店 名
酒楽亭 ももん

 

 

 

住 所

秋田市山王新町10-18

食べた日
2004/02/26
TEL.

018-865-1888

日曜・祝日定休
営業時間

11:30-13:30
17:30-23:00

前 説


 ももんと言う居酒屋があるコトは、ちょっと前から知っていた。生きの良い地元の食材を使
った料理を振る舞い、気に入った日本酒のみを出すコダワリの店だとドコカで聞いた様な気
がする。

 おそらくブンタ風の寡黙な板前が、ガッチリした体を少々猫背に折り曲げ、お客さんが、
『大将、コレ美味しいね!』とか言うと始めて、はにかんだ様な笑顔を見せる。そんな光景が
繰り広げられる店だと、勝手に想像していた。

 ヒョットしたら弟子もいるかもしれない。角刈りとは言えず、丸刈りがチョット伸びた位のヘ
アスタイルをした若者が、厳しい修行や悪役みたいな顔のって言うか、完全に悪役の先輩
達と一所懸命に、ボソボソした声で、故郷に残してきた母親に『前略、…』とか言う出だしの
手紙を書きつつ、『あ・いやぁ〜』とか良いながら頑張っている姿が目に浮かぶ。って、その
場合の板さんは辰兄か。

 彼の周りにはくたびれ気分でシニカルなコトを言うトラブルメーカーの従姉妹がいるかもし
れないし、ある時は恋人に向かって、『カスミちゃん、そりゃ無いッスよ!』とか言って、情け
ない声を出してシビレまくっているかもしれない。

 なぁ〜んて言うチョットの懐かしさを一方的に感じながら、行ってみたいなとは思いつつ、
ナカナカ足が向かずにいた。何て言うかB食クラバーとしてはカジュアルに食事を楽しみた
いし、ハイクラスさは求めていない。

 しかし、ワリと最近になって、ランチもやっていると言う情報を女王様から頂いた。夜はチョ
ット駄目かもしれないが、昼ならば気軽に行けるかもしれない。その瞬間ももんは、B食クラ
バーのランチ行きたい店チャートを、産卵期のシャケの川上りを彷彿させる勢いで急上昇。
イキナリ上位にランクインした。

Comment
Session #1


 元免停さんが、昼近く迄会社にいる。大抵は朝の時間帯を過ぎると、次に顔を見るのは翌
日の朝なのでコレは珍しい。更に珍しいコトに、昼ゴハンを食べよう!等と話し掛けてきた。
どう言う生活サイクルなのか解らないが、元免停さんはアマリ昼ゴハンを食べないらしい。ら
しいと言うのは当然のコトながら、その時間帯にアマリ一緒にいるコトが無いから、本人の
話を聞いて判断しているダケなのだが。

 その時とっさに思いついたのがももん。居酒屋のランチに一緒に行くならば、コノ人をおい
て他にいないであろう。ヒョットして気に入ったら、夜も連れてって貰えるかもしれないと言う
スイートな計算が働いたのは言うまでも無い。

 ももんに到着。カナリ趣のある店構えと言うか、どちらかと言うと少々ワイルドな、野趣溢
れた風情を醸し出している。思ったよりも格式張った店では無いかもしれないと、安心して
扉を開けた。店内には4人掛けのテーブル席が2つ。6人程のカウンター。更に奥には小上
がりのテーブルが2つ。一般的な居酒屋風の佇まいにホッとする。3組程の先客がいたが、
まだ食べ始めいる人はいない。

 コノ店の主人に興味があったのだが見当たらず、奥さんと思しき人物が、1人でヤタラ忙し
そうに動き回っていた。我々が座ったテーブルに、お茶とおしぼりを置くモノの、一向に注文
をとりに来る気配がない。そうこうしている間に次々とお客さんが来始め、それらの応対に
追われている。普段ならココで、『あのぉ〜注文良いですか?』等と少々頼りなげに聞いて
みるのだが、その動作には声を掛ける隙が見当たらない。ヒョットしたら昼のメニューは1品
のみで、テーブルに付いたら自動的にそれが出てくるシステムなのかもしれないと脳内解
釈。しばらく様子を見てみるコトにした。

 そうしていると、痺れを切らしたらしい他のお客さんが、女性店員に向かって何かを喋って
いた。それに対する返事は、『すいません、1人でやってるモンで。』であった。やはりカナリ
レッドゾーンギリギリで踏ん張っていた様である。声を掛けなくて良かったとホッとした。

 ようやく料理が到着。事前に仕入れていた情報からして、どんな鮮のモノが出てくるのか
異常に期待していたのだが、出て来た料理は、麻婆豆腐とも何とも言えない『ブラックペッ
パーのタップリ効いた私の作ったあんかけ豆腐』と言う名前が最も相応しい内容であった。
What a night!今夜だけきっと?BABY,とりあえずもっと、もうチョットだけ何か足りない、こ
しゃくなレディ!等と、日本の某AORバンドの楽曲が次から次へと頭に思い浮かぶ。

 もしかしたらコノ豆腐が完全手作りで、他とはチョット違うよ!ってなモノなのかもしれない
が、ソコまでB食クラバーの舌は肥えていない。評判が良いのは夜ダケで、昼はコンナ感じ
なのか?大体主人はいないのか?色々な疑問が脳裏を駆け巡ったが、我々には解らない
事情もあるのだろうと考え、店を後にした。

 少し時間が経つと、あれ?でも女王様は好反応だったよな?と気になり聞いてみた。どう
やら普段は昼の時間帯にも主人がいて、とんかつ定食とか海鮮丼とかあるらしいコトが解っ
た。やはり何か事情あって、あの様なコトになっていた様だ。もう1度、今度は主人のいる時
に来なければなるまいと、ももんへの思いはキャンプファイヤーの残り火の様にブスブスと燃
え続けていた。

Comment
Session #2


 元免停さんが、昼近く迄会社にいる。大抵は朝の時間帯を過ぎると、次に顔を見るのは翌
日の朝なのでコレは珍しい。朝からズ〜ット5、6社相手に電話し捲っていて、その声が煩わ
しくて仕方ない。その内の1本の電話が、良くは聞き取れないが、仕事の内容でないコトは
明らかで、好い加減にしろ!もう喋るな!とか、寸前まで口に出かかったトコロで電話が終
了した。電話の相手はどうやら準B食クラバーN3さんの様で、3人で昼ゴハンを食べよう!と
言う話をしていた様である。

 それなら話は変わってくる。もうぅ〜、そんなコトならもっと早く喋って下さいよ!と、自分の
現金さと言うか調子の良さに惚れ惚れ。行き先はももん以外にあり得まい。しかし先日の様
なコトがあっては堪らない。聞いたトコロによると女王様は電話でメニューを確認してから行
くと言うし、それにならって電話をしてみようと思ったが、元免停さんが『そう言うコトはしない
で下さい。』と言うので、店に着いてからの勝負となった。

 ももんに到着。1人先客が座っているダケのカウンターから中を覗いてみると、ワリと丸目
の顔の、コロコロした笑顔が印象的な男性が立っていた。…。マサカとは思うが、彼がコノ
店の主人なのか?想像していたのと全然違う…。もっとこうハッキリ言ってショーケンライク
な人を想像していたのだが。まぁ彼もお母さんに手紙ぐらいは書くだろうが。神様お願い!
と思わずにいられないし、そんな簡単な発想をした自分は愚か者なのかと思ってしまう。

 気を取り直して席に着くと、前回とは打って変わって落ち着いた雰囲気の女性店員が、
『今日は天ぷらソバとチラシになります。』と言ってきた。何もかもが違う。そう言えば店に入
った瞬間、なんだか香ばしい薫りが漂ってきたのだが、それはどうやら天ぷらのモノだろう。
どの様な天ぷらか興味があったのだが、コダワリの主人が提供する鮮のモノを食べたかっ
たのでチラシにした。

 出て来たチラシは、3つのホタテ貝の殻の上に御飯が乗っかり、その上にネタが乗っかっ
ていると言う、今迄に見たコトが無いスタイルのモノであった。コレがコダワリか!今日来て
良かった!と素直に思った。3つはそれぞれ、蛸、蟹の卵&ヒモ、ホタテ&イクラによって構成
されている。小鉢の数も前回とは違う。コレが本来の姿か。満足しながら食事も進む。

 途中、間仕切りの向こう側で女性客と話すハイトーンボイスが聞こえてきた。それは女性
の声に聞こえるが、前回と今回対応してくれた女性店員のモノとは明らかに違う。もしかし
てもう1人女性店員がいるのだろうか?本来は3人で営業している店なのかと思い、それな
らばコノ間はさぞかし大変だったろう!と、心の中でねぎらった。

 しかし、会計を済ませる段階になって、恐るべき事実がB食クラバーを襲う。女性のモノだ
と思ったソプラノボイスは、なんと主人の声であったのだ!その外見と声の落差に驚く。もも
んとは、先入観に凝り固まった自分を解放するための店だったのか。何もかもが自分の思
い込みとは違う現実を目の前に、コノ声で『カスミちゃん、そりゃ無いッスよ!』って喋って貰
うのも良いかもな、と思った。

 

ランチ \800 (コーヒー・デザート付き)