前　　説

　そんな、B食クラバーの妄想を思う存分膨らませてくれるのがココ、キッチン一番。秋田市内で洋食NO.1！ってぐらい、評価が高い。壁には沢山の、賞状やら写真なんかが飾られていて、それに負けないくらい、こけしとか巨大なスルメみたいなのとか、ソレ何？って思わずにはいられない、10年単位で昔から存在してそうなコーラの瓶なんかが所狭しと設置されている。

　その中に、世界料理オリンピックで金賞受賞！なぁ〜んてノもあったりして、それがB食クラバーの妄想を、際限なく膨らませ続ける。

　店内には他にも、沢山の賞状・有名人の写真なんかが飾られている。元帝国ホテル総料理長とか、鉄人坂井シェフの写真があるなーとか思っていると、何故か渥美清の写真なんかもあったりして驚く。一体どう言う組み合わせだ。マサに玉石混合、恩威並行、多士済々。料理界のリュージョンフリー。

　そのボーダーレスさを示す様に、店内には不思議なメニューが並ぶ。イカと牛バラスタミナ焼きって、コレは一体どう言う了見だ。イカと牛バラって合うんだろうか。シェルインステーキってのはソノ名の通り、ホタテがステーキの中央部に入っているモノ。更にギョーザソーセージと言うモノもある。

　コレってギョウザなのかソーセージなのか、ハッキリして貰いたい。一度も食べたコトは無いが、どう言う外見をしているのか異常に気になる。ソーセージの具をギョウザの皮でくるんだモノなのか、それとも、ギョウザの具で作ったソーセージなのか。或いはソノ両方なのかもしれない。

　健康に良いと評判の、アガリスク茸入りカレーなんてのもある。コレらの様な組み合わせの料理はココでしか見たコトが無いが、果たして他にも作っている店ってあるんだろうか？

　しかし、意外な組み合わせとか、ありえないだろう！とか思う先入観の取り払い具合などは、ヤングだった頃に世界中をさすらい歩いたと言うシェフの、その経験が現在、結果として現れているモノなのだろうかと思わなくもない。

　今回は美味しい海老フライを食べたいなぁ〜と思いながらも、ソレを食べにサフランまで行く程の時間も無い時に、身近で美味しい海老フライを提供してくれる店はドコだ！と、脳内を激しく検索しまくった結果、キッチン一番なら美味しいですよ！とイメージ的にはオデコの中央部辺りに表示されたので、ソレに従い出掛けるコトにしてみた。

　しかし、店内に入ったB食クラバーは、新井にホームランを打たれて愕然とした表情を浮かべる和田の様な顔をして、呆然と佇んでしまった。店内に貼られているメニューのドコを見ても、海老フライのエの字も無かったのだ。ライトスタンドからは、トラキチ達の情け容赦の無い罵声が聞こえて来る。あぁ、違う球団にトレードに出して欲しい。

　そう言えばキッチン一番では、その日の仕入によってメニューを入れ替えるシステムをとっているコトを、今更ながら思い出した。そのため店内には、薄い紙に手書きされたメニューが貼り出されているダケなのだ。それでも、定番で出続けているメニューもある気配だが。海老フライは定番メニューには無かった様だ。

　海老フライ分が足りない！と思って来た店で、肝心の海老フライを食べられないなんて。しかもソレが100パー自分の選択ミスなのだから余計に始末が悪い。パウエル引っ込めろ！アリアス出せ、アリアス！等と、やり場のない怒りを、巨人ファンの気持ちを代弁するコトでゴマカしてみたりする。

　今回は、海老フライ分の不足をハンバーグ分を摂取するコトで補ってみたが、後で大変なコトになりはしないだろうかと、自分の欲求の大きさに、少々怯えてみたりする。