのでお腹も空いた。ライブ会場で配られたチラシの中に、渋谷PARCOで中野宏之のアートの展示会が開かれていると書かれたモノを発見。チラシの写真には麻生久美子のアップの写真が載っている。ライブ後、特に何をしようと決めていたワケでもないので、早速渋谷まで出掛けた。

　展示会は約半分が麻生久美子の写真。カナリ満足。しかしずっと立ちっ放しのため、お腹の好き具合に更に拍車が掛かる。実は今回の東京滞在中、何度かぱっぷHOUSEに行こうと思っていたのだが、少々のアクシデントが重なり、行けずにいた。しかし、お腹は空いているし、渋谷にいるし、今日こそぱっぷHOUSEへ行くぞ！と、これがB食クラバーKとの合い言葉になった。

　途中、物凄い人混みにブチ当たった。コカコーラが何かをしているらしい。何だか良く解らないまま前に進むと、1人の女性がステージ中央で何かインタビューをされていた。W杯のイベントのようだ。芸能人なのかな？と思ったが、見たコト無い顔だし、ヤケにサッパリした顔だし、街行く素人さんだろうと思った。しかし彼女を写そうとしているカメラが異常に多い。

　誰なんだろう？と思い佇んでいると、後から知らない人に『誰がいるんですか？』と聞かれた。正直に『解りません。』と言うと、その人はビックリした表情と共に、明らかに【誰なのかも解らないのに見てんのかよ！】と呆れた表情をしていた。非常に情けない気持ちになった。

　外れくじを引いた！と思ったらしいその人は、次なる情報源を求めて歩き始めた。我々も役立たずのまま終わっていられない！と思い、その辺にいるコカコーラの服を着た人に聞いてみた。すると、今そこでカメラのフラッシュを浴びまくっている人は、真鍋かをりだと言うコトが判明した。

　見事に芸能人のオーラ無し。大抵、TVでみるとフツーの人に見えても、実物をみると、その周りだけ空気が違って、なんだったら色まで付いて見えるモノだが、真鍋かをりにはそれが全くなかった。横にいるインタビュアーの女性の方がオーラを出していたし、その辺を歩いている女性の方がよっぽど良い感じに見えた。

　何だかなぁ〜、と思っていると、後にいた男子高校生らしきグループが、『あっ、真鍋かをりだ！チョーカワイイじゃん！』と大声を出していた。コノ時代、何だかなぁ〜って思われるのは真鍋かをりでは無く、どうやらB食クラバーの方らしい。こうして、時代のメインストリームから徐々に取り残されていくのかと思うと、少々寂しい様な気がした。

Comment Sesion#2 at 2009/08/21

　クラバーRさんと共に東京に出掛けるコトになった。仕事と関係無しに東京へ足を向けるのは何年振りのコトだろうか。久し振りに東京の地を踏むに当たり、ドコでゴハンを食べるべきかと考えるモノの、今回の東京行きは目的地コソ少ないけれども、一ヶ所当たりの滞在時間がカナリ長いだろうと予測された。

　まるで前世の記憶か？ってぐらい薄っらとなった東京の土地勘も凄まじく怪しく、予定を立てるのに全く目処を立てるコトが出来ない。以前は毎週の様に更新されていたB食クラバーの脳内東京ガイドにも、年単位で新しい情報が入ってきていない。汐留シオサイトや東京ミッドタウンなど、名前は知っているモノのドノ辺にあるのかサッパリ解らない。

　そんなワケで慌ててB食クラバー脳内東京ガイドを更新すべく色々な書籍や雑誌等を見てみるも、イマイチおニューな情報は見つけるコトが出来ない。大雑把に言うと、B食クラバーが既に知っている情報の中から新しいモノだけを拾い上げるのが難しいと言うか、よりハッキリ言うと以前から知っている店を超えてB食クラバーの胸にグッと迫って来ない感じで。

　さて、どうしたモノかなぁ〜と考えるに辺り、アノ店で食べて以来、ドノ店で食べても満足できないよ！って体に変身させられた焼肉店、ぱっぷHOUSEへ行ってみよう！と思い立った。クラバーRさんは初めてだと言うし、コレ以上の選択肢は考えられない。

　しかし、只でさえ手狭な店が（失礼）最近ではTVでも紹介されまくっているコトもあって予約しなきゃ入れない、って言うかソンナとこスっ飛ばして予約もままならない！なんて状況になっていたらどうしよう？と若干焦る。

　コンナ時はモチロン、慌てず騒がず店に予約の確認をするのが一番だが、もし空いていたとしても、何時に店に行く事になるか見当が付かないと言うスケジュールだったので（ソレをスケジュールと言っても良いモノか）予約の電話すらままならない状況だった。

　思い付きで東京に行くコトにしたのに、ゴハンは予約ってチョット違うよね？なぁ〜んて自分に理由付けし、もし一杯で入れなかった時には、焼き鳥の美味しいアノ店へ行こう！等と、自分の手持ちの札を一枚一枚ソノ場で切る作戦に出るコトにした。

　久し振りの東京では色々とあったモノの、それでも一応スケジュール通りに行動出来ていた。ザックリしていると思っていたケド、案外緻密だったのかな？とか思うと、何だか今度は自分がスケジュールに支配されつつ行動していた様に感じられて窮屈に。

　会議中の夕モリが聞いたら、泣いて喜びそうな感じがしないでもないが、さぁようやく晩ご飯だ！と、一日中東京を歩き回って疲れた足に、もう一踏ん張りの力を込めて、はっぷHOUSEへと急いだ。

　店に着くと、行列で並んでいる様には見えない。あ、入れるんだ。ラッキー！とか思ったが、丁度店内満員で札止めだった。女性店員さんが出て来て、そろそろ1組帰りそうだから少し待てば入れるとのコト。やっぱりラッキー！と思い、渡されたメニューを見ながらしばし待つコトにした。

　15分程で案内して貰えたが、ソノ間にも2〜3組のグループがやって来て、立って待っている我々の姿を見ては『あぁ混んでるね』と言って諦めて帰って行ったので、ホントにアノ時間に着いたのは、ラッキー中のラッキーだった様に感じられる。狭いテーブルで焼き肉を楽しんでいた家族連れが広いテーブルに移り、空いたトコロに座らせて頂いた。

　待っている間に、何を頼むかは大体決めていた。腹減り＆疲れがダブルコンボでピークに達していたので、ソッコーで注文する。マズはアルコール。一日の無事を祝って＆希望通りぱっぷHOUSEで焼き肉を食べられたコトに感謝して乾杯！

　最初に頼んだのは、ココに来たら必ず食べて頂きたい牛タン。さあ、他との違いを見よ！とバカリに鼻息を荒くしていたB食クラバーの前に現れたのは、以前の訪問時とは全く違う、デカくも無く厚くも無さそうな、言ってしまうと他の焼肉店で頼むのとソンナに大差が無いルックスの牛タン。困惑の色を隠せないB食クラバー。ココに辿り着く迄に、他店とはココが違うから！とクラバーRさんに対して力説していたB食クラバーの目が泳ぎまくっていたコトに、ソノ時のクラバーRさんは気が付いていただろうか？

　動揺を抑えつつも、隠し切れない焦りに震える箸先で牛タンを摘み、網に乗せる。いやぁ〜ようやく食べられるね、良かったね？とか言って焼き上がり迄の間を繋ぎつつ（クラバーRさんにコノ牛タンのドコが他と違うのかと質問させない意図もある）取り敢えず食べてみる。すると、以前と変わらない柔らかさが口の中一杯に広がる。いや、火を通す前の状態から考えると、ソレ以上かもしれない。よっしゃー！と、口・食道・胃袋が、順番にガッツポーズを決めていく。クラバーRさんも柔らかさに驚いている。

　続けざまにカルビ・レバーなどを頂いて、ヤハリ今迄に食べたコトがない味だ！と言って瞳を輝かせているクラバーRさんも大分暖まってきたトコロで、ぱっぷHOUSEに来たら頼まないワケにはいかない、って言うかコレらを食べなきゃぱっぷHOUSEに来た意味が無い！と言っても過言ではない、希少部位を頂くコトにした。

　しかしココで1つダケ問題が。前回訪れた時迄は、壁やメニュー表に記載されていた金額がドコにも見当たらない。普段ならば、どうなってんだよコレは一体よー！とか言ってしまいがちなトコロだが今日は違う。一日中歩き回って疲れた体全体に、くまなく行き渡り染みまくっているアルコールの酔いと、美味しい肉を食べていると言う高揚感が相まって全く気にならない。

　最初に応対してくれた女性店員さんを呼んで、「ミスジ」がマダ残っているかどうか聞く。モチロンその際に、幾らするのかとスマートに聞く事も忘れてはならない。1枚\1,000だと言うので、マズはソレを頼んでみた。

　しばし待ってミスジの到着。すると、平らで薄いルックスなハズのミスジが、何だか妙に盛り上がっている。おかしいなーと思っていると店員さんが、先程待って頂いたのでサービスですと、ササミ肉をサービスしてくれたのだ。うっひょー！ビバ☆東京！！ブギーなリズムで心も躍るぜっ♪

　他人に冷たかったり、物価が高かったりしてイマイチ暮らしづらいイメージがある東京だケド、こう言う部分が素晴らしい。（秋田にはコノ辺が欠けている。）いやしかし、たった15分待ったダケの客に（おそらく）\1000以上するであろう肉をサービスで出すなんて、何と気っ風の良いコトであろうか。今後B食クラバーも、チョットずつで良いから見習っていきたい。

　見事なサシが入った霜降り具合。先日秋田市内の焼き肉屋で高級霜降り肉とか言うのを食べてみたが、脂身がくどく感じられてどうにも受け付けず、最終的には焼いている網の上で油を絞り切ってから食べると言う罰当たりな所業をやってのけたB食クラバーであるが、比べるのも失礼な話で申し訳ないのだけれども、ソノ店とは全く違う、上品な甘味が口の中であっと言う間に溶けて無くなった。

　あぁ、あと5秒で良いから口の中に留まっていて欲しいのに、と思いつつ潔く消えていくソノ様は、マサに夏の夜空に大輪の花を咲かせて人々を魅了してやまない花火の様でもある。

　あんまり希少部位ばっかり食べていると、普段安い冷凍肉しか食べ慣れていないB食クラバーの舌が壊れてしまいそうな感じがしたので、一旦ツラミ・ハラミと言った部分を頼み、ヤッパ米も食べなきゃねって思いつつ石焼ビビンバなんかも食べてしまったら、急激にお腹が一杯になって来た。

　あっれ、おかしいな。後最低3つは希少部位を頼むつもりでいたのに！と、無理は承知でもう一品頼もうかどうか迷っているトコロへ本日はラストオーダーだと言うアナウンスが。スグに決めるのは無理そうだったので、お腹具合と相談して今回はココで止めるコトにした。次回訪れる時は、もう少し希少部位へのウェイトをかけるコトにしよう。

　トコロで、最初に案内してくれた後、終始我々を担当してくれた女性店員さんは、どうやらぱっぷHOUSE本店の2代目店長さんだそうで、だからコソあんなキメ細やかなサービスを提供してくれたのだろう。そう言えば以前にも他の店で（飲食店とは限らない）同じ様にやたらと腰が低くて丁寧な応対をしてくれる店員さんに会ったコトがあって、新入社員かなんかかな？って思っていたら、後でソノ人が跡継ぎであるなぁ〜んて解ってビビッたコトが数度あったのを思い出した。

　東京に住んでいた時のB食クラバーは、自分で言うのも何だが結構ツンツンしていたので、そう言う人に対してそう言う態度を取っていたコトを思い返すと火が出る程恥ずかしい。角の尖った石が川の流れに身をまかせ、上流から下流へたどり着くと角が取れて丸くなって行く、ソンナ様を自分自身と重ねては深い感慨が。

　ソレにしても、かの女性店長が2代目って言うコトは、アノ親父の娘さんってコト？とか思うと、親と子の似無さを実感したと言うか、とても親子に見えない！って言うか、似なくて良かったね！って言うか、生命の神秘を感じたって言うか、とにかく、〆のシャーベットを頂きつつ、世の中に起こる森羅万象的なコトに思いを巡らせざるをえない一夜となったコトは確かである。

• 上タン　\1,600
• カルビ　\1,200
• ハネシタ　ミスジ　イチボ　等希少部位の数々　時価