随分前の話だが、気だるい土曜日出勤中のB食クラバーに姉から電話がかかって来た。義理兄がTVで北京ダックを見たら突然食べたくなったので、どこか美味しい中華料理店を知らないかと言う用件である。コッチはやる気のない仕事を、何とか気分を誤魔化しながらやっているトコロだと言うのに、呑気なモノである。
そんなん東天紅でも行けよ!と瞬時に思ったB食クラバーであるが、ワザワザ自分に電話を掛けて来たトコロを察すると、チョット穴場的な店を探してるのかもな?と思い、北京ダックがあるかどうかは解らないが、その時自分が一番気になっていた龍宴を紹介してみた。
龍宴があるトコロの道路はしょっちゅう通っており、いつか行ってみたいと思っていた。更に各方面から、美味しいだのランチは量が多くて素敵だの、リーズナブルな価格が魅力的だのマイナスの評判を聞いたコトが無い。
自分が行ってみたい!と思っていた店の名を思わず口にしてしまったが、姉夫婦は果たして満足したのかと気になり、食事が終わった時間を見計らって電話をしてみた。すると、何とも言えない歯切れの悪い答えが返ってきた。
ココでようやく、義兄は北京ダックが食べたいって言ってたんだよな!と思い出し、ならばヤハリ本格中華の店を紹介するべきだったかと思い直した。黙ってストレートに東天紅に行けと言えば良かったと、やや後悔したB食クラバー。そう言う本格的なと言うか、ワリとありふれた感じの中華料理店ならば、他に定番っぽい店が何軒かあるのだが。
そんなコトが、今迄のB食クラバーと龍宴の最大の接点であったのだが、予期せず龍宴に訪れる機会がやって来た。やはり気だるい出勤をしていた土曜日。突然センムが『お昼は皆(コノ日の出勤人数は4人。)で外へ食べに行こう!』と言い出した。
色めき立つB食クラバー。今年の春新しく入った新入社員の誕生日が間もなくなので、それを祝う意味も含めて奢るよ!って言う様な話らしい。素晴らしき土曜日出勤。さっきまで恨めしく感じていた青空も、心の隅々までスッキリさせてくれる様で気持ち良い。
主役は新入社員のハズなのだが、どう言うワケか、行き先担当はB食クラバーに。スポンサーもいるコトだし、ココは一発豪気にワシントンホテルのレストランでコースメニューを!とも思ったのだが、センムと言う肩書きがあれどもソレは一零細企業のモノ。もう少しリーズナブルで豪華な感じがするモノを…と考えたB食クラバーの頭に浮かんだのは、龍宴のコトであった。龍宴に行くのに、今日ほど相応しい日はあるまいとさえ思えて来る。
トコロで東天紅は、全国チェーンにしては珍しく、東北では秋田と仙台にしかない店で、大概は秋田以外の県にはあるんだケドねってコトが多いので、B食クラバーとしては大変ありがたく思っている店である。…高いから滅多に行かないが。
つい最近、龍宴は引っ越ししていた。以前キッチン寓があった場所に移動していたのだ。寓は更に別の場所に移動していたので、飲食店玉突き現象でも発生したかの様な風情を醸しだしている。龍宴のあった場所が今どうなっているかは確認していないが。
一瞬、新龍宴の場所を忘れ焦るB食クラバー。しかしどうにかナビゲーターの役目を終えて一安心。したトコロで店のドアを開けようとした瞬間、突然目に飛び込んで来た『CLOSED』の文字。えっ?今日休みなんですか?さっき外で店員も見かけたし、他に車も停まってるんですケド!と思いながらノブに手を回すと、ドアはユックリと開いた。
店内を見回すと、食事をしている家族連れがいた。ヒョットして今日は彼らの貸し切りなのだろうかと、ドコまでも小心者のB食クラバーは、恐る恐る店員に『えぇ〜っと、今日良いんですか?』と聞いてみた。何言ってんだ?コイツぁと言う表情で見返される。ヤバイ、変な集団だと思われてるに違いない!と感じたB食クラバーは、入り口の札が『CLOSED』になっていると申告。ようやく事態を飲み込めたらしき店員は、笑顔で我々を迎えてくれた。
決まった内容のランチが5種類と、日替わりランチが1種類。実は意外と2人以上で食事に出掛ける機会の少ないB食クラバーはココで、皆で違うモノを頼んでシェアしよう!と提案。全員快く了承してくれた。ヤハリ大人数で分け合ってコソ中華であろうと、普段からB食クラバーは思っているのである。
鳥の唐揚げと麻婆豆腐と、あと名前は忘れたが、豚肉と野菜の炒め物と肉団子のランチを頼んだ。それぞれにはスープとシューマイが付くのだが、偶然にも前日に小龍包を食べたい!と本日の主賓と話していたコトもあって、ソレとは別に小龍包も頼んだ。…ヒョットしたらB食クラバーは、誰彼かまわずしょっちゅう小龍包の話をしているのかもしれない。
料理到着。1つの皿に乗った料理を、小皿に取り分ける作業すら楽しい。一気に増えるメニュー。見た目にも豪華な感じ。皆美味いを連発しながら食べる。気が付くとB食クラバーが一番最初に食べ終わっていたので冷や汗タラリ。
小龍包はやはり、スープタプタプと言うワケにはいかず、タプタプのタぐらいであったが、まぁコレもセンムの奢りであるし、新入社員の誕生日のお陰なので、コレ以上望むコトもない。
今日来た中で、本日の料理を一番気に入ったらしいのは他ならぬセンムで、料理を下げに来た店員に、『とっても美味しかったです!』と、ストレートに打ち明けていた。そんなに気に入って貰えて、龍宴を選択して良かったと、B食クラバーも素直に思った。
食事を終えて、『ごちそうさまでした。』と頭を下げたB食クラバーは、来月は誰の誕生日ってコトにしようかと考えながら、ニヤリと笑った。