品  名
 札幌らーめん缶 醤油味
食べた日
2007/04/17
販売者
 UMAI FU 東京都千代田区飯田橋3-11-5
内容量
290g

らーめん缶外観
開けたトコ
蒟蒻麺
缶トップ
折り畳みフォーク

前  説

 4月の惰眠を貪るB食クラバーのまどろみは、突然のメールによって終わりを告げた。差出人は女王様。え〜。一体なんですか、眠いんですケド。と思いながら携帯を見つめると、ソコに表示されているのは、電車男で有名になった、アキバ名物おでん缶の写真であった。

 ん?一体?何故?ワタクシ女王様に、おでん缶を食べてみたい!って言ったっけなぁ〜と記憶も怪しい。もしかしたら言ったかもしれない。コノ間会った時に女王様がソノ話をされて、調子に乗ったB食クラバーがソレ良い!サイコー!!的な発言をしたかもしれない。しかし、していない様な気もする。コノ記憶のあやふや加減。急に起こされたバッカリで、マダ前後左右不覚なせいだと思いたいが、コノ文章を書いている今になっても思い出せない辺り、カナリ悪性の脳内病原体が広がっている様な気がしないでもない。

 どう言う理由で女王様がアキバ名物おでん缶の写真を送ってくれたのかイマイチはっきりしないが、とにかく珍しいモノであるコトは間違いない。聞けば仁井田のケイマートと言うトコロの\100自販機にあると言う。まぁアレだ。今時\100自販機は貴重だし、話のタネに今度ソノ辺を通った時に買ってみても良いだろうと言う思いと引き替えにソノ時は、何故女王様が教えてくれたのかってコトはもう考えない様にした。

 数日が経ち、夜明け前の春。ワズカに、秒針が1つ時を刻むにつれて、空と大地を2つに分ける様に明るくなって行く山の稜線。一日の始まりを待ち構えていたかの様に、空は黒から赤、そして青へと自らの色を変化させる。夜の終焉を告げる太陽の光を反射した雲が、ソノ名残を惜しむかの様に暗く、深い色で上空を漂う。しかし、白くなるのにはもう、ソレ程時間はかからない。

 そんな平安時代の絶景を体験している気分で夢を見ていたB食クラバーの眠りを、またもや一通のメールが遮った。差出人は女王様。え〜。一体なんですか、今スンゴイ良いトコだったんですケド。と思いながら携帯を見つめると、ソコに表示されているのは、札幌ラーメンと書かれている缶の写真だった。

 コレは一体なんですか?ラーメン味のジュース?いや、そんなモン飲みたいなんて酔狂な人間がいるワケがない。シップ味の炭酸飲料とかコーヒーを炭酸で割った飲み物が好きな人が、広い世の中にはいないコトもないだろうが、ソレにしてもラーメン味のジュースはあり得ない。夏の会社帰り、ビアガーデンでビールの代わりに焼肉のタレを一気飲みするぐらいあり得ない。眠い目を擦りながら女王様からのメール本文を読むとソコには、蒟蒻麺使用・フォーク付と書かれていた。

 まさかコノ缶の中にラーメンが入っているのか?だからフォークが添付されているのか?と、寝起きの頭を激しく撹拌された気分になりながらも一生懸命考えるB食クラバー。しかし、いくら考えても何一つ解決の糸口を見つけだせない。ヤハリ実際に体験しないコトには何事も始まらないだろう。ココは実践あるのみ。コレが何なのかを実際にコノ目で確認したい!と言う欲望を抑え切るコトは出来ず、ついついソノ販売機迄車を走らせてしまった。


Comment

 B食クラバーが件の自販機に辿り着くまでには少々時間がかかったので、ソノ間に何度か女王様とメールのやり取りがあり、味噌味もあると教えて貰った。ソコから逆に推理し、醤油味があるコトも解った。

 女王様から送られて来たおでん缶の写真は、自販機のサンプルを撮影したモノだったのに、ラーメン缶の写真はテーブルの上に置いてる様に見えた。思い切って女王様に、もしかして食べたんですかと聞いてみると、醤油はおでんの味がすると返信があった。

 …おでん

おでんの味がするんですか?

ラーメンの癖に!!!

 おでんの味がするのなら、ソレは最早ラーメンではなくておでんなのでは?と言う強い疑念を拭い去るコトは出来ない。ヤッパリ買うの止めようか…なんて思ってもみるがしかし、車は少しずつ目的地へと近付いている。車は急には止まれないし、走り始めた機関車を止めるのは難しい。そして一度火を入れたコロニーレーザーは爆発もするんだぞ!と、木星帰りの男が耳元で叫んだ様な気もした。もうB食クラバーがラーメン缶を買う流れは、誰にも止めるコトは出来ないらしい。

 そして遂に、B食クラバーは目的の自販機前に立つ。ソノ眼前には、信じられない光景が広がっていた。女王様からは\100自販機と聞いていたのに、ラーメン缶が設置されたソコには、なんと\250の値札が貼っ付けられていた。マジですか。そりゃあ確かに女王様はラーメン缶が\100で販売されているとは言っていなかったケド、\100自販機で売っているって聞けば誰だって、ラーメン缶も\100で販売されているって思うじゃないですか!それともソンナ風に思うのは、浅はかなB食クラバーだけですか。そうですか。

 \100だと信じて疑わなかった商品が現実には\250だなんて、購入を取りやめる動機としては充分過ぎるだろう。37型のプラズマTVが\100,000の格安販売だっ!と、現金を握りしめて店まで行った途端、実は\250,000だった!って言うのと、B食クラバー的落胆の度合いはイコールだ。どうしよう?としばし考える。

 商品サンプルを見てみると、味噌と醤油がある内の、味噌の方は売り切れている。…味噌が人気商品なのか?それとも醤油は回転が速いから常に補充されまくっているのか?自販機の前に黙って突っ立っていると、ソノ時間分ダケ違う考えが浮かび上がって来て、そしてソレらは一向に消える気配がない。

 脳味噌の許容量はリミット一杯。もはや何も考えるコトが出来なくなったB食クラバーは、意を決して\250を自販機に投入し、醤油のボタンを押した。人生で取り返しのつかないコトって、体験しているソノ瞬間には解らない。決まって後から、あぁ、自分の人生の岐路はアソコだったんだなと思い当たるモノだがコノ時は、受取口に商品が落ちて行く音の鈍さが、コレから自分の身に降りかかるであろう暗い出来事を暗示しているんじゃないだろうかとの悪寒が背筋を走った。そして大概にして、こう言う予感コソ良く当たるモノだ。ありがたくないコトに。

 ラーメン缶は温められていた。ホットコーヒーなんかと同じ位の温度で。もうなんだかコノ温かさも気持ち悪い。あぁ買わなければ良かったと、車を運転しながら激しく後悔する。何で買ってしまったんだろう?いくら考えても考え直してても、魔が差したとしか思えない。こう言う精神状態の時に、人々は背徳行為に走ってしまうのか。そう思うと一転、アゲアゲな気分になり、ラーメン缶を買ったよ!と、女王様の他にクラバーRさんやMさんに迄メールしてしまった。もう人生、深く考え込まない!悩まない!気楽に行こう!お気楽に!と、B食クラバーの脳内で麻薬物質が、止め処なく排出されているのを感じた。

 会社に着くとクラバーMさんとAさんが、一体コレは何なんだとハシャギまくる。ラーメン缶・蒟蒻麺・フォーク付と、一通り騒いだ後でネットで検索をし始める始末。画面に映し出される情報の渦。アキバ名物おでん缶の次はコレだ!って言う内容のモノが一番多かったが、次に目に入ったのが、かの有名店、麺屋武蔵の店主が開発したと言う情報。

 東京のラーメン激戦区新宿で、行列が途切れるコトなんて無い!って位人気がある店の店主が作ったモノならば、まず間違いはないだろう。しかもコレは店主が、新潟で地震があった際にボランティア活動をしていた時に考えついたモノらしい。成る程、乾パン、パック御飯、レトルトカレーなど色々あるが、非常食用のラーメンなんて聞いたコトがない。人気ラーメン店の店主が作った非常食ラーメンならば、ソノ完成度に期待しない方がおかしいってモンですよ!

 フタに付いているフォークを取り出す。2つに折れているのを真っ直ぐに延ばせば完成だ。震災時、コノお手軽さは貴重だろう。缶を開け、スープを飲む。素晴らしくコクのあるスープ。サスガ麺屋武蔵開発。ソノ完成度の高さは疑いようもない。フォークを入れ、中身を確認する。マズはメンマ。スーパーで市販されているのとソレ程変わりが無い食べ応え。缶入りでこのレベルを提供するにはカナリの努力が必要だったろう。続いてチャーシュー。ん〜。コレはまぁ、缶に入っている肉ってなんかコンナ感じだよね?ってレベル。コレについては麺屋武蔵がどうとか関係ないのかもしれない。そして、いよいよ肝心の麺を探り当てる。

 あれ?コレ麺ですか?フォークに絡まって出現したのは、B食クラバー的目線で捉えるならば、ソレは紛れもないシラタキ。え?麺?…そう言や蒟蒻麺って書いてたな。だからシラタキに見えてしまうのか。いやいや、コレは麺なんだよね、と言い聞かせながら一気にすする。すると!

 目で見てシラタキだと感じたモノが、口の中に入って更に、紛れもなくシラタキだと確認できた。え〜、なんだよ蒟蒻麺って。こりゃぁシラタキじゃ無ぇかよ!と、反抗期真っ盛りのティーンエイジャー気分な言葉が口をついて出ようとした瞬間、B食クラバーはソレを飲み込む。シラタキが胃に流れ込んでいった頃、口の中に残ったのは、まさしくラーメンの風味。

 え?何コレ?と、続けて2度3度と蒟蒻麺をすすり続けるB食クラバー。何度繰り返しても同じ結果を確認する以上のコトは出来なかった。食感がシラタキで後味がラーメンと言う今迄に体験したコトのない違和感、いや異次元感。コノ時ようやく、取り返しの付かないコトをしてしまった!と気付く。一瞬のキラメキの後、徐々に小さくなっていく光を見つめがら、そんなコトを呟いている気分だ。人は変わっていくのだろうか?私達と同じ様に。

 お店でラーメンを食べる時、自宅でカップ麺を食べる時。両者いずれの時でもスープを全部飲まない場合、B食クラバーはドンブリの底をコレでもかコレでもかって位に掬いまくり、もう具も麺も一切残ってませんよ!って言うのを確認してから食べるのを止めるのだが今回の場合、フォークをスープの中に入れても何も引っ掛かって来なかった時点で食べるのを止め、静かにそのフォークを置いた。