最近、歩く秋田のグルメガイドへの道を歩みだしつつあるクラバーRさんに、秋田県はもとより、世界中の美味しいモノを食べまくっている御友人より、新しいグルメ情報が寄せられた。そう、コノ方は、一会寮がとっても美味しいよ!と教えてくれた、アノ方だ。
以前から知ってはいたがナカナカ踏ん切りがつかなくて出掛けずにいた一会寮のソバが、今迄行っていなかったコトを悔やんでも悔やみきれない程美味しかったコトに、取り返しのつかない勿体なさを感じていたB食クラバーは、今度も同じ思いはしたくない!と、情報を聞いてから一日と置かず、出掛ける決心をしてみた。
教えていただいた店は、はし本と言う、由緒正しき回らぬ寿司屋。穏和な印象の主人が握る寿司はモチロン美味しいしく、良心的な値段で、その主人の人柄を表す様に、店内の雰囲気も素晴らしいらしい。
夜は12カンで\2,000とか言うコースがあるらしいが、教えて貰って気になったのが、ランチで出している\1,000の海鮮丼。コノ金額ダケを見れば、特に安いとかそう言うコトは無い様な気がするが、お手軽な金額で回らない寿司屋を味わえると言う事実が、ソノ魅力に更に輪をかける。はし本で海鮮丼を!と思う心に、歯止めをかけるコトは出来なかった。
しかしココで、思わぬ伏兵が現れた。常に太陽の光の当たらないジメジメした日陰を歩き続けて来たB食クラバーは、コレまでの人生を振り返ってみても、自分のお金で回らない寿司屋に入ったコトなど、数える程しか無い。ソノ貧乏心が、回らない寿司屋である、はし本へ出掛けるコトにブレーキをかけまくっていた。
ランチの時間は13:30迄。只今の時間は、ココから移動して丁度13:00頃に店に着くかどうかだ。昼の営業が13:30迄ならば、おそらくラストオーダーは13:00ジャスト。ギリギリ入店を断られるかも!とか言う弱気が姿を現し、直前になり踏ん切りが付かない。
結婚式を一ヶ月後に控え、ホントにコノ人で良いのかしら?と思い悩むマリッジブルーも、もしかしたらコンナ感じなのだろうかと無理矢理コジツけてみたりしても、貧乏な小心者だからと言うソノ真相はバレバレだ。
小心者と海鮮丼と、2つをハカリに掛けた天秤が、激しい音を立てて割れる。どうやら勝ち上がったのは海鮮丼の様である。食欲の前には小心者など吹き飛ぶと言うコトか。コノ調子でコレからも食欲には存分に活躍して頂き、B食クラバーの小心者を改善するのに役に立って欲しいと心から願ってやまない。
はし本のある場所はワリと良く通る道路なのだが、そんなトコに寿司屋が果たしてあっただろうか?と、頭の中でソノ辺りの景色を、何度反芻してみても思い当たらない。実際に近づいてみてもまるっきり判別が出来なかったが、同行のクラバーRさんが先に、『あった!』と声を張る。B食クラバーが確認できたのは、ソレから少し後だった。
確かに寿司屋がソコにはあった。何故今迄目に入らなかったのだろうか?理由は恐らく簡単で、ソコが回転しない寿司屋だからだ。ソンナ店は、自分とは縁もゆかりもありゃしないぜっ!と無意識の内にB食クラバーの目はきっと、開店しない寿司屋は視界から削除する仕様になっているのかもしれない。
玄関の前に立つ。到着時刻は予想通り13:00ジャスト。我ながら自分の時間の正確さに驚く。ヤケにあっさりした玄関が、回転しない寿司屋の、その排他性を無言の内に物語っている様に感じられる。コノママ扉を開けずに帰ってしまいたい…。コノ期に及んでマダ小心者のB食クラバーだったが、背後には回転しない寿司屋で海鮮丼を食べる気満々のクラバーRさんが、早く中に入らんかい!と言うオーラを出して立っている。後ろに立っているのにコノ様な気配を感じられるとは、危険きわまりなさも甚だしい。マサに前門の虎、後門の狼。退路を断たれたB食クラバーは、ようやくソノ扉を開ける指先に、力を込めた。
店内には、誰もいない。お客さんはおろか、店員さんもいない。やはりコレは、ラストオーダー締め切ったんだろうと思い店を出ようとしたが、後ろからはクラバーRさんが力強い足取りで店内に突入してくる。コノ状態でとるべき行動はただ1つ。意を決して『すみませ〜ん』と大きく声を掛ける。もう何があってもコノ店で海鮮丼を食べるぞ!と腹をくくった。
店の奥から男性が顔を出した。少し声を震わせながら、『ランチ良いですか?』と言うと、大丈夫だと言う。流れのままに席に着いた。ソレから店員さんがお茶を持って来てくれる迄チョット時間がかかったが、ソノ時間はB食クラバーに、海鮮丼はモチロン食べるが、握りのランチも食べてみよう!と思わせるに充分であった。クラバーRさんに伺いを立ててみると、自分もお腹が空いてるし大丈夫でしょうと言うサインが出たので、頼むコトにした。開き直ればもう、怖いモノなど何もない。
マズは海鮮丼の到着。玉子、タコ、イカ、ホタテ、(多分)アジ、(多分)トロ、イクラ、マグロのタタキ、そして中央部には開いていない蒸し海老。開いていない蒸し海老と言うモノを初めて見た。マズはタコの辺りから食べてみる。すると、ネタと酢飯の間に、とびっことカンピョウが散りばめられているのが解った。なんて心憎い演出。刻み海苔が敷き詰められているのは良く見るが、更にネタがあるのがウレシクテ仕方ない。ネタを口に運ぶテンポも軽くなる。
少し遅れて握りランチの到着。トロ、イカ、ホタテ、アジ、も1ヶなにかのイカと蒸し海老。ソレから太巻き2切れとオイナリに玉子がついて\600。コレも非常にコスパに優れていると感じられる。へたな回転寿司に行くよりもよっぽど良い。あとはイチゴと味噌汁が付く。コノ味噌汁が、なにやら野菜のみでダシをとっているモノらしい。ヘルシーなコトこの上ない。
海鮮丼も握りも美味しかったのだが、食べてる途中で腹一杯になり、どうしても握りが食べきれなかった。仕方ないので持ち帰りたいんですケドって言うと、快く持ち帰り用の入れ物を用意してくれた。コチラで詰めましょうか?とも言ってくれたのだが、サスガに悪いので自分で詰めた。美味しくリーズナブルで店主の気持ちも良い。B食クラバーの回らない寿司屋に対する恐怖心が、少し取り除かれた様な気がした。今度は夜のコースを是非とも食べてみたい。
そう言えば、店内は板場とカウンター、そして通路を挟んで小上がりがある。よくTVで見掛ける回らない寿司屋は、大体コンナ感じの様な気がする。少し違う感じかな?って思うトコロがあるとすればソレは、額縁に入れられた魚拓が数枚、壁に掛けられているコトだ。聞くトコロによると、ココの主人は自分で釣りをする人だそうで、釣果である魚の魚拓をとって、貼っているとのコト。そして、自分で魚を釣るからコソ、魚の善し悪しが解るのだと言うコトらしい。ソレも納得の握り、海鮮丼、そしてソレらの価格。今後もソノ素晴らしい眼力を利かせて、コスパの優れた寿司を提供し続けて貰いたいと切に願う。