秋田駅の裏側にあるコノ店には、職場から遠いせいもあって行ったコトがない。いや、僅かながらも現在進行形で開発の進む今時の秋田で、駅前とか裏とか、そんな言葉は相応しくないのかもしれない。工事中の主幹道路が完成し、大手スーパーの1軒でも立てば、前と裏で区別している現在の状況も、簡単に入れ替わる日が来るだろう。
そんな開発が進む場所からは、僅かに道が外れた場所に、その店はある。定食屋と言うか食堂と言うか、昼時になるとタクシードライバーで一杯になる様な、そんな店。
一時期、ヤタラと秋田市内で、定食屋を探しまくっていた。東京から秋田に帰りたての頃だったろうか。高校時代までしか秋田に住んでいなかったB食クラバーが知っている飲食店と言えば、ラーメン屋か喫茶店ぐらいで、(高校生の嗜好や、財布の中身を考えれば、大体頷ける話だと思うが、)それらも、潰れていたり引っ越していたり、またはやっていても以前程の賑わいも無かったり、東京で数年間過ごした後にコノ状況では、何故か満足できなかった。
どうして定食屋だったのか、今となっては覚えていない。なんとなくそんな感じがする理由ってのは、渋谷で良く食べていた定食屋の様な店が、秋田にも無いだろうかと思っていたぐらいで、それさえもハッキリしない。その後、カレーやイタリアンなど、食べ物の興味も色々な方向に拡散していった。
そんな中で多加箸の存在を知ったのだが、店の前を通るのは決まって休日で、大概店も休みの様だった。いや、通りすがりにチラッと見るからソンナ風に感じるだけで、本当は営業中だったのかもしれないし、扉の向こう側では、多くのお客さんが食事を楽しんでいたのかもしれない。
そうして時間が経つ内に、定食屋にはアマリ興味が無くなった。食の嗜好が、米よりもパンに変わり、食事の量も、以前は多ければ多い程嬉しかったのが、現在では一般的な量よりも少し少な目で良いって思っているとか、そんな変化と、関係があるのだと思う。
距離的に、食の嗜好的に、いつか行きたいケド、いつ行けるのか、いつ行きたくなるのか解らない店。B食クラバーの中でそう定義づけられた店に、ようやく今日、行ってみた。
職場の下っ端が、いつもの様にお昼を誘ってくる。いつもと言っても毎日では無い。下っ端は普段、アマリ会社内にはいなく、お昼時間、タマに社内にいると、B食クラバーを誘ってくるのだ。先輩としてコレは嬉しいし、ありがたい。しかし。
下っ端が行きたがるのはいつも同じ店。会社の近くにあり、確かにその近辺ではナカナカのものかと思うが、そう何度も何度も同じ店では飽きてくるし、なにより楽しみが少ない。誘われるのは良いけど、またソノ店は嫌だなと思うB食クラバーの頭に、不意に多加箸のコトが浮かんだ。
定食屋好き。パンよりも米。量だって多い方が良いに決まっている下っ端の嗜好にも、充分にマッチするであろう。話をしてみると、チョット遠いと言って嫌がったが、コッチだっていつも同じ店では堪らない。そこはそれ、普段は何の役にも立たない、かざしてみても相手に対して何の影響も与えられない先輩の特権を利用し、なんとか目的地を、多加箸へと変更させた。
多加箸付近に辿り着くと、1台の車が出るトコロであった。店の前には5台分の駐車場があり、4台は既に埋まっていたので、タイミング的に上々だった。少し離れた場所にも何台か置ける様で、食堂の駐車スペースとしては、恵まれたモノだろう。
今迄は通り過ぎるだけだったので気づかなかったのだが、入り口の扉が店っぽくない。もしかして、最近B食クラバーの心を僅かながらに擽る、住宅の一部を改装したダケの店舗なのだろうかと思いながら扉を開けてみると、中には、テーブル席と小上がりという極一般的な食堂の風景が広がっていた。少しガッカリしたと言うか、考え過ぎな自分におかしくなった。
メニューを見る。が、ランチ的なモノは見つからない。各種定食とラーメン。そしてそのセットが並ぶ。日替わりと言う、お店側から今日はコレ以外出しませんよ!的な定食をなすがままに受け入れるツモリで来たのに、数種あるメニューの中から1つのモノを選ばなければいけなくなった状況は少しツライ。しばらく悩んだ末に、B食クラバーは唐揚げ、下っ端はチーズハンバーグと言う、なんだか土崎にある某食堂で、いつも頼むみたいな内容になってしまった。
水はセルフサービスの様で、ウォーターサーバーが設置されている。しかし、水を取りに行った下っ端が、手ぶらで帰って来た。グラスがないらしい。店員さんにそのコトを告げようと厨房を覗いてみると、お客さんの注文した料理を、忙しそうに作っている。ホントに忙しそうに作っているので、何だか声が掛けづらい。その中に自分の料理も含まれているかと思うと尚更だ。
仕方ないので水無しで待ってみる。お客さんが次から次へとやってくる。結構な人気店なんだと、伺い知るコトが出来る。その中で1人のバーサンが、水欲しいんだケド!と、店員に声を掛けた。すると、先程よりは少し忙しさがなくなっていた店員のカーサンが、その下にあるから!と言う返事をした。改めてウォーターサーバーを見ると、その下は扉の付いた台になっていて、中を開けるとコップやら湯呑みやらが入っていた。もうチョットじっくり観察しろよ、下っ端め!と心の中では思ったが、口には出さなかった。
お茶の間食堂を越える唐揚げには出会えないだろうと思っていたが、ココはココで美味しい。若干竜田揚げ風な感じがするお茶の間食堂に対し、コチラはたいあん弁当風か。しかしソレよりもカラッとしている。肉を噛んだ時の熱さ、ジューシーさ等、クラバーKを連れてくれば、カナリ満足する様な気がする。下っ端の頼んだチーズハンバーグも良い感じだと思ったんだケド、少し味が薄いとか言っていた。
B食クラバー的には充分なのにと思うと、確か以前、どこかでも下っ端は、B食クラバーが充分だと思う味付けを、薄いと言っていたコトがあった。もしかしてソノ逆で、B食クラバーが濃いって言ったモノに対して、薄いと言ったのかもしれないが。
結構なお客さんで賑わうコノお店を、東京から帰って来たバカリの頃のB食クラバーに教えたら、物凄く喜ぶであろう。どうにかしてそんな手段はとれないモノかと、雲一つない、9月の空に思う。