美しい楓を観たかったり、夏の夜に蛍を見たかったり、何回か仁別方面に足を向ける機会のあったB食クラバーがある日の夜、コノ辺って、何にもない山道だから真っ暗だよなぁ〜とか思いながら通っているとあるポイントで、自然タップリな周囲の暗さとは全く持って対極にある、人工的な明かりを発している建物に気が付いた。
うっわ何コレ。もしかして素敵なホテル?とか一瞬思ったB食クラバーだがスグに、御食事処と言う文字が見て取れたので、どうやら食堂らしいコトが解った。
しかしコノ、見事なまでの周囲との隔絶振り。真っ暗な山の中にポツンとあるからコンナに目立つのか。ソレとも、街中にあったとしても同じ様に一際輝いているのだろうかと、少々考えなくもない。
多くの場合B食クラバーは車を運転している時に、左右に立ち並ぶ看板にどう言う文字が書かれているかなんて滅多に気にしないのだが、ソレでもB食クラバーが御食事処なんて文字が読めてしまうトコロから考えてもコノ店、山の五代の存在は際だっている様な気がする。
真っ暗な山道での人工的な明るさと言うのは、人をホッとさせるのに充分な効果があるのだろう。道に迷ってヘトヘトになったトコロで見つける民家の明かりと言うのには、コノ上無い安心感があるだろうし、同様なコトが、山の五代にも当てはまりそうな気がする。
そんな山の五代がどうやら、大盛りで有名な店であると色んなトコロから情報が流れて来た。フツーの状態でさえ、他店と比較すると量が多いと言うのに、ソノ上に大盛りがあって、更にソノ上にチョモランマと言う呼称の特盛りがあると言う。
名物であるトコロの、焼肉丼のチョモランマなんか、総重量1.3kgにも及ぶと言うウワサだ。マジですか。1.3kgの食事など、ナカナカ出来るモノではない。御飯を食べ終わった後に自分の体重が1.3kg増えているなんて信じられない。って言うかソモソモ、1.3kgの料理がB食クラバーの胃袋に収まり切るワケが無いが。
様々なトコロで紹介されているチョモランマ焼肉丼を見ると、マサにドンブリの中に世界最高峰エベレストがそびえ立っているかの様だ。コレを食べ終わった後人々は、大地の母かマタは世界の頂上を征服した様な気分になれるのだろうか。植村直己が観た景色が眼前に広がるのかと期待が膨らむ。
量が多い店と言うのは、さぁ!今日は食べるぞっ!って気分にならないとナカナカ出掛ける気分になれないが、つい先日TVで植村直己の番組を見たコトもあり、標高8,848mの世界を体験したくもあった。山の五代に出掛けるタメの、マサに機は熟したと言えよう。
世の中の多くの人々が、お昼御飯を食べようって考える時間帯に到着。なんて言うか、市街中心部からは離れた場所にあるので、ソンナに混んでたりはしないんじゃないかな?って思いながら車の窓から外を見てみると、広い駐車場はホボ満車の状態。
いやコレきっと従業員の車だよねとか思いながら店内に入ってみると、全てのテーブルにお客さんが座っていた。山の五代。…恐ろしい店。
相席しつつメニューを見る。本当はチョモランマ焼肉丼を食べてみたいのだけれど絶対に完食出来るワケ無いし、ココは控えめにフツー盛りの焼肉丼を頼んでみた。エベレストとは言わない迄も、高尾山に登った位の達成感は得られるのではないだろうかと思うB食クラバーに向かって店員さんは、『フツーで良いの?』と言う言葉を返して来た。
…えっ?一瞬言葉に詰まるB食クラバー。ホントはチョモランマを食べたいのに無理だからと言ってフツー盛りにした弱気が見透かされているのだろうかとか、ホント言うとウチじゃぁ焼肉丼はチョモランマしか出さないんだよ!とか言われている様な気がして心臓の鼓動も一気にソノ速さを増す。不意に目の前に、捻りハチマキに臼と杵を持った2人組が姿を現す。
『とても食べ切れないからと言って、フツー盛りの焼肉丼を注文したヤツがいるんですよぉ。』
『なぁ〜にぃ〜っ!?』
『男は黙って』
『チョモランマ』
『男は黙って』
『チョモランマ』
そんなリフレインが、B食クラバーの胸に突き刺さる。しかし、無理なモノは無理なので、彼らが無心で餅を突き続けている隙をついて、フツーで良いですと答えてみた。他に大学生らしきグループがいて、彼らがチョモランマ焼肉丼を注文したので、コレでとりあえず見るコトは出来るゾ!と、カナリ内向的な一石二鳥気分が盛り上がる。
チョモランマ焼肉丼の注文を取り付けた店員さんは、厨房に向かって『焼肉丼チョモです!』と声をかけていた。チョモランマがチョモと略されているコトの新鮮さに驚きを禁じ得ない。ソレだけコノ店にとって、チョモランマって言葉は日常的なのだろう。本物のエベレストに日常的に接しているチベットの方々でさえも、チョモなんて略語は使っていない様に思えるのは気のせいだろうか。
落ち着いたトコロで店内を見回してみる。お座敷にはテーブルが6つ程。椅子のテーブルは3つだろうか。雰囲気的に、学生とサラリーマンしかいないんじゃなかなと思っていたが、お年を召した御夫婦連れも何組かいて、ソノ客層はマサにオールラウンド。中野の商店街を歩いている人が、そのまんま店の中に入ってしまっているかの様な気分の、武田鉄也のコンサートを彷彿させる。
更に店内のアチコチには、みかん・栗・ナメコなど、コノ周辺で採れたんじゃないかと思われる食材が無雑作感まる出して置かれ、(失礼!)ソレらがカナリの低価格で販売されている。コレらを買って帰るお客さんもカナリいた。
続けて店内を見回すと、不思議なオブジェがコレも至る所に設置されていて、ソレらの販売も行われている様だ。食材がコノ周辺で採れたモノだとすると、コレらのオブジェも手作りの一点モノである可能性が高い。
その様に店内を見回している間にようやく焼肉丼が到着。ラーメン丼に盛られたソレは、他の店で言ったら確実に特盛サイズ。すき屋のメガ牛丼なんかまるっきり話にならない。早くもコレ、食べ切れるんだろうかと不安になる。
ソノ名前とは裏腹に、豚肉がタマネギ・キクラゲ・モヤシ等の大量の野菜と一緒に甘辛く炒められている。最近は野菜炒め定食好きなB食クラバーにとって、コレはカナリありがたい。コノ味付けが濃すぎず薄すぎず、非常にちょうど良い。味付けにも助けられて、食べるペースもカナリ快調だ。
離れた席にいるせいか、ソレとも元になる基準の量が多すぎて比較不可能なのか、先程の学生さんが頼んだチョモランマ焼肉丼も、目の前にあるフツー盛りと比べて、ソンナに量が多い様には感じられない。コリャー自分もチョモランマ食べるコトが出来たんじゃないの?と思うB食クラバーに、ソノ瞬間は突然に訪れた。襲いかかる満腹感で、指先は箸を口元に運ぶコトを拒否しはじめたのだ。
うっわ、やっぱりチョモランマになんかしなくて良かったよ!と、冷や汗を拭きながら思うB食クラバー。注意深く観察していると、快調にチョモランマ焼肉丼を食べていた学生さんも、突然箸が止まっていた。分量で言うとB食クラバーも学生さんも約80%。コノ辺りが、焼肉丼を食べ切れるかどうかの分岐点と言ったトコロだろうか。少々休憩を挟みつつ、どうにか食べ切るコトが出来た。
同じ時間帯に、肉鍋のチョモランマに挑戦していたサラリーマンと思しきグループの方々がいた。チョモランマの盛に感嘆しつつ、写メを撮りまくっている。苦心しながらようやく食べ終わりそうな頃に店員さんが、コノ肉鍋にウドンを入れるとマタ美味しいよ!と悪魔の囁きを放つ。サスガにソレは拒否した様だ。
ソノ後店員さんとの会話に聞き耳を立てていると以前、チョモランマ焼肉丼&チョモランマ焼きそば&(フツー盛の)肉鍋を、1時間位で食べた猛者がいたとのコト。チョモランマ焼肉丼もチョモランマ焼きそばもハッキリ言ってソレゾレ4人前位のボリュームがあると言うのに、フツー盛でスデにチョモランマ程の量がある肉鍋を食べるなんて、一体全体どう言う胃袋をしているんだろうか。
軽く想像すると、カナリ体格の良い運動部系の方が食べたんだろうかとか思ったりもするが、最近じゃぁ大食いアイドルも何人か存在しているし、ソチラ方面の世界も奥が深い。
カレーライスの辛さ3倍と言う、メニューには無い注文も受け付けていた辺り、お店の懐もカナリ奥が深い。おまけでビスケットをくれたのもありがたい。お腹が一杯だったから、食べずに持ち帰ってきてしまったが。
全国には甲府のぼんち食堂、滋賀の美富士食堂、松島にはタワー天丼で有名な天ぷら処大漁など、大盛りと言うか山盛りで有名な店が何軒かあって(最近はデカ盛りとか言うらしい。)、でも秋田にはそう言う店が無くて寂しいなぁ思っていたのだが、ソレは自分の無知であるコトに気が付いた。山の五代もソノ中の1つに数えられるべき存在であろう。
イツの日か、何人かの仲間でチョモランマ焼肉丼を注文した上でソレを並べて写真に撮り、コレが秋田の、ヒマラヤ山脈やぁぁぁぁ〜〜〜っ!と言ってみたい。