秋田市から国道7号線を北上すると、いつも左側に見える建物が気になっていた。国道に面したソノ店には、車で通りすがっても充分認識出来る程の大きさで、『ジンギスカン食べ放題』って書かれているのだから気にならない方がオカシイというモノだろう。しかもソレが\1,000だと言う。…マジですか。
ず〜っと以前、会社の上司と一度、コノ建物に足を踏み入れたコトがある。しかし当時は、絵に描いたドライブインの様な店で、食べ放題系のメニューは無かった様な気がする。現在は水明亭となっているが、もしかしたら店名も違っていたかもしれない。
国道を通る度にいつも視界の隅に入っていたハズなのに、それゆえ日常的すぎて目に入らないのか。主要な交差点には必ずある、交差点名案内の標識の様に。それとも、B食クラバーが所有するお猪口程度の容量しか無いメモリーバッファから溢れ出ていたのかもしれないが。
ジンギスカンブームが秋田に到来したての頃、他のジンギスカン店と共に、TVで紹介されていたのを覚えている。ソレまでは、食べ放題って言っても\1,000ってどうなのよ?と、B食倶楽部を主催する身でありながら、値段の安さを危惧してナカナカ突入に踏み切れなかった様な気がする。
コレがもし、\1,000じゃなくって\1,500だったら、安い!行ってみようじゃない!ってソッコーで行動するのだけれども。コノ\500の差。冷静になって考えてみると、馬鹿馬鹿しくて仕方ない。\1,500が\1,000だからって、何がどうだっていうのだろうか。安い方がありがたいに決まっている。
確かソレに、インタビューを受けていたのが女性だったと思うが、コンナ理由で安いんだとか、自分はジンギスカンが大好きだとか、そんな様なコトを喋っていた様な気がするので、コレは安心・確実!とも思ったモノだ。…もし違う店の人だったら身もフタもないが。
最近のB食クラバーは、野菜食クラバーに変身しつつあるって言うのも、ジンギスカンを食べたい理由の1つだ。焼肉やバーベキューとは違ってジンギスカンの場合、大量の野菜と共に食べると言うのがデフォルトの設定だからだ。以前のB食クラバーなら、アマリ興味の無い野菜のホトンドを焦げ付かせていたが、今ならば絶対に違うハズだ。
水明亭は入り口で食券を買うシステム。店に入った瞬間、ソコにディスプレイされていたフライ系のランチ\650!って言うのが目に入る。いきなりソレにしようかと心が傾いてしまったが、ココは珍しくも初志貫徹、ジンギスカンの食べ放題をオーダーした。
テーブル席があって小上がりがあって、ソノ向こうに、ガスコンロの設置されたテーブルが、20卓位も並んでいたろうか。とにかく広い。以前訪れた時の店舗にはコノ、ガスコンロテーブル部分が無かった様な気がする。…気のせいだったらどうしよう。
ナカナカ元気の良い女性店員が席に案内してくれ、小気味よく食べ放題システムの紹介をしてくれる。コノ調子でバンバン食べてやるぜっ!と、B食エンジンも暖まり放題。肉・野菜だけではなく、御飯と味噌汁もおかわりし放題とのコトだ。醤油系と味噌系の、2つのタレを出していただいた。片方の味で飽きたら、もう片方で食べればいい。なんて気の利いたシステム。コノ調子でガンガン食べてやるぜっ!!と、B食エンジンもオーバーヒート気味。
しかしソノ出鼻が、見事にくじかれる。重低音を響かせながら走り去る、今時のヤングが運転する車の様な重量感のある音と共に、肉と野菜の皿がそれぞれテーブルに置かれた。ソノ量たるや。スイマセン、おかわりの分を既にまとめて持って来てるんじゃないですか?って聞き返したくなる程のボリューム。ムリムリ。コンナの絶対に食べられませぇ〜んと、食べる前にも係わらず、早くも胃袋が悲鳴をあげる。まるで店側からの、おかわりするんなら、コレぐらい軽く食べちゃってからにして頂戴よ?と言う挑戦の様に感じなくもない。
が、とにかく、注文してしまったモノは食べなければならない。程良く暖まったジンギスカン鍋に、まずは野菜を乗せる。最初の説明で、野菜の上で肉を(蒸し焼きにして)焼いて下さいって言われたような気がしたからだ。以前他の店に行った時も、同じコトを言われたのでソノ通り従ったのだが、ソノ店では火力が弱すぎて、そもそも野菜に火が通らないと言う事態が発生したタメ早急に方向転換。鍋で直接肉を焼く方法をとったのだが、店員さんが時々コチラに投げ掛ける視線が冷たかった様に感じた。
ソレと同じ様な目にあったらヤだな、とか思いながら野菜を置いていったのだが、ソレも杞憂に終わる程の強い火力。安心して野菜の上で肉の蒸し焼きを始めた。最近流行っているジンギスカンは、豚肉や牛肉と変わらない様な切り方をされたモノが多いが、コチラで出されたのは昔からお馴染みの、薄〜い円盤形の冷凍肉。思わず、懐かしいぃ〜!って思ってしまった。
今迄の人生でB食クラバーが一番ジンギスカンを食べていたのが、東京で暮らしていた時の夏。毎週の様に会社帰り、銀座東芝ビルの屋上ビアガーデンに行くと、必ずジンギスカンを頼んでいた。巨大なネオン看板を目の前にビールは格別で、時々はハワイアンミュージックをBGMにフラダンサーとかも踊っていた。ビニールで出来た椰子の葉。会社帰りのサラリーマン、OL。何もかもが、想像通りのアフター5!って感じがして、そんな雰囲気もツマミにしつつ飲むビールは最高だった。…酔うと時々視界の端に、ゴジラが見えた様な気がしたが。
ソコで食べていたのが、薄くて円盤形の冷凍肉。ドコにでもありがちなのに、実はソンナにお目に掛かれなかったモノの登場に感涙もひとしお。あぁ〜ビールを飲みたい!って思ったが、水明亭には車で来ているのでそんなコトは出来やしない。飲んでしまったら4〜5時間は、用も無いのにコノ辺をブラブラしなくてはなるまい。
銀座東芝ビルでは、最初に野菜を焼くのは一緒だが、野菜に火が通ったトコロでソレらをよけ、中央部の盛り上がった部分で直接肉を焼いていたのだが、店によって焼き方が違うのは何故だろう?各店主のコダワリなのだろうか。
そう言う懐かしさも感じながら食べ進めて行く。途中でどうしても、普段は寄せておく別腹リミッターを解除する必要性に迫られた。コノ別腹リミッターを開放して肉をおかわりするべきか。しかしどう考えても、今迄食べたのと同じ量の肉など食べられないよ!と、お腹も悲鳴をあげている。食べ放題店に来ておかわりしないなんて、それ即ち負けだろう!と常々考えているB食クラバーとしては、悔しくて仕方ない。
色々なコトを考え、体中のホトンドの血液が胃袋に集中する中、B食クラバーの出した結論は、じゃぁ御飯をおかわりしよう!と言うモノだった。既に思考力が限りなくゼロに近付いているコトが、誰の目にも明らかだろう。最早共通点は、『おかわり』って言う言葉にしか存在しない。
肉・野菜、共におかわりは出来なかったケド、御飯はおかわりしたので、まぁコノ勝負引き分けにしてやらぁ!って、どう考えても負けてる試合を一人で勝手に引き分けに設定してしまう。一瞬、吉本新喜劇の1シーンが瞼の裏に浮かぶ(アホの坂田師匠ね)。喉が渇いたので、最後に水を飲んだトコロでジ・エンド。もうコレ以上、フリスクの1粒すら入りゃしない。
食べ終わったジンギスカン鍋は、当然だが綺麗で、焦げ付きなんかも少なかった。野菜の上で蒸し焼きにしていた成果だろう。油の飛び跳ねも少ないし、綺麗に食べるには理想的な焼き方だろうか。しかし、コノ方法にはB食クラバー的に欠陥があるコトが解った。
野菜好きなB食クラバーは、野菜に火が通ったなぁと思ったトコロで、ソレを食べてしまうのだ。野菜に火が通るってコトが前提で初めて、蒸し焼きと言う手法が効果的なハズなのに、油断していると野菜はいつまで経っても生のままなのだ。モチロン、肉だって生のままだ。
肉が焼けていないから野菜を食べる。肉の味にちょっと飽きてきたから野菜を食べる。今迄はその様なペースと言うか比率で焼肉などに臨んで来たのだが、何だかソレが逆転してしまったかのようだ。
こうなったら思い切ってコレからは、ジンギスカンとか焼き肉食べ放題では無く、スパッと野菜焼き食べ放題!とかにチャレンジしてみるべきだろうかと考えなくもない。