10月に2つの台風が日本列島を直撃するのは50年振りのコトだそうで、こんな時期まで台風が来るのも珍しいよな!と思っていたB食クラバーは納得した。今年最大!とか、今年最悪!とか、新しい台風が接近するにつれ、毎回コノ様な言葉を聞くと、一体コノママ台風が上陸し続けるとどうなってしまうんだろう?と、号を重ねるにしたがってパワーアップしていく台風に恐れを抱いていたが、いつもは詰まらないコトをついつい大袈裟に考えてしまいがちなB食クラバーも、コノ件に関しては、あながち的を外していないんじゃないかと思ってみたり。
そんな、20いくつ目かの台風が列島を通り過ぎて行った日、仕事中のクラバーMさんが突然大きな声でB食クラバーのコトを呼んだ。
『コレが食べたい!』
と言ってクラバーMさんは、赤い紙っきれを差し出した。真っ赤な背景に力強い筆文字で書かれた風林火山の文字。風林火山ならば武田信玄だろうし、読みたいとか見たいとかならまだしも食べたいとはどう言うコトかと思ったB食クラバーであるが、次に目に飛び込んできたのは、ラーメンの写真。どうやら風林火山と言う名前のラーメンのチラシらしい。
コレだけで辛いラーメンだと解る当たり、このチラシのデザインは優れている様な気がするし、更に食べたい気分にまでさせるなんて、なんて人の心を掴むのが上手なんだ!と、今度そんな仕事の必要があった場合、このチラシのデザイナーにお願いしてみようかなとか思わなくもない。
その様に完成度の高いチラシを見せられて、黙っていられるB食クラバーでは無い。本来ならば前日から中三で始まっていた横浜中華街展に行くハズだったのだが、その予定はいとも簡単に覆された。
実は前日も、クラバーMさんと共にチャイナタウンへちゃんぽんを食べに出掛けていた。2日続けてラーメンとは如何なモノかと思ったが、あのチラシのラーメンを味わいたくて仕方なかった。更にチャイナタウンには5年振り位に行ったコトもあり、面白がって辛みをバンバン投入。無闇に辛いちゃんぽんを作成しあう2人であったが、2日続けて辛いラーメンってどうなのよ?との思いも微かに過ぎる。3戸黄門を見ていて、『御老公がピンチでござる。』ってセリフを聞くぐらいの微妙な違和感はあったモノの、そんな2人を止めるモノは何もなかった。
周助は以前、ちゃあしゅう屋だった頃に山手台の店に行ったコトはあったが、周助になってからは行ったコトがない。建物も全く同じだし、店内の様子も変わってないみたいだし、ただ店名が変わっただけなのだろうと勝手に判断して放っといたのだが、実際のトコロはどうなのだろう。今日は秋田市内にもう1件ある、外旭川店の方へ行ってみた。
台風が通り過ぎた影響かヤタラ風の強い夜に、赤地に黒文字で書かれた風林火山のノボリが力強くはためいていた。それは武田騎馬軍団が川中島を全力で駆け抜けていく様を彷彿させなくもない。辛いラーメンとは何度も激闘を繰り返してきたB食クラバーである。風林火山という名前のラーメンが、一体どれ程辛いのかは解らないが、晴れて打ち勝って織田信長となるか、哀れ玉砕して上杉謙信となるかは天のみが知るコトである。
席に着いた途端、風林火山下さい!と力強く宣言。しかし次の瞬間、辛さは?と聞かれて少々焦る。メニューを良く見ると、小辛・中辛・激辛の3種類がある。1度は激辛下さい!と言ったB食クラバーであるが、『えっ!?』と歯切れの良い疑問符を返すクラバーMさんに反応する様に、あっさりと前言を翻し中辛を注文。すると今度は、『えぇ〜えぇぇぇ〜〜?』と、今度は粘着質な言葉を返すクラバーMさん。一体どうしろと言うのだろうか。
風林火山の到着。白い器に真っ赤なスープ。そして刻みネギが堆く積まれている。コレが風林火山の山に当たるコトは間違いあるまい。一口スープをすするクラバーMさん。その顔が一瞬にして歪み、『辛ぇ〜!』と一言。いやマサか、昨日のアレより辛いラーメンなんて無いよ!とか思って平気で口にしてみるB食クラバーであったが、一口食べたダケでは、まだコトの重大さに気付かずにいた。
豚の角煮チャーシューが美味いし、この辛さも丁度良い刺激だね!と余裕をぶっこいていたのだが、クラバーMさんに『箸が止まってるよ!』と言われて我に返る。気が付くと、1/3を食べたぐらいの時点で、ソコから先に進まなくなっていたらしい。風林火山の辛さが徐々にB食クラバーの肉体に蓄積していき、突然コレ以上摂取するコトを肉体が拒否していたのだ。
その辛さは脳をも直撃。さっきからまるっきり食べていないのに、食べ続けている様な幻想を抱かせ続けていたのであった。風林火山の破滅的なパワーに気付き始め、ジワリと汗をかく。
その後は食べるのが苦痛になりはじめる。ラーメンをすすると、さっきまでは平気だったのに、スープの辛みが喉にダイレクトにクリティカルヒット!むせずにいられない状況になった。
そんなB食クラバーの様子を見ていたクラバーMさんもいつの間にか箸がストップ。B食クラバーに言われて気付いた辺り、クラバーMさんも同じ様な状況なのであろう。しかし食べないワケにはいかないので無理してみたが、途中、冗談では無く気が遠くなるコトが2度3度と訪れる。辛さが前頭葉を通り越して視床下部まで到達。目の前を星が回り始める。
何げに目があったクラバーMさんも、『気が遠くなってくるね。』と、B食クラバーと同じコトを言う。最近は明らかにB食クラバーよりも辛さに強くなったクラバーMさんがこんな言葉を吐くとは。B食クラバーの苦悩も伺い知るコトが出来ようと言うモノである。
中辛でコノ辛さならば、間違いなく激辛は秋田市NO.1であろう。激辛にしないで良かったと本気で胸を撫で下ろすB食クラバー。会計時に\100割引券を貰ったのだが、コレは次回は激辛を食べなさいと言うお告げではないコトを祈るバカリである。