よく通っている道の見慣れた看板が、いつの間にか無くなっていた。とんかつ藤よし広面店の看板が、気が付くと真っ白になっていたのだ。
店は営業している風ではなく、駐車場には工務店っぽい風情を醸し出している車が何台も停まっている。あぁ〜改装するのかなーと最初は、漠然とそう思っていた。
しかし、改装ならば看板を真っ白にする必要は無いよなーとようやく気付き、もしかして新しい店が営業開始するのかもしれない!と思ったが、看板ごと書き直す程のイメチェンを果たすのかもしれないし、ヤッパリ解らないよなーとか考えながら、無為に店の前の道路を通り過ぎるコトを繰り返すB食クラバー。
真っ白い看板に慣れたB食クラバーの視界の隅に、ある日何かの文字が読みとれた。ん?なんだろ?洋風…居酒屋?洋食屋?
…とりあえず、『洋』と言う文字は記憶に残ったので、御飯を食べるトコロか、お酒を飲むトコロかは解らないが、和風でも中華風でもない飲食店がオープンするのは間違いない。
コノ瞬間、僅かながら残っていた、イメチェン藤よしの可能性は無くなった。はい消えた!と言いながらキンキンが、目の前でテーブルを叩いた様な気がした。
看板に何て書かれていたかは気になるが、そんなモノは今度店の前を通れば解るコトだしね!と気軽に構えつつ、再び店の前を通ってみた。するとソコには、『お肉料理のおいしい洋風屋』と書かれているではないか!
洋食屋なのか洋風居酒屋なのか、B食クラバー的にはソノ辺をハッキリさせたい気持ちがあったのだが、洋風屋なんて書き方をされた日には、結局ドッチなんだか皆目見当も付かない。
よし子とアタシのドッチをとんのよっ!ハッキリさせなさいよっ!と言われながらも、よし子にはよし子の良いトコロがあるし、お前にはお前の良いトコロがあるんだよと、優柔不断なガラクタ野郎に返された様な気分でイラツク。
あーもう、ムカムカする!こうなったらアタシがハッキリさせてやるわよ!ってな勢いで、ソノ店、『だいち』に出掛けてみるコトにした。すると、何げに目にしたフリーペーパーに、だいちの\200割引券が付いていた。
何もかもがB食クラバーがだいちへ向かうコトを後押ししている。そう確信を得たB食クラバーの左手にはシッカリと、割引券が握りしめられていた。
洋風屋と言いながらもソノ外観は、大まかに言って藤よしの頃とさほどの変化は見られない。純和風瓦屋根の建物に、しかし洋風屋と言う冠は、著しく均衡性を欠いたヤジロベエが、失われたバランスを取り戻すタメに、激しく動きまくっている様な危うさが感じられて仕方ない。
店内に足を踏み入れると、内装にもヤハリ、藤よし時代との差異は見つけられない。お昼過ぎ、満員に近いぐらいお客さんがいるのは、9/26のオープンから間もないからか。スグに店員さんがやって来て、禁煙席を希望すると、お座敷席へと案内してくれた。
…お座敷で洋風。ヤハリ何かこう、金髪碧眼のパッと見どう見ても外国人の方が、人情舞台の幕開けに、朗々とした口調で口上を述べている様な居心地の悪さを感じてしまう。
メニューを見ると、B食クラバーの金銭感覚からは若干高いレベルにあるが、今日は\200の割引券があるので心強い。ポークヒレローストとエビフライと言う内容の週替わりランチに心が動いたが、通常は\1,200であるトコロの『香草入りバター添え ミニステーキと海老の盛り合わせ』が\1,000で食べられる!と貧乏心に火が付いたため、ソチラを頼むコトにした。
開店から一週間程度しか経っていないためか、店員さんの応対にも若干の固さが感じられる。何か問題があって店員さんが謝ったりしたら、いえいえソンナ!コチラこそ申し訳ありません!とか、小心者なB食クラバーなら言ってしまいそうだ。
ドコカに仕事がないかなーって感じで店員さんが結構歩き回っているのは、夕食の支度のタメに主婦が帰り始め、晩ゴハンを食べる家族連れで賑わう前の時間帯のファミレスで、何か用事はありませんかー!呼んでくれたらワタクシ、3秒でお席まで伺います!って感じでテキパキしているサワヤカ君的な印象を受けなくもない。
試しに、料理が来る迄の間に水を飲み終えてしまったので、お水おかわり下さい!とか言ってみると、素晴らしい笑顔で『少々お待ち下さい!』と言って貰えた。ソノ笑顔がアマリに素敵で、思わず『もう一杯お水下さい!』とか言ってしまいそうだった。
そうこうしている間に料理到着。ミニステーキと海老の盛り合わせって、海老はやっぱりロースとしたモノが出て来るんだよねぇ〜と思っていたのだが、実際に出て来たのは海老フライだった。ソレと、オソラク100g程のステーキ。
海老フライは総体積におけるコロモ率がカナリ低く、全体的にかなりマッシブな印象。ステーキも、程良い感じのショッパさがねー。良いねー。とか思いながら食べていたのだが、途中で、ん?あれ?そう言えば香草入りバターって何処に添えられてた?と気付く。
もしかして出来上がってから持って来る迄の間に溶けてるのかなーとか思ってみたり、ステーキの周りに油っぽい感じのモノが少々あったケド、アレだったのかなー?とか思ってみたり。何せ自分の舌の貧乏さ加減には自信を持っているB食クラバーのコト、真相は分からない。
食べ終わった後、本当はランチにしか付かないんだケド、と説明を受けながらコーヒーを頂いた。ありがたい心遣いに感謝しながら、更に\200の割引券をも使い、非常に澄んだ気持ちのママ、店を後にした。