今迄は、年に数回しか届くコトの無かったクラバーKからのメール。しかし振り返ってみるとココ1月半程、週イチくらいのサイクルで届いている。このメール受信数は恐ろしい。
いや、フツーの人ならば別にコレくらい当たり前のコトで、ソレでも少ないって!と、今時のヤングならば思ったりするかもしれない量だが、元々の受信数が少ないクラバーKからのメールを一般の人に置き換えた場合、ソノ比率から換算してコノ量は、もはやスパムレベルだと言っても過言ではない。
このトコロ、クラバーKからの要請に応じて一緒に過ごした時間を思い返してみると、何だか解らないけれども自然に涙が頬を伝う。頭の中ではベトベン作曲の交響曲第五番、【運命の動機】の部分が激しく鳴り響き、心なしか胃の下の部分がシクシクと。
無意識の内に、おへその少し上の辺りに手を当てながらメールを読んでみるとソレは、とあるラーメン屋に行こう!と言う内容だった。イヤな予感はしたモノの、是非行ってみたいラーメン屋だったので、応じるコトにした。
クラバーKには珍しく、定休日も営業時間も調べたから大丈夫、大船に乗ったツモリで!とか言っていたので安心していたのに、店の前に着くと様子がオカシイ。営業はしている風なんだけれども、玄関から漂ってくるオーラにウェルカム要素が一個もない。
コカコーラだよと言われて、でも実際に差し出されたのはペプシコーラだったぐらいの違和感を抱きながら入り口に接近する。扉には1枚の貼り紙。何だろ?新手の罠?とか思いながら近づいてみるとソコには、本日貸し切りと書かれていた。
あぁ貸し切りね。じゃぁしょうがないや。ん〜じゃどうする?と言って諦めようとした瞬間、伝説のビッグウェンズデークラスの大波と共に、1つの疑問が猛烈な勢いで押し寄せて来た。
ラーメン屋が、貸し切り?マジ?ラーメン屋を貸し切って、何するの?え?ラーメンパーティ?喉の奥から止めどなく疑問符が溢れだして渦を巻く。40年に1度訪れるかどうかと言われる巨大な波に、B食クラバーの何もかもが飲み込まれていく。もはや、呼吸さえもままならない。
やはりクラバーKと行動を共にすると、必ず何かが起こる。ソレはもはや、避けては通れない道なのか。皆が戦争は避けられないと言う。じゃぁ何で平和が避けられないと言わないの!と、ヒッチコックムービーのヒロインよろしく思ったりもするが、やはりクラバーKと行動を共にすると言うコトは、そう言うコトなんだろうと、解り切っているコトではあるが、改めて諦めの境地に。
クラバーKは、もう1軒行ってみたいと思っている店の名前を挙げた。当然ラーメン店で、ソノ名は時代屋。
時代屋と言えば結構名の通った店で、モチロンB食クラバーだって名前は知っているし店の場所も知っている。しかし1度も入ったコトが無い。昼間ではなく主に夜間、しかも以前は21:00〜営業開始だったって言う辺りも、ソノ原因の1つなんだろなーと思ってみたりする。当然と言うかクラバーKも入ったコトがない。
近所に住む大学生をはじめ、オソラクではあるが常連率の高さを感じさせる店なので、小心者さ加減ダケが自慢の我々B食クラバーズとしてはイマイチ後込みしなくもないが、ココは一発暖簾をくぐった瞬間、『まいど!』と、大阪生まれでゴスペル経由なジャズシンガーの様なノリで声をかけて入ろう!と心に決めてみた。
しかし、イキナリ出鼻をくじかれる。扉を開けると、靴をようやく1足置ける程度しか奥行きの無い狭い土間部分があって、ソコから急に、膝くらいの高さの、板張り小上がりに登る感じの店内レイアウトになっていた。その狭い土間部分で靴を脱ぐスタイル。
やぁ、どーもどーも!と言いながら、訳知り顔で店内奥深くまで一気に進んで行ってしまおうと考えていた我々B食クラバーズは、狭い玄関部分でイキナリ躓きそうになってしまった。…って言うか実際躓いた。
テーブル席が3つ(だったか?)と、掘りゴタツ形式になっているカウンターで構成されている店内。他に誰も座っていないし、当然テーブル席に座るのだろうと思って進んで行く。じゃぁ何を食べようかな?と思い、腰を下ろしながら振り返ってみると、目の前にいるハズのクラバーKがいない。
え?何で?と店内を見回すと、なんとクラバーKはカウンターの方に座っていた。混んでいる場合を除いて、一般的にはお一人様がカウンター席に座って、そうじゃない場合はテーブル席に座るモノだと思っていたB食クラバーの固定観念は、見事なぐらい綺麗サッパリ覆された。
1度カウンター席に座った以上、クラバーKが席を変えるとは思えない。仕方なくクラバーKの横に座り直す。何故カウンター席なのかを聞いてみると、どうやら掘りゴタツっぽくなっているのが気になったらしい。
ソレならソレで一声掛けてからにしろやっ!2人一緒に入って来たのに、あれ?アナタ方別々のお客さんなんですか?って店員さんに思われたかもしれないだろがっ!と、心の中でボヤいてみるも、クラバーKのとった行動のコトだしな、とか思うと怒る気にもなれない。
そんなコトに気をとらわれているよりも、ココはパァ〜っと楽しい食事のコトだけ考えよう!と頭の中を切り替え、何を食べようかとメニューを見てみると、一番見やすいトコロに『つけ麺』と書かれていた。するともう、つけ麺以外の何モノも食べる気がしなくなって来た。
B食クラバーの頭の中にはシッカリと、つけ麺=クラバーKと言う等式が成り立っている。ソレは既に強烈に焼き付いていて、消し去るコトが出来ない。足してみても引いてみても、火に掛けてみてもトンカチで割ってみても崩れるコトがない。
クラバーKのコトを考えるのは止めよう!と思ったハシからのコノ出来事に、もはやクラバーKの呪縛から逃れるのは不可能なんだと、そろそろ腹を括ってみる時期が来たのかと思わなくもない。
つけ麺には味噌と醤油の2種類がある。クラバーKはモチロンつけ麺で、味噌味を注文した。僅かながらも抵抗したい気分のB食クラバーは醤油味。餃子を食べたかったので注文すると、今日は出来ないと言われたので、何げに目に入った鶏の唐揚げを注文した。クラバーKは更に煮豚丼を注文。
醤油味と言いながらも、カナリ赤みがかった色のスープは、飲んでみると辛さと酸っぱさが強烈に口の中を襲う。麺は、つけ麺にありがちな太麺ではなく、まぁなんて言うかフツーの太さ。少し量が少ないかなーと思ったので、唐揚げを頼んだのは正解!と思ったのだが…。
出てきた唐揚げを見て驚きの色を隠せないB食クラバー。なんて言うか、一般的な食堂で提供される唐揚げ定食くらいのボリュームがある。唐揚げの個数を数えてみると、何とソコには8ヶあった。横には野菜が添えられている。コレにゴハンとみそ汁が付けば、完全に一食分として事足りる。しかし、今目の前にあるのはゴハンとみそ汁ではなくて、つけ麺だ。
完全にオーバーウェイト。戦う前からグロッキー気分のB食クラバーは、クラバーKも唐揚げ好きだし、1ヶか2ヶあげるよ!と言いながら、自分が食べる量を減らす作戦を試みようと思ったのだが、煮豚丼を食べているクラバーKの表情からは、ハッキリ言って満腹です!と言うサインが、誰の目にも明かな程に出ていた。
サスガのクラバーKもコレは無理だろう。諦め…。コノ言葉が頭の中に浮かんだのは、今日一日で一体何度目だろうか。ソノ言葉の意味に従いって余計なコトは考えず、只々ヒタスラ、目の前の料理を減らすコトだけに集中した。
何とか食べ終えた我々が店を出ようと靴を履いていると、新しく1組のお客さんが入って来た。おっ、人気だね、って思いながら靴を履いて外へ出ると、更に次のお客さんとすれ違った。
驚く程の集客率。店の外にまで行列が出来る程の人気店では無いかもしれないが、客足が途切れる時間がないって言うのは、1つの理想型の様に感じられた。そう思いながら時代屋が面した道路を改めて通ってみると、ソコを歩いている人々全ての目的地が、時代屋の様に見えてきたから不思議だ。