赤山は某パチンコ店の駐車場内にあり、その店舗は昔から何回か、主を替えている様子
であった。漠然とだが、パチンコに来る客目当てで営業しているんだろうなと思い、何となく
イツモ素通りしていた。しかしチョット考えると、パチンコ来て儲かったお客は寿司とか焼肉
とか食べに行きそうだし、スったお客なら吉野家とかに行きそうだ。赤山は赤山独自の顧客
を掴む方針なのに違いないと、勝手な思い込みを胸に抱き、ノレンをくぐった。
入り口には、『只今の時間、不愛想で傲慢な店主が1人でやってますが、怒らないで下さ
い。』と書かれた札が掛かっていた。傲慢と言う辺りに、まあ女王様を泣かせそうになった迫
力を感じる。一体どんな人なのか、期待のレベルメーターはココで計測不能になっていた。
…。壁を向き、客には背中を向けている店主。コチラの存在に気付いているのか気付いて
いないのかサッパリ解らない。こりゃホントに不愛想だなと思いつつ、座りながらテーブルの
上に置かれているメニューを見ると、ようやく【あっ、客が来たんだ。】って感じでユックリとコ
チラを振り返った。コチラに向いたトコロで止まって、『いらっしゃい!』って声が掛かるのを期
待したのだが、店主はそのまま何も言わずに、再び壁の方に向き直ってしまった。
『一周すんのかよ!』と三村マサカズ風に突っ込みたくなったが、店主が不愛想だって言
うのは入り口の札に書かれていたし、何より店主の顔は、高校時代の同級生に似ていた。
なんて名前だっけな?と思い出している間に、ツッコミのタイミングを逃してしまっていた。
赤山のイチオシはタンタンメンで、辛さが入門・初級・中級・上級・極上と5段階に分かれて
いるらしい。その中で初級が初心者用だと書いてあった。かまみ特派員より、タンタンメンの
上級を薦められていたが、初めての店で辛さを舐めてかかると、とんでもないメにあうかも知
れないので(ラーメン・中本参照)どっちつかずの中級を頼んでみた。
相変わらずコチラ側に背を向けている店主に向かって呼びかけてみたが返事が無い。コレ
はカナリ手強い相手だなと思いながらモウ1声掛けてみると、ようやくコチラを振り返った。
タンタンメンの中辛とエビ入りギョーザ(商品名は忘れた)を頼んだ。店主は何も言わなかっ
たと思うが、頷く位はしたかもしれない。やがて厨房の中でせっせと働き始めた。
タンタンメンとギョーザが来たが、その時、期せずして店主の口から、『ハイお待ちどう!』
って言葉が出た。?無愛想な店主のハズなのに何故?と逆にコチラが慌ててしまい、普段
なら『はいドーモ。』とか言い返すトコロなのだが、何も言わずにテーブルの上に置かれるの
を待ってしまった。店主は【無愛想な客だ。】と思ったかも知れない。
ギョーザは竹で出来た入れ物に入っていて、一瞬ギョーザとは気付かなかった。もうチョッ
ト判断が遅かったら、『ギョーザないの?』とか口走ってしまい、店から叩き出されかねない
トコロだった。やばいヤバイ。
タンタンメンは細麺で、予想通りカナリの辛さであった。中辛にして良かった!と自らの学
習機能の高さに感謝した。ゴマだれを絡めながらスープを飲むと、多少マロヤカになるモノ
の、その辛さにドッと汗が噴き出した。
料理を作り終えた店主は、再び彼の基本ポーズなのであろう壁側を向いてしまった。その
後ろ姿は、店内に設置されているTVで放送されていた大相撲中継の中で活躍する方々と
ダブらないでもないが、一心不乱に何か考え事をしている風情でもある。
ちなみに、B食クラバーが行った時は不愛想さは感じたモノの、威勢の良さや可愛らしさは
感じられなかった。見る者全てにそれぞれの感想を抱かせる不思議な店主。彼が考えてい
る(であろう)沢山の物事の中に、店の名前を【あかやま】にするか【せきざん】にするかって
言うテーマが含まれているコトを願ってやまない。
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