このページは、現在は新築されて近代的な店構えになっている渡勇菓子舗さんが、建て替えをする前の店にお邪魔した様子をまとめています。
ウチの会社には免停になる人が結構いる。秋田県内を車でくまなく移動して営業するスタイルのため、普段はもちろんキチンとしているのだが、フトした瞬間にエアポケットが訪れ、タマタマそう言う時に限って、取り締まる人が傍にいる場合が殆どだ。法律なのだからどうしようも無いのだろうが、もう少し何とかならないモノか。普段真面目に走っている人程、今後の運転スタイルに悪影響が発生しそうな気がしないでもない。
今回、1ヶ月の免停になった人が出現。仕事が全く出来なくなるワケだが、そう言う場合、時々B食クラバーに運転手としてお呼びがかかる。小規模な会社のため、誰かがやらなければならないワケで、そうなるとB食クラバーは自分の仕事を全て投げ捨てて一日タクシードライバーと化す。
日本のビジネスマンの多くは、例えば家族と遊んでいる時とか、TVを見ている時とか、更にはトイレに入っている時や御飯を食べている時も、何だったら御飯なんか食べなくても良い!って位に四六時中仕事のコトを考えているのではないかと、様々なメディアで報道されているのを見ると思ったりもするが、その点B食クラバーは対極にある。
+と-、需要と供給、生産と消費、古○進とデスラ○総統、貴乃87と若乃87、南極と北極…って言うと両者の違いはイマイチ解らないが、プレ○テとセガサタ○ン程の開きがあり、仕事中も食べ物のコトを考えない時は無く、ヒョットしたら御飯を食べている間に、次何食べようか等と考えていたりして、多くの日本のビジネスマンとB食クラバーは、永久に交わるコトは無いだろうと思われる。『陽子さんや、ワシャぁ飯はまだかいな。』と口癖の様に繰り返す4村けん演じるジーサンの気持ちにカナリ近い。
そんなワケなので、普通だったらビジネスワードが交わされるであろう移動中の車の中は自然と食べ物の話題に。今回の免停さんは、今の会社に来る前に食品の流通関係で働いていた人のため、意外な程多くの情報を得るコトが出来た。
その中で、新屋に美味しいシュークリームを売っている店があると言うテーマになった時、B食クラバー心のトキメキゲージが、今迄に見たコトが無い程の曲線を描いて急上昇。思わずアクセルを踏む足にも力が入ったが、免停をサポートする立場のB食クラバーが違反なんかしたら洒落にならない。話を聞くコトに集中して、何とかスピードを抑えるコトに成功した。出来るコトなら運転に集中したい。
新屋の旧街中にある和菓子屋で、渡勇と書いて『わたゆう』と読むらしいその店は、老トーサン、老カーサンとその娘で切り盛りしているとのコトだ。シュークリームが美味いと地元で評判で、それを聞きつけた近所のスーパーが、是非ウチで販売させてくれと願い出て、そちらでも大変好評なようである。家族3人でやっているらしいのに、よくスーパーになんか卸せるなと思ったりもするのだが、美味しいモノが食べられるってコトは幸せである。
今回話を聞いた免停さんは、ドコカに美味しい食べ物があると聞くと取り敢えず出掛けてみるのだが、何が美味しくて何が美味しくないのか自分では判断が出来ないと言う、甲羅のない甲殻類と言うか、お湯ダケで煮た大根と言うか、夜中にグラサンして辺りを徘徊する様な頼りなさを感じさせるため、他の人の意見も聞いてみるコトにした。
他の人と言うのは、もちろん困った時の女王様。老カーサンの手作りで、皮がパリパリして美味いと言う情報を得るコトが出来た。免停さんも同じ様なコトを言っていたので、味のコトはともかく、どうやら免停さんが喋る内容は嘘ではないらしいコトが解った。コレからは免停さんの話すコトにも、もう少し深く耳を傾けてみるか。
本来から言えば店の方に行くのが筋というモノだが、イマイチ場所が解らなかったため、マズはスーパーの方に行ってみた。意外と広い店内の、どの辺に置いているのか解りづらかったのだが結局見つけるコトが出来なかった。その代わりと言うか、渡勇菓子舗で作っている大福を見つけた。紅白の大福が6ヶ程入ったパックが1つだけ残っている。別の情報源から大福も美味いと聞いていたし、残り1ヶと言う状況がB食クラバーの購買意欲を猛烈に後押しする。シュークリームが見つからないのも、おそらく売り切れたのに違いない。
買いたくて仕方なったのだが、シュークリームが見つからなかった時点で本店の方へ行くぞ!と心に決めていたので、ゴチの最後で最下位一歩手前の人にタッチする直前の岡6らの手の動きを忠実にトレースする様に寸止め。良く効く心のスーパーブレーキを装備したB食クラバーは、替わりに実車のアクセルを踏み込んで、本店に向けてハンドルを切った。
渡勇があると思われる辺りには、数年前に仕事の関係で良く訪れていた。その時はモチロン渡勇のコトなど知る由もなく、なんだったらワザワザ遠くにある他の店で買い物等していた位である。無知が罪とは誰が言ったのか忘れたが、ホントに知らないって恐ろしい。
幸い他に車もいなかったため、カナリゆっくり走行し、無事に渡勇菓子舗を見つけるコトが出来た。古い建物だが、看板や扉など、手入れが行き届いている様で素晴らしい。こう言うトコロの食べ物は、やはり美味いに違いないと、勝手に妄想が膨らむ。
和菓子屋だけあって、店内には大福や饅頭等が幾つか並んでいる。シュークリームがドコにあるのか解らなかったので、今一度店内をジックリ見回してみると、『新しい仲間、シュークリーム』と書かれた貼り紙を発見。その下にあるのがシュークリームらしい。らしいと言うのは形のコトで、先程も目に入っていたのだが、コレがシュークリームとは想像も付かなかった。
直径10cm程のそれはシュークリームと言うよりも、チョット小さめのメロンパン、或いはふっくら焼き上げた感じのカルメ焼きと言った風情を醸し出している。一見さんでは判断しづらい。店の中には誰もいないのかと思ったが、『いらっしゃいませ〜』と声が聞こえる。更に又店内を見回してみると、立ち上がってようやくショーケースと同じ程の背丈になる老カーサンがいるコトに気が付いた。
優しげで人の良さそうな、牛島のカリスマ@たいやきとは明らかに一線を画す人柄が伝わって来る。身近でコレぐらいの年齢の方に接する時は、動く時に手を貸したり、喋る時にチョット大きめに声を出したりするのだが、ココではそんな心配は御無用である。そんなコトされちゃかえって迷惑かもしれない。
それ位シッカリした老カーサンの売るシュークリームは、女王様の仰る通り、表面パリパリで中ふっくら、甘さ控えめでデリーシャスである。感じとしてはデュプレいしいの小町シューに似ているが、比べると渡勇のが大きく安い。
秋田市内のシュークリームは、ほぼ食べ尽くしたと勝手に考えていたのだが、それはまるっきり1人よがりな考えだと解った。マダマダ知らない食べ物はイッパイあるし、シュークリームの裾野も意外な程広い。トコロでこのシュークリーム。渡勇菓子舗のレパートリーに加わってから、B食クラバーが確認したダケでも3年以上経過しているのだが、一体いつまで『新しい仲間』なのかと気になって仕方ない。
後日、1ヶ月のお勤めを果たし、晴れて車の運転をするコトが出来る様になった免停さんと一緒に渡勇へと行ってみた。もちろんハンドルを握るのは元免停さんである。元免停さんの話によると、シュークリームにはカスタードとゴマの2種類があるらしいので、早速向かってみたのだ。
渡勇に到着。シュークリームはあるが、特にゴマとかカスタードの区別は無い。先日と同じ老バーサンに訊いてみると、確かにゴマ味のシュークリームはあるらしい。カスタードと合わせて4ヶを購入。\440の会計に対して\5,040を渡した。お釣りは\4,600。のハズが!
老バーサンはお釣りの\1,000札を数えだした。『1、2、3、4…』と言ったトコロでコチラがお釣りを貰う動作をし始めた瞬間、あろう事か老バーサンは5!と言った。…。しばし沈黙。あっ、そうか。最初に5枚数えてから1枚引くと言う方法で正確を期そうと考えているんだな!と、コチラが無理矢理納得したトコロで、老バーサンは再び\1,000札を数え始めた。
今度は4で止まるんだろうなと待ちかまえていると、『1、2、3、4…5!』と、性懲りもなく数える。もはや何の理屈付けも出来なくてうろたえているダケのB食クラバーに向かって、老バーサンは躊躇いもなく\1,000札を5枚差し出す。
人生とは何か。どうすれば世界平和が実現するのか。人類が宇宙の果てに到達する方法は?等と、人類永遠のテーマとも言える数々の出来事が、脳内を光の速度で駆けめぐる。まるで金縛りにあった様に身動き出来ずにいるB食クラバーの様子を察した元免停さんが、『1枚多いよ!』と言って、老バーサンに\1,000札を1枚返した。
素晴らしい切り返し。常識外の出来事が発生したため、B食クラバーは何をすれば良いのかサッパリ解らなかったのだが、元免停さんはアドリブに強い様である。って言うかB食クラバーが弱すぎるのか。
危うく\40でシュークリームを4ヶ買ってしまうトコロであった。