店  名
 神戸ベーカル
食べた日
2006/05/12

住  所
 秋田県横手市大沢字西野16-2
営業時間
9:00〜18:30

電話番号
 0182-32-3993        神戸ベーカルのBilogへ>
定休日
月・火

店外観
おからビスコッティ
ワインブレッド
スコーン
忘れました。^^;
サワープレーンブール
前  説

 B食倶楽部の秋田県南方面開拓主任のnaoさんから、今迄に聞いたコトのないパン屋さんの情報が寄せられた。岩手産の南部小麦・白神山地から採れた酵母・自家培養酵母を使用したパン。90パーセントのパンは卵、砂糖、乳製品なしで海の塩だけで焼いていると言う。

 最近、当HPの掲示板並びにBilogClubに寄せられる皆様のお話を伺い、自分でパンを作るコトの楽しさに強く興味を惹かれる様になったB食クラバーは、もし自分がパンを作るのなら、とりわけ塩に拘ったパンを作ってみたい!と思うに至っていた。

 パン作りについて全くシロウトのB食クラバーが、塩に拘る理由なんて1つも無い。卵、乳製品、砂糖を使わないパンなんて体に優しそうだ!って思う位か。少しだけ調べてみると、塩は1g分量を間違うダケで、パンの仕上がり具合に多大な影響を及ぼすらしいし、ソンナに塩が重要なモノだったとは知らなかった自分自身の、驚きの具合がソノママ塩への注目になっているのかもしれない。

 とにかく、そんなB食クラバーの、ホントにあるんだか無いんだかハッキリしないパン作成欲って言うか、ソコまではいかないのでパン作成好奇心が雨降り後のタケノコの様にうずく。自分が作ってみたい!って思っているパンをプロの人が作っているのなら、マズはどんなモノか試してみたい!と思い、出掛けてみるコトにした。…只単に面倒くさがりなダケとは思いたくはない。アクマでサンプルとして参考にしたいと思っているダケである。

 桜の見頃から1週間程過ぎた頃、横手市に出掛けてみた。横手市の桜の名所と言えば、横手公園である。少し勾配のキツイ、桜のトンネル様な坂道を登り終え、フト空を見上げると、雲の様に広がる桜の花びらの隙間から、横手城が顔を覗かせている。

 桜の木を背景に構える純和風のお城。初めて見た時のB食クラバーは、しかし初めてって気分にはならなかった。コレは日本人の心の奥底に、脈々と受け継がれたDNAのなせるワザか。日本人に生まれて良かった。桜の美しさが解る民族で良かった。コノ様な景色を、例えば平安時代の人々も見ていたのだろうか?室町や江戸時代の人も…。

 と思ったトコロで思考がピタリと止まった。ん?江戸時代?すると、記憶の彼方から、白馬に跨ったお侍が、ハイヨー、ハイヨーと勇ましくも爽やかに、猛スピードで接近してくる映像が脳裏に浮かぶ。ソノお侍様は、水色と言うか空色と言うか、100m先から見ても人違いなどおきそうもない程派手な裃を身に纏い、気品タップリな笑顔を見せてニヤリと笑う。

 そのお侍様の背景に見えるのは、そう、江戸城。既視感タップリのアノ光景は、暴れん坊将軍で見慣れているモノであった。日本人の血流によるモノだと思ったデジャビューも、マツケンの仕業によるモノだと思うと、その影響力の強さに脳味噌を思いっきり攪拌された気分にならないでもない。


Comment

 横手城を横目に、naoさんが教えてくれたパン屋、神戸ベーカルへと向かう。あらかじめ地図で調べたトコロによると、比較的解りやすい場所にある。残念ながら迷うコト無く目的地に辿り着いた(?)。一体どんなパンが待ちかまえているのか。緊張しながら扉を開ける。

 夕方近い時間帯に着いたのにもかかわらず、店内の棚には1/3程の種類のパンがあった。色めき立つB食クラバー。ソノ内の1つ、naoさんが教えてくれた、『水を一滴も使わずにワインと比内鶏卵で仕込んだワインブレッド』のタグを見つけ、思わず食い入る様に視線を注ぎ続ける。

 ソノ様を見て、もしかして不安に思ったのかもしれない店主と思しき女性が、厨房の方から言葉をかけてきた。夕方遅い時間だから、あまりパンの種類が無くてゴメンナサイ、とのコトだったが、コチラは逆に、何を買おうか迷っていたと言う事実を、モチロン女性店主は知る由もない。

 いえいえとか相槌を打っていると、ウチのパンは岩手県の南部小麦を使って作っているだとか、白神山地の天然酵母をを使っているだとか、色々なコトを話して教えてくれた。秋田の酵母と岩手の小麦で作るとは、サスガに横手と言う、秋田県の中でも岩手県に近い場所の特性を生かしてるなぁと思う。

 素直に頷いていると、食べてみてと、試食のパンを差し出してくれた。店に入った瞬間から気になっていたワインブレッドと、ソノ隣にあったスコーンだ。水を使わないワインブレッドは、ふっくらとした生地ではないモノの非常に柔らかく、そして当然だが、ホンノリとワインの香りがした。1切れだけ頂こうと思ったが、ついついもう1切れ口にしてしまった。

 図らずも、買おうと思っていたパンを口にするコトが出来たので、ワインブレッドは買わずに他のにしよう!とか思ったが、パンを選んでいる最中に、さっき食べたワインブレッドの風味が口の中に甦ってくる。ヤハリ買わずにいられないだろう。ココのパンは焼き上がった時ダケが美味しいのではなく、2日目、3日目と酵母菌の風味が増すと言うコトだが、ソレを短時間で体験した様な気分にもなる。

 一通りのパンを選んだ後、焼き菓子系が並ぶ棚の辺りで再び視線が固まる。おからビスコッティと言うのが、カゴに1つダケ残っている。おから・レーズン・くるみ・アーモンドが入っていると、商品タグには書かれている。おからでビスコッティとはヘルシーだなとか思っていると、ソレ、スグ売り切れるんですよ!と店主。どうやら大変な人気商品で、凄く美味しいらしい。

 作っている人が自分から美味しいって言い出すなんて、なんてコシが強い!とか思ったのだが、ソレだけ自身があると言うコトなのだろう。職人が自分で美味しいと言うモノを、買わないワケにはいかない。満足のいく買い物を終えレジに持って行くと、店主は更に、スコーンを1袋オマケにくれた。自分で選んだ中にスコーンもモチロン入っていて、だったら買わなきゃ良かった!とかせこいコトを考えてしまったが、2倍頂けてラッキー!と、即座に考え直した。

 明るく、元気にパンの説明をしてくれた店主に、今迄に何度か遭遇した、女性が自分で作って売っているスタイルのパン屋の主人達と、同じ様な雰囲気を感じた。彼女たちは皆元気ハツラツに、色々な説明をしてくれる。彼女たちと接していると、コチラまで元気になる様に感じられる。

 今回買った中で一番美味しかったのは、当然と言うかヤハリと言うか、店主オススメの、おからビスコッティ。固すぎず、絶妙な柔らかさの生地が心地よい。レーズンや胡桃の風味が、ほんのりと口の中に広がる。店主が自ら美味しいと言い切るのも、人気商品だと言うのも納得!の杭を、心に1本打ち込まざるを得ない。

 横手に来る理由が増えた。コレからちょくちょく横手に来るコトになるかもしれないなと思いながら、葉桜が並ぶ横手城のふもとに立ち、横手の街並みを見下ろす。歴代の横手城主達も、高台にあるコノ地から自分の治める城下を、桜の花びらの隙間越しに眺めていたのだろうか等と、スッカリ葉っぱだけになった桜の枝越しに考えてみる。城主の顔がいつの間にかマツケンになっている。切れ長の眼差しで弓矢を構えるマツケンの横で、ヒヒヒと笑う船越英二の肩が、カスカに揺れた様な気がした。