数年前にソノ存在を知って、結構一所懸命探したパン屋があったのだが、当時は発見するコトが出来なかった。コノ辺にあるハズ!と、例えば車で探している時なんか、辺りに他の車がいないコトを確認してから、歩行者並のスピードで移動したりしたのだが見つけられず、イツしかそのパン屋は、最初っから無かったモノとしてB食クラバーの記憶の中から忘れ去られて行った。
そのパン屋のコトを、深い記憶の奥底から蘇らせたのは、りんごさんによる当HP掲示板への書き込みであった。
【りんごさんはかく語りき】
美味しいパンと言えば、最近熱いのが東小学校の近くのパン屋さんではないでしょうか?
私はいつも土曜日に買いに行くのですが、いつもプチ行列です!
9:30頃OPENですけど、その時間に行くと開店前なのに10人くらい待ってます。
ヒョットしてコレは、数年前に探そうとして結局見つけられなかったパン屋のコトであろうかと思うB食クラバーに、色々な人から次々と、なだれ込む様に沢山の情報が寄せられた。
そのパン屋の名前は、アルタと言うらしい。…アルタ。毎週月〜金の正午過ぎ、オールバックにグラサンをキメた人物が、ダチョウやカメレオンの真似や四ヶ国語マージャンをやりながら、ヤタラと他人に同意を求める言葉を連発する場所を思い浮かべてしまうが、それと似た様なトコが、秋田にもあるのだろうか。そんな場所があるのなら、見逃すハズは無いのだが。
少ない情報を元にインターネットで情報を探ってみると、アルタと思われる店舗の写真が掲載されていた。そう言えばコンナ建物見たコトあるなと、朧気な記憶の輪郭が、徐々に象られて行った。
最終的な決め手の情報は女王様から寄せられた。女王様が示すランドマークは全て知っていて、面した道路も何度も通っているのだが、それでも見つけられていないと言う切なさ。
大体の場所と、写真で店構えも解ったので、一度現地調査に行ってみた。すると、確かに何度も素通りしていた場所にアルタはあった。ココが、ココが探し求めていたあのパン屋なのかと、悔しい気持ちは隠すコトが出来ない。日を改めて、アルタに向かうコトにした。
シトシトと雨が降り続く土曜の朝、遂にアルタに行く日がやって来た。朝は9:30から始まり昼にはめぼしいパンは全て売り切れているらしいので、ココはヤッパリ開店ダッシュで臨むコトにした。しかし、そぼ降る雨のせいか車のスピードも上がらず、9:30にはまだアルタには到着していなかった。
イツも素通りしていた店に近づきつつあるコノ気持ち。何となく気になっていたアノ人の、自分に対する気持ちを人づてに聞き、どうやら相手も自分のコトが気になっているらしいと、からかわれているんじゃないか、なぁ〜んて半信半疑でありながらも、勇気を持って告白してみよう!としているシチュエーションと似てないだろうかとコジツケてみたり。
そんなコトを考えながら車を走らせていると、ハザードを点滅させて停止している、複数台の車が前方に見えて来た。その数は3台位だと思ったのだが、近づくと5台程確認できた。ドコに停め様かと一旦素通りし、もう1度店に近づくと、恐ろしいコトが解った。
店は角地にあるのだが、店舗を中心に、両方の道路に路駐の車が伸びている。平凡な住宅街の一角に、L字型に都合10台程の車が並ぶ様は、りんごさんが言う様に、まーさーに路駐天国。もしB食クラバーが国家権力の手先ならば、毎週土曜日の9:30には、ココで待ち構えて…(アワアワアワ。)
一度車で通り過ぎた時、店の外に10人位の人が並んでいる様に見えた。コンナ雨の日にも関わらず、何故ソコまでしてパンを買いに来るのか。その様な思いをしてまで買わせたい何かがあるのかと気になって、L字型の先頭に車を停めてみた。
B食クラバーが店先に辿り着くと、外に並んでいる人は5人。僅か2〜3分の間に半分に減った!と思い少々喜びながら店内を見てみると、ソコには全く想像し得ない空間が広がっていた。
変則的な10畳位のスペースの、窓側と壁際に商品棚が並んでおり、商品が店内を囲んでいる様なレイアウトなのだが、その商品の更に内側に、立錐の余地も無い位の間隔で人間が林立している。国勢調査等で人口密集度を測る時に使われる、1人当たりの居住面積で言うと、僅かに60cm四方。10畳程の店内に、約20名のお客さんが、入り口から店内を一周して、レジのある出口(つまり入り口)まで並んでいるのだ!
ナカナカ前に進まないが、ソレは会計を済ました人がいないと店内に入れないからであると判明。チョット考えれば当たり前のコトであるのだが。気になってレジを見てみると、買い物が済んだポリ袋を2つ持った女性が立っていた。その2つはほぼパンパンに膨れ上がっている。しかし一向に立ち去る気配を見せない。マサカと思いレジの横を見てみると、更にもう1袋分ある位のパンが、慣れた手付きで鮮やかに会計されていた。その女性は推定30ヶ以上のパンを両手に持ち、\3,000以上の会計をして、勝ち誇った様な笑顔で、ようやく店を後にした。
次にレジに商品を差し出した人もポリ袋3つ分位の量のパンを差し出している。どう見てもその人は1人で来ているのだが、トレーは2つ出ている。ココでB食クラバーの頭の中は、クェスチョンマークでいっぱいになる。トレーを2つ持つと言うコトは、両手がふさがっているハズなのに、その人は一体どう言う手段でパンをトレーに載せたのだろうか!?
有名私立小学校の試験問題にでもなりそうな現象だが、例えニュートンでもアインシュタインでも、コレに対する明確な回答は導き出せないのでは無いだろうかと考えるB食クラバーは、知能指数が低すぎるのだろうか?
驚きと戸惑いを隠せないB食クラバーだが、遂に店内に足を踏み入れるコトが出来た。パンを1つトレーに載せる。…。しかし、次のパンをトレーに載せる迄1分以上時間が掛かる。コノ手持ちぶさた感は如何なモノか。ボケェ〜っと待っていると暇なので、手が届く範囲にあるパンを全てトレーに載せたくなってしまう。さっきからヤタラ大量にパンを買っている方々は、現在のB食クラバーと同じ心理状態にあったのだろうかと考えてみる。
次に、買おうかどうか迷っていたパンがあるのだが、取り敢えず止めるコトにした。しかし、待っている間に沸々と買いたい衝動が込み上げてくる。あ〜っ、やっぱり欲しい!買おう!とか思っても、一度通り過ぎたパンは行列にかき消されて2度と買うコトが出来ない。コノ無情さと言ったら例える言葉が見つからない。
チャンスの神様には前髪しか無いと言ったのはギリシャ神話だったろうか。何故か素っ裸で走り回るチャンスの神様は、全身に油を塗ったくっており、後から手を伸ばしても、ツルツル滑って捕まえるコトが出来ないらしい。唯一掴めるトコロは前髪ダケで、だから向かってくるチャンスの神様を、逃がすコト無く確実に捕まえなさいと言うコトなのだと思うが、フツーにそんな人が目の前を通ったら、コレは一体何のプレーなんだろうと思ってしまって引き捲るコト確実。しかもカナリマニアック。
コノ狭い空間で、ギリシャ神話のコトを思い浮かべている人間など、一体何人いるのかと思いを巡らせてみたが、そんなの1人しかいないと、スグに思い立って考えるのを止めた。
途中で、知り合いらしい女性2人が、店内でお互いを発見し、挨拶をしていた。
女性A:『あたし来たの初めてなんだケド、
スンゴイ混んでるわね。』
女性B:『土曜日はこうなのよ。あたしは普段土曜日
は来ないんだケド…(以下略)』
どうやらコノ混雑は、土曜日だけのモノであるコトが判明した。B食クラバー同様、休日にしか買うコトの出来ない人々が、大挙して押し掛けているのであろう。ターボでも着いているのではないかと疑われる程のスピードで、次々とパンをカウントして行く女性店員。B食クラバーには決して真似するコトが出来ない。
ふとソノ横の壁を見ると、営業時間は9:30〜パン無くなり次第、と書かれていて愕然とした。改めて店内を見回してみると、既に半数程のパンが無くなっていた。このペースで行くとお昼とは言わず、10:30には全てのパンが売り切れてしまいそうだ。
B食クラバーがアルタを発見できなかったのは、どうやらココに原因がありそうだ。いつも探していたのは夕方近い時間だったのだ。お昼で商品がほぼ完売してしまう店が、夕方迄営業しているハズがない。B食クラバーがアルタの前を通る時は、モチロンとっくに閉店していて、そのせいでB食クラバーは、ちょっとお洒落な家だな、位にしか思っていなかったのだ。
素晴らしい混雑具合。出来ればその集客のコツを、B食サルガッソーに喘ぐ他の店の人に教えて貰いたい位である。