店  名
 博多一風堂 盛岡店
食べた日
2008/02/23
住  所
 岩手県盛岡市菜園2-3-4
営業時間
11:00〜翌3:00
電話番号
 019-604-3500
定休日
 

からか麺・一口ギョーザ
からか麺
からか麺のトッピング
一口ギョーザ
調味料など

前  説

 クラバーKからメールが届き、緊張が走る。日常的に、クラバーKから電話がかかってくるコトはアマリ無い。そしてソレ以上に、いや、ハッキリ言ってメールが届く頻度はそれ以下だ。

 クラバーKから電話がかかってくるのは、月にせいぜい1〜2度で、メールが来るのは年に1〜2通程だ。差出人にクラバーKの名前を見つけたB食クラバーの指先が、かすかに震えたのは気のせいか。

 『週末にドライブしない?』クラバーKから送られて来た文字は、以上が全てである。クラバーK以外の多くの人ならば、件名にソレを入れた後、内容部分に更に、文字が沢山続くハズだ。

 『土曜日なら良いケド。』B食クラバーも負けじと、必要最小限の文字で返信する。次に返事が来たのは8時間後。『じゃ、お昼頃出発で!』ソレを見たB食クラバーは、更に簡潔に返信する。『了解。』

 この、冷え切った夫婦の会話の様なメールのやりとりはなんなんだ。晩ご飯を一緒に食べながら、『明日、粗大ゴミの日だから』と妻に言われた夫が、朝出掛ける前に読み残した新聞に目をやりつつ、しかし妻には一瞥もくれず『…解った。』って言ってるかの様に、ソノ場の雰囲気は張りつめている。

 大人の事情を理解し始めて、しかし只ソレを受け入れるコトしか出来ないローティーンの子供がソノ場にいたら、いたたまれずに自分の部屋へと逃げ込むか、『お母さん、良かったね!お父さん明日、手伝ってくれるって!』と、会話の内容には不釣り合いな程のハイテンションで、取り繕おうとするかもしれない。

 クラバーKと会話するに当たり(メールも含めて)、ココ何年かで身につけたコトがある。ソレはコチラから過度の質問をしないコト。いや、他の人にならばソレぐらいの質問、するのが当たり前のコトなのだが。

 フツーならばドライブに行こう!って言われると、ドコへ何の目的で行くのか気になるが、ソレをクラバーKに(特にメールで)聞くのは、神経衰弱やノイローゼを招きかねない程精神的にツライ。

 『盛岡に』・『服を買いに』・『店名は忘れた』なぁ〜んてヤリトリを、何時間もかけて出来る程、B食クラバーは強くない。

 土曜日にクラバーKとドライブに行く。ソレさえ決まれば、後は何も気にしない方が良い。ソレがB食クラバーのクラバーK対策だ。『盛岡に』・『服を買いに』・『店名は忘れた』は、合流後30秒で聞き出した、今日の目的地と目的である。


中  説

 本日、クラバーKと盛岡に行くに当たり、気になるコトが1つある。ソレは、新聞でもTVのニュース番組でもインターネットでも、全てのメディアで、コノ週末は冬型の気圧配置が強まり、強風が吹きまくる大荒れの天気になります!と予報しているコトだ。

 ソンナ天気の日に奥羽山脈を越えようとしているのかコイツは…。自分が運転するんだったらぜってー行かねー、とか思ったのだが、一度腹をくくったのだから、もう盛岡に行くしか道は残されていない。出発時刻に当たる、お昼近い時間帯の秋田は、その後の荒天を予想するのが難しい程穏やかだった。

 もう1つ気になるコトがある。所用で新潟から秋田に泊まりに来ていた親戚が、帰るからと言って秋田駅に行ってみたのだが、羽越線は運転を見合わせているとのコトで戻って来たのだ。しかしコレについては、天気が大荒れなのは山形や新潟辺りであって、秋田や盛岡はソコまで酷くはなるまいと言う、甘過ぎる予測を立てさせたダケであった。

 行きの盛岡路は快適で、途中、協和から角館にかかる道路の一部が白かったのみで、他の部分ではアスファルトが顔を出していた。併走する秋田新幹線こまちの姿を何度も目撃したので、やっぱりコッチは平気なんだ!と思い上がる材料はタップリと揃っていた。

 盛岡には雪は積もらないけれど、その分かえって寒さを感じる。とは、良く聞く盛岡評だ。しかし学生時代、盛岡を何度と無く訪れていたB食クラバーは、雪も無いし寒くも無いし、皆が言ってるコトって盛岡に対するやっかみみたいなモノじゃないの?と思っていた。ソレを表す様に、車の中から見える、街行く盛岡市民の皆様方のファッションは軽装で、秋口か春先の様な出で立ちで闊歩していらっしゃる。

 うわぁ〜もう、イカにも真冬です!みたいな格好して来ちゃったよぉ。コレって晴れた日に1人ダケ傘を持って歩くのと同じ位恥ずかしいよなぁ、とか思って外に出てみると、朝秋田を出て来た時よりも明らかに寒い!なんなんだコノ気温は!って言うか街行く盛岡市民の皆さん、あなた方ソンナ格好で寒くないんですか!と、1人1人にインタビューしたい気持ちに駆られる。

 世間の方々が仰る盛岡評は、ヤッパリ正しかったんだなぁと改めて思うが、じゃぁ昔B食クラバーが感じていたコトは一体何だったんだろう?…年齢の違いによるモノとは思いたくもないが。


Comment

 クラバーKの用事は1時間もしないで終わり、残された予定は何もない。いつもならば盛岡に行く!って決めた時は、ドコソコにあるらしき美味しい店情報を下調べするのだが、今回はクラバーKからのお誘いで、しかも前日ワリと遅い時間まで、ホントに行くのかどうか確信が持てなかったので、その辺に関してはまるっきりノープランで来てしまった。

 目的もなく歩く我々の目に飛び込んで来たのは、鶏ガラメインに豚骨スープをブレンドしたラーメンでお馴染みの、博多一風堂だった。じゃぁココで食べてから帰ろう!と言うクラバーKに対し、寒さに震えているB食クラバーが断る理由はなかった。

 木造の大きい引き戸が二段構えになっていて、ソノ、やや重い扉を2つ開けて店内へ突入。その力加減が丁度、電気の切れた自動ドアくらいの負荷だったので、もしかして休みなのだろうかと疑ってみたが、中にはお客さんが1人いて、ラーメンをすすっていた。

 店内はカウンターと、8人〜10人が掛けられそうな大きいテーブルがいくつか置かれているのみ。2人用とか4人用とか言う小さいテーブルは置かれていなかった。有無を言わさず、カウンター席へと案内される。

 大きくメニューは4種類あり、ソレゾレについて細かく説明が記されているが、盛岡の街中を歩いている時に、思った以上に体温を奪われてしまったため、辛いモノを食べたら体温が上がるに違いない!と、直情的思考が最優先で走り、アマリ深いコト考える前に、からか麺を注文したくなった。名前が示す通り、辛そうである。

 からか麺2つと一口餃子を2つ頼んで安心したトコロで店員さんが聞き返してくる。一口餃子は10ヶありますが、2皿で良いですか?と。一口餃子なんだから小さいだろうし、別に10ヶあったって食べきれるんじゃないの?と思ったが、こう言う、量を心配する時の店員さんには従った方が良いと、B食クラバーは何度かの経験で身を以て知っている。ココは素直に従い、1皿だけ注文した。

 続いて今度は、麺の固さはどうするかとの質問が来た。ハリガネ・バリカタ・カタメ・フツーなど、数種類あるらしい。クラバーKがカタメと答えると、更にスープの辛さはどうするかと訊いてきた。フツー・1辛・2辛と選べるらしい。クラバーKは1辛と答えていた。

 クラバーKを始めとするラーメン通の方々にはコノ細かさが、お客さんの好みを考えた素晴らしいサービスの様に感じられるのかもしれないが、メンドくせー、ココはスタバかよ!と思ったB食クラバーが、どちらもフツーでと答えたのは言う迄もない。

 とんこつラーメンにカラシ味噌が乗っていて、チャーシュー・海苔・味玉・赤い色の御飯が別皿に盛られてきた。コレはアレか、具がスープの熱で変形しないタメの対策か。テーブルの上には紅生姜・高菜と言った、とんこつラーメンではお馴染みの薬味と共に、モヤシの辛味和え的な物と、更にスープのタレが置かれていた。スープが薄いなと思ったら、自分で調整して食べろと、そう言えばぞんたくでも店主が喋り続けていたのを思い出す。

 ぞんたく程香りがキツくなく、飲みやすいスープ。真っ直ぐだが少々ひねりが入っている様に感じられる麺。カラシ味噌も、ゴメンナサイ!と謝りたくなる程の辛さではなく、非常に食べやすい。さっきまで冷え切っていた体が、徐々に温まっていくのを感じながら食べ進める。

 あぁ〜、温かくなって来たよぉ〜。からか麺にして良かった!と思った辺りから、自分が大量に発汗している事実に気付く。アマリ辛さを感じなかったから気にしていなかったのだが、体は敏感に反応していた。

 B食クラバーは辛いのを口にするのは意外と平気なのだが、体は耐え切れずに汗をかいてしまうのだ。あぁ〜、もっと食べたい。でもコレ以上食べるとマタ汗が!と思ったB食クラバーは、トッピングされて来た赤い色の御飯を食べて一呼吸置こうとした。

 しかし、恐るべし、からか麺。勝手にケチャップで炒められたゴハンであろうと想像していたB食クラバーの舌先が、妙な違和感を示す。甘さを求めて口に入れたソレは、予想外に辛かった。よぉ〜く味わってみるとソノ赤色の元は、唐辛子であるコトに気が付いた。

 冷静に考えれば、ラーメンにケチャップ御飯がつくなんてあり得ない。しかしソノ時のB食クラバーには全くソンナ余裕などありはしない。このラーメンは辛さダケなのかよ!と、自分がソレを求めて注文したのに、前提を覆すような意見を吐きたくなる。まさかコノ味玉とチャーシューも辛いんじゃないだろな?と思いながら、おそるおそる口に入れてみたが、ソレらは辛くなくてホッとした。

 食べ終えたB食クラバーは、アマリの暑さに耐えかねて、車に辿り着くまでの帰り道、上着を身につけないで盛岡の街を歩いた。先程までアンナに寒がっていた自分はドコに行ったのか。セーター1枚で歩いている人がいるよぉ。信じられないよぉ。と思っていたソノ人と、今は同じ格好をしているのだ。もしかしたら先程見かけたアノ人も、一風堂でラーメンを食べた後だったのかもしれない。


後  説

 いやぁもう、盛岡ときたらまるで春みたいだったね!と、互いに口にしあいながら帰り道を走る。しかしソレも束の間、盛岡市を抜けた辺りから路面は急に真っ白くなり、我々が乗る車に猛烈な地吹雪が吹き付け始めた。

 あぁなんだ。やっぱりコッチにも寒波が来たんだねと、まだソノ時は余裕でいたが、奥羽山脈に近づくにつれて、吹雪はソノ強さを増す。しかし、雪道にも吹雪にも慣れている(ツモリの)我々は、秋田と岩手ってこんなトコが違うよね?なんてぇコトを、とりとめもなく話していた。

 途中、あっれぇ〜、あの辺なんか白いよねぇ〜と、50m位先を指さした瞬間、恐ろしい程の突風が吹き付けて来る。

ソノ時、視界ゼロ!

 今迄に何度も猛烈な地吹雪の中を運転したコトがあり、まぁチョットつらいケド、コレぐらい平気だよね?とか言い合っていた我々だが、車のボンネット以外は何も見えないと言う事態には遭遇したコトがない。

 コレがウワサのホワイトアウトなのかっ!とたじろいでいるB食クラバーを後目に、クラバーKはユックリとアクセルを踏み込む。さっき見えていた道路は確か真っ直ぐで、対向車もいない雰囲気だったが、お前コレってチャンと道路に沿って進めてるのかよ!対向大丈夫なんだろうな!って言うかガードレールの外は崖なんですケドぉ〜〜〜〜〜っ!

 と、体を硬直させていたB食クラバーだが、10秒位すると、吹雪は途切れて、視界も戻って来た。うわもう何だよ、すんげえビビッたよ〜、と口々に言い合っていた我々は、その後秋田に帰るまでに10回位同じ経験をするとは思ってもいなかった。

 何度かそう言う地吹雪に遭遇すると、僅かだが余裕を持つコトが出来、あ、次はアソコを通るとホワイトアウトだ!と解るようになった。崖の下から吹き付ける地吹雪が、まるでバラエティ番組の罰ゲームで使用される炭ガスの様な勢いで、ガードレールの切れ目から強烈に噴射されているのだ!

 …ソレが解ったトコロでホワイトアウトには間違いなく遭遇するし、何も見えなくなった我々に出来るのは、只々なすすべもなく、嵐が通り過ぎるのを待つことダケだった。猛威をふるう自然の前に、人は斯くも無力なのかと、改めて思い知らされる。

 翌日、秋田と盛岡を結ぶ秋田新幹線は、朝から運転を見合わせているとの報道がされていた。そりゃそうだろ、と思うと同時に、よく無事に帰って来れたよなと思うB食クラバーは、コレからは冬に、車で盛岡へ行くのは絶対に止めよう!と、固く心に誓った。

 って言うよりも何よりも、クラバーKからメールが来たってコト自体が、今回B食クラバーが遭遇した全ての、引き金になっている様な気がしてならない。