東銀座の駅を降りると、突然漂うスパイシーなフレグランス。その元は、やはりナイルレス
トランであった。出口さえ間違わなければ、初めての人でも迷うコト無く辿り着けるに違い無
い。香りにつられてフラフラ歩いて行くと、店の入り口にはTVで見慣れた8゛カボンパパオー
ナーが立っており、コチラに一瞥くれていた。ややビビるB食クラバー。
『お客さん、何人?』『チョット待ってね。』『2階へどうぞ!』と、ほぼコチラに喋る隙を与えず
進める。コノ店に2階があるとは知らなかったので驚く。1階、2階とも、4人掛けのテーブルが
6ヶ位設置されている。お昼の時間を少しずらして行ったのだが、それでも満席の状態であ
った。ナイルレストランの人気の程が窺える。
席に着くとウェイター@indianがやって来た。油断していると、有無を言わさずムルギーラン
チを勧められると聞いていたが、ソレがどれ程の時間でやりとりされるのかも気になったし、
TVや雑誌で必ず紹介されているその料理が、どんなモノなのかも確かめたかくもあり、最
初っから注文する気満々だったため、過剰なまでに隙を見せていた。戦国時代ならば一瞬
の内に、四方八方から少なくとも10人位の人にメッタ刺しされかねないであろう。
ウェイターがテーブルの上にメニューを開く。と同時にメニューの1点を指さし、『只今の時
間、コチラがオススメになっております。』と言った。有無を言わさずと言うか、ウチにはコレし
かありませんよ!ってな具合の力強さを感じる。色んな人の話を聞くと、いつ行っても、ムル
ギーランチを勧められるらしい。と言うコトは、どの時間に行ってもオススメはムルギーランチ
と言うコトだ。『只今の時間』って。
モチロン言われるがママにムルギーランチと、インド料理でドリンクと言えば定番の、ラッ
シーを注文した。テーブルの横の本棚には、現オーナーと、先代オーナーの著した本が置
かれている。インド解放の志士だった先代の本と、面白可笑しく日本のインド料理店を紹介
している現オーナーの本では、内容があまりに正反対と言うか、水と油と言うか、昼と夜と
言うか、月とスッポンと言うか、コレも親子なんだなと、妙に納得する部分も見え隠れ。
壁一面には青を基調としたアートが描かれ、インドっぽいと言うよりも、一瞬風の谷にいる
様な錯覚に陥る。デビュー当時の安田成3の、初々しい歌声が聞こえた気がしてウットリし
ていると、ムルギーランチが到着した。型どおりに盛られたサフランライスに、コールスローカ
レー風味って感じのキャベツ、それからヤッパリ、カレー風味のマッシュポテト、柔らかく煮
込んだ鳥もも肉が載っかっている。
テーブルの上に置くなり、いきなり店員が鳥もも肉から骨を取り出す。僅かな時間のコトな
ので、鶏肉の柔らかさが容易に想像できる。この後、皿に盛られているモノを全て満遍なく
掻き混ぜて、コレでようやく食べるコトが出来る。とは言ってもそれぞれがドンナ味なのか気
になるので、掻き混ぜる前にルーだけを食べてみたが、さすが日本にインド料理を初めて紹
介した店ダケのコトはあって、カナリの辛さ。食事を続けるのは不可能と見たので、改めて
全てを掻き混ぜてみた。
すると、キャベツやマッシュポテトの効果もあってか、幾分マイルドな味に変化した。やは
りコレが正しい食べ方か。隣のテーブルに座っているカップルは、女子がチキンカレー、男
子がムルギーランチを食べている。ムルギーを食べていないと言うコトは、何回も通ってい
る客かと思ったが、男子の方がまるっきり掻き混ぜないで食べている。コレは一体どう言う
コトか。いつもは掻き混ぜてるケド、たまには新鮮な気分でそのまま食べるか!と言うワケ
だろうか。
トコロでコノ店員、料理や水を持って来る時等、何も喋らずにテーブルに差し出すので、不
愛想と言うよりも、やや危なっかしく、何人ものお客さんの服を汚しているんだろうなと思わ
せるトコロが嫌だが、そんな時は両手をあわせて、『ナマステェ〜。』とか言ったら許されそう
な気がしないでもない。
現オーナーは2代目で、先代の時はムルギーランチを食べなきゃ怒られたと言う話だが、
じゃあ何のために他の料理がメニューに載っているんだか解りゃしない。エビカレーやチキン
カレーも美味いと言う話を聞くので、次に訪れる機会があれば、ソレらを食べてみようと思う。
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