男鹿にきりん亭と言う、名前に亭が付くコトからきっとさぞかし高級な料亭に違いない!と思い込んでいた飲食店があった。しかも、きりんなんて冠が付いているトコロがイチイチ憎い。
亭って言う言葉にくっついているからには、コレは動物のきりんでは無く、当然ビールのキリンでも無いだろう。名前の響きからB食クラバーが感じるのは、中国の伝説の生き物、麒麟。
体は鹿で頭は龍。かと思えば尻尾が牛だったり足は馬だったりで節操がない様に感じられ無くもない。ソノ昔コノ世で一番強い生き物は何?って純真無垢な眼差しで孫に質問された長老が、孫の可愛い顔を見れば見る程そんなモノは知らん!とは言えず、とっさにソノ場凌ぎで口を滑らせてしまった感がアリアリだったりそうでも無かったり。
まぁしかし、1000年も生きると言うコトからソノ神聖さ、孤高さには疑いを挟み込む余地はない。ソンナ”麒麟”+”亭”って言う2つのキーワードがくっついた名前を持つ店は、B食クラバーの様に今迄、(かろうじて陽の当たる)通りの端っこしか歩るいたコトがない人生を送ってきたモノには、永遠に縁なんかあるワケが無いと思っていた。
タマにきりん亭の近所にある、とあるカナリお金に不自由していないトコに仕事をしに行くと、結構な確率できりん亭の弁当を無料で出してくれる。ソノ時に他のスタッフ達が、おっ、今日はきりん亭の弁当だ!と言ってありがたそうに食べるコトも手伝って、ますますB食クラバーのきりん亭は高級料亭なんだ!って考えに拍車をかけていた。
しかし、美味しい海老フライを食べさせてくれる店を探す旅を続けるB食クラバーがフト得た情報によると、なにやらきりん亭の海老フライが美味しいらしい。しかしソノ情報はアマリにもか細く、とても実体を伴って現れない。
店構えも立派なきりん亭で海老フライとは、B食クラバーの中では何がどうあってもイコールで結びつかない。ウソだよね、ソンナ話…とか思いつつ毎日を過ごしていたある日、クラバーRさんとの何気ない会話の中できりん亭の話が出た。何とクラバーRさんは子供の頃、家族で何度か出掛けたコトがあると言う。
えっ?家族連れで行ける店なの?あっ、でもクラバーRさん家はブルジョワだからな!とか思っていると、全然ソンナB食クラバーが思っている様な高級料亭では無くって、フツーの庶民的なお食事処だと言う。店の真ん中に大きい生け簀があるのが他との差分かな?とかなんか冷静に言っちゃうモンだから、もしかしてホントに誰もが気軽に入るコトの出来るお食事処なんだろうかと次第に思い始めるB食クラバー。
いやでもまだ、最近はワリと鍛えられて来たとは言え、元々の出がブルジョワジーたるクラバーRさんの目線からの話なので、筋金入りの貧乏ライフを送って来たB食クラバーからみれば、ヤッパリ高級料亭なのかもしれない。いやしかし…。
と、イツまでも迷ってバカリでもいられない。コレはもう行ってみるしかあるまい。クラバーRさんが行ったコトがあると聞いて、俄然きりん亭を身近に感じ始めたB食クラバーはいてもたってもいられない。次にソチラ方面に用事があった時は、必ずやきりん亭で海老フライを食べようぞ!モチロン安心の保険の為に、クラバーRさんも一緒でね!と、イマイチ引っかかる部分は残りつつも、とある用件のついでにきりん亭へと出掛けてみた。
やはり広い。駐車場も広いし店舗も広い。駐車場が広い店と言えばドライブイン的なモノを一番先に思い浮かべるが、由緒正しそうな瓦屋根と、外から見える広いお座敷。店の真ん前まで来てマダ決心が付かないB食クラバーであるが、イツまでも店先に突っ立っているダケでは不審者扱いされてしまう。意を決して扉を開けてみた。
B食クラバーをたじろがせるのに充分な迫力を持つ、広すぎる玄関。うわぁ〜ヤッパリ止めようかなぁ〜とか思った瞬間、店員さんと目が合う。ココまで来たら引き返せるハズも無い。でもなぁ〜とか思いながら店員さんを見てみると、B食クラバーの考える高級料亭的なムードは感じられない。(って書くとかえって失礼か?)おぉっ、ココはもしかしてクラバーRさんが言う様に、ホントに庶民的なお食事処かもしれない!と、少しではあるが店内に入る勇気が出て来た。
気後れしているB食クラバーの心を見透かしているかの様に店員さんは、広いお座敷ではなく、軽く仕切られた小上がりに案内してくれた。立ち上がるとクラバーRさんの言っていた、大きい生け簀が目に入る。恐る恐るメニューに目を通す。するとソコには、丼モノや定食類、そばにうどん等沢山のB食クラバーに見慣れた料理が並んでいた。海鮮系の丼モノが若干高めなモノの、B食クラバーと一生縁が無い店なんだろう!との考えは、ココに来て完全に払拭された。
安心してユックリとメニューを見る。肝心の海老フライは…2種類ある!海老フライが3本の海老フライ定食A(\850)と、6本の海老フライ定食B(\1150)だ。高級料亭で心ゆくまで美味しい海老フライを食べるツモリで来たB食クラバーは、なんの迷いもなく6本の海老フライ定食Bに決めた。クラバーRさんは悩んだ末、店員さんにオススメされた桃豚せいろ蒸し定食を注文した。
運ばれて来た海老フライは…ルックスからして他とは何かが違う。パッと見た感じは他店のモノと大差無い様な印象を受けなくも無いが、コロモの付き加減が違うんだろうか。ソレにしても、6本モノ海老フライが積み重なっている眺めは何とも壮観だ。横から見るとトライアングルを描いて鎮座しているソレは、マサに海老フライピラミッド!理想的な形にしばし見とれる。背景にエジプトの、広陵とした砂漠が容易に想像出来る。(あっ、誰かがラクダタクシーの人にボッタくられてる!)
いっそ自分の墓を作る際にはコノ形にして貰おうか等と考えつつ食べてみる。コロモが歯に当たった時の弾む音。コロモを噛み切る音の切れの良さ。肝心の海老もソノ弾力を失っておらず、B食クラバーの望む海老フライにカナリ近い。厚すぎず柔らかすぎないコロモ。柔らかく、しかも水っぽくない海老本体。サフラン閉店以降食べ歩いて来た海老フライの中で、間違いなくB食クラバーの嗜好にジャストフィットでマッチしている。
コレだぁ〜〜〜っ!と、夕暮れに染まった真っ赤なグラウンドで、太陽に向かって叫びつつダッシュしたい心境に駆られるB食クラバー。サフランとはまたチョット違うが、コレはコレで良い感じ。両者を比較するならば、カルティエ&グッチと言えばいいのか猪木VS馬場と言えばいいのか。いやソレよりも、マナに対するカナみたいな感じと表現すれば伝わるだろうか。…伝わらんか。まぁ、今は食べられないと言う特性上、どうしてもサフランをひいきしたくなるのは仕方のないコトか。
6本全部独り占めしたいトコロを堪えて、クラバーRさんが頼んだ桃豚せいろ蒸しも食べてみたくなったので、1本と引換に頂く。キャベツ・ネギ・エノキ・ミズナと共にせいろの中で固形燃料によって蒸される桃豚。フタからコボレ出る湯気を見てると、それダケでいっそう美味しく感じられる。
蒸し上がったトコロをポン酢で頂く。甘くて柔らかくて美味しい。桃豚せいろ蒸しは桃豚の、海老フライは海老の美味しさと特性を生かし切っている様に感じられる。きりん亭はフツーの庶民的なお食事処ではなく、肩肘張らず美味しい料理を食べるコトが出来る店だと理解した。だからコソ、きりん亭近くの、B食クラバーがタマに行くお金に不自由していないトコロで働く方々も、きりん亭のお弁当が出ると喜ぶのだろう。
サフラン無き今、美味しい海老フライを食べたかったらどうすれば良いのか?と言う長年の問いに、ようやく終止符が打たれた様な気がする。コレからは、海老フライを食べたくなったらきりん亭へ行こう!をスローガンにして、日々生活して行きたい。
まぁ秋田市から男鹿市まで、若干時間が掛かるのは気になるが。