ピータンも言っていたが、豚肉と牛肉を比べるのはおかしい。美味しい豚肉を口にして、『コノ豚肉、牛肉みたいに美味しい!』と、渡辺さんの様な感想を述べる人は多いだろう。実際、少し前迄のB食クラバーはそうだった。
更にピータンは続けて言う。豚肉は豚肉で美味しいし、牛肉は牛肉で美味しいんだ!と。ピータンの言うコトはマサにソノ通りで、たとえばコレを他のジャンル、和風の麺料理に例えてみたらどうだろうか。
細長い麺を、一気に吸い込んだ後、一言。『あぁ〜、コノお蕎麦、おウドンみたいに美味しいっ!』
いくら瞳をキラキラ輝かせ、バックを薔薇の花びらや百合の花でデコレーションしてみても、え?コノ人何言ってんの?チョットおかしくない?的な印象を、周りにいる誰もが抱くであろうコトは容易に想像できる。
『あぁ〜、このエビ、カニみたいに美味しい!』とか、『このイチゴ、メロンみたいに美味しい!』辺りのレベルになると、比較対照が微妙すぎて、どっちがドッチだか解らなくなり、あぁ、そうかもね。と迂闊にも答えてしまいそうだが。
とにかくソンナわけで(?)、一時期は牛肉至上主義を唱えていたB食クラバーも、現在ではスッカリ豚肉ウェルカム。ドコカに美味しい豚肉はねいがぁーと、ワリと探し回っていたりいなかったり。
豚肉については、少し調べてみるダケでも、牛肉よりも沢山の品種が存在している様で、ソノ世界も奥が深い。いや、チャンと調べれば、実は牛肉の方が品種が多いよ!ってなコトになるのかもしれないが。
ソンナ中で気になっていたのが、平田牧場の豚肉。以前から雑誌やTVなどのメディアで紹介されている豚肉は物凄く美味そうで、ソノ肉を食材として提供する平田牧場直営の豚カツ専門店『とんや』が山形県の酒田市と言う、秋田から比較的向かいやすい場所にあると言うので、行く機会があればなーと、漠然と思っていたトコロだった。
そしてソノ機会は、まんまと訪れた。
鶴岡市内でレジャーを楽しんだ後、秋田への帰路の途中酒田市による。ホボ国道7号線に面していると言っても過言では無い場所にあるとんやだが、案の定通り過ぎ、ソコからリカバリーを果たす迄の間に、平田牧場のミートショップ→平田牧場の焼きとん屋を経由して、ようやく目的地であるトコロのとんやに辿り着いた事実は侮りがたい。
1本の通りの何10mかおきに、平田牧場と名の付く店が3件も並んでいるのだ。もはやコノ通りは、平田牧場ストリートと呼んでも過言ではあるまい。なので初めて来た人間が、間違って別の店に入ろうとしてしまったとしても、誰にも責められるモノでもないだろう。(←スッカリ自己弁護)
駐車場はちょうど満車の気配。ガーデンパレスみずほの1階にある店内は満席の様で、店の外と言うかガーデンパレスみずほのロビー部分には、順番待ちのお客さんが5〜6組いる。酒田市は不案内だし、そもそもココのトンカツを食べたくて来たのだから、待つコトにした。
その待合室部分に、待っているお客さん用のメニューが設置されていたので見てみた。混んでいる店の場合、こう言うコトがウレシイ。お客さんからしてみれば気が利いているし、店側にとっても、注文が早く決まっているだろうから時間の節約にもなるし、良いコトだらけだ。
とんかつやで割と見慣れたメニューも並ぶのだが、せっかくだから平田牧場の特性を存分に発揮している料理を食べてみたい。平田牧場自慢の三元豚・平牧桃園豚・平牧金華豚なんてぇモノに自然と目がうつる。
中でもヤハリ、食べてみたいのは特厚ロースかつ。分厚い肉に勢い良く噛み付き、肉を食べてるんだー!と言うコノ上ない充実感を、余すトコ無く体験したい。平牧桃園豚と言う、名前からして柔らかそうな気配が漂って来る品種の特厚ロースかつは、値段も\2,500と高額だが、コノ機会を逃したら、次に味わうのはいつのコトになるのか解らないので、思い切って注文してみた。
特厚なダケに、出来上がり迄時間が掛かるらしい。ソレ迄の間、他のお客さん達が美味しそうに食べまくっているのに、待ち切れるワケがないっ!と思ったので、平牧桃園豚の生ハムサラダも注文してみた。コレも\1,000。普段のB食クラバーからは全く考えられないお金の使い方だ。
一番最初に出て来たのは、生ハムサラダでは無くてドンブリ一杯に入ったお新香。コノ量はチョット半端無いなーと思いながらもツマミ始める。そして生ハムサラダの到着。
数日前にプロシュートを食べて、思ったよりも堅いなーと感じていたトコだったので、もしそうだったらチョットなーと言う不安もあったのだが、いらぬ心配だった。マサに薄〜い豚肉を食べているかの様で、豚肉特有の甘さも存分に味わえる。あっと言う間になくなったのは言う迄もない。
生ハムサラダを食べ終わっても特厚ロースかつは到着しなかったので、自然、ドンブリ一杯のお新香へと箸は進む。コレ全部食べたらお腹一杯になってしまって、メインたる特厚ロースかつを食べ切られないのではないだろうかと思ったりもしたが、四方八方360度を、グルリと美味しいそうな油の香りに囲まれて、ジッとしているのは拷問にも等しい。お新香はお新香で、特厚ロースかつは特厚ロースかつだと、割り切って食べ終えてしまった。
すり鉢でゴマをすりつぶし終え、ソレでも若干の暇を持て余した後、ようやくメインが到着した。その名に違わぬ特厚ぶり。3cm位はありそうだ。ピンク色の断面が美しい。そして、今迄に見たコトのある、どんなトンカツよりも薄い衣に覆われていた。だから余計に、豚肉の厚さが際だつ。
トンカツの横には塩も添えられていて、お好みによって使って下さいとアナウンスを受ける。最近は何でもかんでも塩だよなーと、実はイマイチ塩否定派に属していたB食クラバーだったが、まぁ別に合わなかったらソースを使えば良いしね!と軽く思いながら、塩を付けた特厚ロースかつを口に入れてみた。
まず、衣のキメ細やかさに驚く。薄い衣は一瞬だけカリッとして、すぐさま柔らかく肉を包んでいるコトを知らせる。余談だがコノ時、アマリに細かかった衣がB食クラバーの気管に入り、モノスンゴクむせたコトは無かったコトにしてみたい。
他のトンカツ屋でコレくらい厚みのあるトンカツ食べたら、固くて絶対ぇ噛み切れねーとか思いながら、おそるおそる前歯に力を入れてみると、アッサリと噛み切れた。何だコノ柔らかさはーっ!と驚くと同時に、噛むに従い豚肉の甘みが口の中一杯に広がっていく。
そしてソノ後に、塩のしょっぱさが顔を出す。柔らかさ・甘み・しょっぱさの3つが、噛む度に表情を変えて現れる。トンカツのジェットストリームアタック。一瞬にしてとんやの、そして塩で食べるトンカツの虜になってしまった。
ソレでもマダ、塩の力を信じられないでいるB食クラバーは、甘口と辛口の2種類あるタレの内、辛口を選んですり鉢に入れて食べてみた。しかし、塩を付けて味わえたアノ感動が蘇って来るコトは無かった。ガッカリしながらB食クラバーはソノ後、ひたすら塩でトンカツを食べまくった。
御飯・みそ汁・キャベツはおかわり自由。最初にセッティングされた御飯の量が少ないように感じられたので、こりゃーソッコーおかわりだな!とか思ったのだが、気が付くとお腹にソンナ余裕はなかった。お新香でお腹一杯なったのかもしれないが、なによりもトンカツそのもののボリューム感にやられた気配だ。
特厚ロースかつが届いた時、お新香おかわりいりますかー?と聞かれたので、貰えるモノならば何でも貰おう!と言う貧乏性がヒョッコリ顔を出し、お願いします!とか言ってしまったのだが、最終的にはソレを食べ切るのが辛かった。
何についても欲を出してはいけないなと思うと共に豚肉の魅力と、平田牧場とんやの実力をとことん迄堪能したくなった。コレからはトンカツを食べたくなったら酒田迄、意外と気楽に車を走らせてしまうかもしれない。