今となっては懐かしい、あぁ、そう言えばそう言うコトもあったかもネ?位にしか思われない気配の狂牛病サイクロンが吹き荒れるまでは、秋田市内ではアッパークラスに属する(と思われる)住宅地であるトコロの保戸野地区で、長い間営業を続けて来た焼肉屋の南山が撤退して以来、次に出来た店がまるでソノ付けを支払わされているかの様な格好で次々と閉店を繰り返す、B食クラバーの中では比較的新しい部類に属するサルガッソースポットに、またもや侠気溢れるチャレンジャーが現れた。
店の名は中国東北料理 甜甜。料理長は本場中国で、国家資格であるトコロの特級技能士の資格を取得した方なのだとか。中華料理士に資格があるとは最近初めて耳にした事柄だが、特級技能士の資格を持つ方は中国でも貴重な存在らしいし、そんなワケで日本になんかマダ数人しかいないと聞いたコトがある。
車に例えたらフェラーリGTO並の希少さに、思わず(GTOを運転していたとしたら)窓から半身を乗り出して大きく手を振りつつ、竿灯大通をパレードしたい様な心境で甜甜に出掛けたくてたまらなくなる。
何故そんなレアな存在の方が秋田に店を構えようなんて思ったのかはモチロン、一介の小市民たるB食クラバーにはサッパリ解るワケ無いが、ココは一つ、ソノ腕前を存分にふるった料理を食べさせて貰いに行かなければならないだろう。ココがサルガッソーならば、気が付いた時にはソノ不思議な魔力に店が飲み込まれてしまっている可能性も否定出来ないし。
ソレにしても中国東北料理とはドンナものなんだろうと気にならないでもない。一般に中国料理と言えば広東・四川・上海・北京料理辺りを思い浮かべるが、東北料理とはソレらの内のドレかに属するモノなのか、ソレとも全く違うオリジナルなルーツを持つモノなのか、俄然気になったりもするが、気になったからと言ってB食クラバーがソレらについて、何がどうであるとかの判定が出来るワケでもない。
まぁとにかく、好奇心ダケを手がかりに、甜甜へとランチに出掛けるコトにした。
南山では何度か食事をしたコトがあるが、ソノ後に出来た店(B食クラバーが覚えている限り2軒)には、一歩も足を踏み入れたコトはない。今回無事甜甜に来るコトが出来て、ややホッとする。
思い返せえば南山は、年に何度かお客さんにの懐に対して非常にやさしい価格設定をしてくれていたり、ランチがとってもリーズナブルだったりして結構重宝していた。南山が店を閉めた時はかなりガッカリしたモノだが、ソンナ時にしか利用していなかったのだから、まぁ仕方無いっちゃあ仕方ない。勢いよく拳を振り上げて見たモノの一体ドコに降ろせば良いのかと、そのまま意味もなく後頭部を掻いてみたりするしかない。
ドアを開けて店内に入るが、店員さんらしき人の影が見えない。ん〜、どうしよう?と思いつつしばし佇んでいると、ようやく店員さんがB食クラバーを見つけてくれて、テーブルへと案内して貰う事が出来た。
店内中央にレジがあり、左右の部屋に客室があると言う基本的な作りは、南山の頃と変わっていない。思うに、南山の後の店も甜甜の前の店も、この作りを踏襲していたに違いない。内装はスッカリ中国風に変わっているが、エアコンの吹き出し口の塗装がワズカに剥げている辺りが、建物の歴史を感じさせる。
アップライトピアノかオルガンかハッキリ判別出来ないが、鍵盤楽器が置かれている。夜になるともしかして、ジャズか或いは中国の大陸的な音楽を演奏したりするのかもしれない。
メニューを広げる。ランチタイムは8種類の定食メニューとチャーハン・ラーメン・焼きそば・餃子。値段の基準点は\800か。豚角煮ラーメンや海鮮塩焼きそばなんてぇモノも気になったが、最近血が足りねぇ!とか急に思い立ったので、豚レバ炒め定食を頼むコトにした。
しかしココから、入店時にも感じたアノどうしようもない時空間を、再び体験するコトとなる。店員さんに注文しようと思っても、客室に店員さんは一人もいないし、タマに見かける店員さんは、他のテーブルで注文された料理を持って忙しそうに歩き回っている。まるで、ココに注文をしたがっているB食クラバーがいるコトに、誰も気付いていないの様だ。こう言う場合の頼みの綱、呼び出しボタンも見当たらない。
だがコレはB食クラバーにとってはよくあるコトで、実は意外と慣れっこだ。B食クラバーと言う存在の希薄さによって導き出される非情の定理。まるで自分が透明人間にでもなってしまったかの様な心境に。
どうせ気付かれないのならいっそのコト、このまま帰ってしまおうかとさえ思ったが(実際に帰ってしまったコトが何度もある)、せっかく来たんだし&特級技能士の料理も食べたいし!の合わせ技でどうにか踏みとどまり、厨房からテーブル迄と言う目的地から目的地迄しか視界に入ってません!的な店員さんをなんとか掴まえ、注文するコトに成功した。
料理が出てくるまでの間暇だったので何げにメニューを開いてみると、中国東北料理のいわれが書かれていた。東北料理のルーツは、山東料理や北京料理にあるらしい。小麦を使った料理がメインストリームだと書かれているのを発見し、ああああぁっ!こんなコトなら定食よりも、ラーメンとか肉まんとか餃子とか頼めばよかった!と思ったが後の祭り。注文するのにアレ程体力を使った後では、改めてもう一回注文しよう!なんて気持ちもナカナカ湧き起こらない。
甜甜の料理を食べて、改めて認識出来たコトがある。ソレは、B食クラバーに本物は似合わない!と言うコトだ。高級フレンチのステーキよりも屋台の焼きそばを好み、壁に”時価”とか書かれている寿司屋よりも\100の回転寿司のがよっぽど美味しいジャン!とか思うB食クラバーには、特級技能士の腕の素晴らしさが判断出来なかった。
こんなコトは何度も体験したコトがある。店員さんに気付いて貰えなかったコトと合わせて、今日と言う日はB食クラバーにとって、世の中に於いてB食クラバーとはどの様な存在であるのかを、再認識する日であったと言えよう。…コンナ再認識したくもないが。
願わくば、イツの日か舌を磨いたB食クラバーが、甜甜の料理を食べてコレめっちゃ美味い!とか言って、目ん玉飛び出そうな程の勢いで料理を掻き込む日が訪れんコトを願って止まない。