大曲を通過する度に、いつもB食クラバーの注意を思う存分惹き付ける看板がある。絶品!ふわふわオムライス!的な文字が、その通りな写真の上で踊っている見事なデザイン。店の名はバンフィール。ココを通り過ぎる誰しもが皆、思わず看板を見つめてしまうのではないだろうか。
最近のB食クラバーの活動エリアは、秋田県内全域へと広がりつつあるが、そのせいで秋田市に隣接する大仙市は、通過するための場所になってしまった節がある。
以前大仙市は、秋田市の外にあって遠いから行かない場所だったのが、今度はどこかへ行く途中になってしまったなんて、自分が大仙市だったら、てめぇ、何様のツモリだ!と、胸ぐら掴んで襲いかかってしまいそうだ。
気が付くと周りを、エナメルテカテカの靴を履いた院卒の方々に囲まれて、『何イチビってんだ!シャバイんだよテメっ!』って言われながらカチコまれても、一切反抗するコトが出来ない。せいぜい震えながら『死ろす!』とか言ってみる程度で、実際問題コチラも非常にシャバイ。
バンフィールの存在はでも、随分前から知っていた。秋田市内でオムライスの美味しい店を探していた頃、大曲にはコンナ店があるよ!と、ドコカで誰かが話していたのを聞いたコトがある。
同じ様にと言うか、県北方面では二ツ井町のZEPPETってトコロも気になっている。店の前を通りすぎる度に絶品!ふわふわオムライス!的な文字が踊る看板が目に入り、目的地はもっと先にあるのに思わずハンドルを回して寄ってしまいそうな、ソンナ魔力を振り切るのがやっとだ。オムライスには不思議な力がある。
そんなコンナで本日は、夜に行くと良い感じそうな、大仙市で行われる2つの冬祭りに出掛けるコトになった。それじゃぁ祭り会場に行く前に、バンフィールで腹ごしらえしてから行こうじゃないの!と、コレ以上は無いタイミングに心をときめかせてみた。生け贄同行はクラバーRさん。
午後5:30位と、夕食にはやや早めの時間に到着したが、店の前にある駐車場には既に、3台程の車が停まっていた。うわ、何コレ。大人気?と思うB食クラバー。早めの時間に設定しておいて良かったと、胸を撫で下ろす。
木造のロッジ風な作りの店内。窓が大きく、陽当たりは良さそうだが、今は夜なのでソレを実感出来ず残念。メニューを見る。大きくジャンル分けすると、オムライス・ハンバーグ・カレー・スパゲッティとあり、その他にも一品料理とかのお酒に合いそうなメニューもある。
B食心をコレ以上ない迄に擽りまくるメニューの続出に、一体何を食べようかと迷い始めてしまったが、結局何か1品!ってのは選び切らなかったトコで我に返る。オムライスを食べたくて来たのだから、ソレを食べなくてどうする!と、ようやく初心を取り戻してみた。…優柔不断の逃げ口上に聞こえてしまうかもしれないが。
トコロで、コノ店のオムライスの頼み方はチョット複雑だ。まずはライス。チキンライスかドライカレーか、ドチラか一方を選択する。続いてソースだが、コレはデミグラス・トマト・ミートソース・カレー・クリーム・ケチャップの、全6種類の中から選ばなくてはならない。カレー・ハンバーグ・スパゲッティ・オムライスと言う大枠の4種類からオムライスに絞り込むのも大変だったのに、そのオムライスが更に、都合12種類にも分かれているなんてひどすぎやしませんか!
いや、当たり前で考えたら沢山メニューがあって大変結構な話だと思うのだが、前述した様に優柔が不断なB食クラバーは、どう言う組み合わせにすれば良いのか考えに考え、迷いに迷ってしまう。思えば取り立てて目標もなかった中学時代、あんたの学力で行けるのはコノ高校!と言われてそのまま受験・進学したが、そう言う便利なシステムは、実社会に於いては存在し得ないのだろうか。
コレと似た様なコトは、小粋なバーで繰り広げられていると噂に聞く。店に入って何を飲もうか迷っていると、音もなく1つのグラスが目の前に差し出される。コレは何?とか思っていると、『アナタのイメージを、カクテルにしてみました。』とかバーテンさんが言ってくれるヤツだ。くぅ〜、ウラヤマシイ!こんなシステムを、是非とも全ての飲食店で採用して欲しい。
しかし現在の場合、初めて訪れた店で店員さんを呼びつけ、『ワタクシのイメージに合うオムライスを作って下さい。』とかウッカリ口を滑らしてしまおうモノなら、『かかりつけの病院はドコですか?』とか、妙に優しい笑顔で見つめられたまま、気が付けば山奥にありがちな病院のベッドに拘束されていたりするかもしれない。
ソンナ事態を避けるためにも、食べ物屋さんに行く時は、なるべく単独行動は避けなければならない。人数が多ければ多い程、選択肢は広がる。更に加えてつまみ食いの法則により、自分が食べられる料理の種類が増えると言う紳士協定にもよる。
とココでクラバーRさんが、デミグラスソース&チキンライスと言う、いわゆる王道的なオムライスを頼むと決めたらしい。それではと言うコトでB食クラバーはライスをドライカレーにし、ソースはデミとどっちにしようか迷っていたミートソースの組み合わせにしてみた。
もちろんココでも、ドライカレーに合うソースはやっぱりカレーだろうか?等と、最後の最後迄迷ったコトは言うまでもない。一仕事終えた気分のB食クラバーは、テーブルに置かれたコップの水を、一気に飲み干した。
船の様な形の、深い皿に入ったオムライス。白い皿に浮かび上がるオムライスの、鮮やかな黄色が目に眩しい。スプーンを入れて中を割る。半熟卵オムライスと、その上にかかったソース、そして中にあるドライカレーと3つのコントラストが、更に食欲を掻き立てる。
3ヶ使用している、程良い温かさの卵が口の中でとろける。ドライカレーはちょっとキツイのかな?とも思ったが、卵にくるまれているせいかソレ程強くは感じられず、非常にマイルド。シメジが入っているのが珍しい。コノ組み合わせで間違いなし!と思ったB食クラバーは、当然の様にクラバーRさんとシェアを始めた。すると…。
ソンナに強く主張はしていないよなぁ〜と思っていたドライカレーだが、ヤハリB食クラバーの味覚を強烈に刺激していた様で、チキンライスの味を、余り感じるコトは出来なかった。やはり何事も、味付けの濃いモノから食べ始めてはダメだと言う、すし屋でのルールに似た様な感覚がB食クラバーを襲う。先人の教えを侮ってはならない。
結局B食クラバーは、両者の味の長所を余すところ無く堪能は出来なかったが、何の問題もなく味わったクラバーRさんが、B食クラバーの瞳を見つめながら親指を天井に向けて突き立てたので、とっても美味しかったってコトなのだろう。言葉で説明されないから、より際だって、B食クラバーの心にソノ事実が突き刺さる。
次回、いや、今度ドコカの店で初めてオムライスを頼む時は、可能な限りスタンダードなモノを注文しようと、うなだれながら心に決めた。