晴れた秋の日、遂に、初めて築地市場を訪れた。とても仏教の寺院とは思えない佇まい
の、(どちらかと言うと、まるでヒンズー教のムスクを思わせる様な)築地本願寺を横目に辿
り着いた築地市場は、当たり前だが、秋田市民市場や秋田中央卸売市場、そして去年訪
れた札幌の二条市場や場外市場とも違っていた。
とにかく人が多く、歩くコトもままならない。住んでいるトコロが違うからと言ってしまえばそ
れっきりだが、最新モードを取り入れたファッションをした方や、いかにも山の手のお上品な
奥様の様に見える人が、チョット油断すると簡単に服が汚れてしまう様なトコロを、平気で歩
いているのである。また、その様な方々が、立ち食いそば屋の様な牛丼屋や、ラーメン屋に
蟻の様に群がって、軒先と言うか、車道の片隅に置かれたテーブルとも言えない銀色の物
置の上で食べているのにも驚いた。
途中、真っ昼間から良い感じに酔っぱらった方々とすれ違う。恐らく、今日の仕事が終わっ
て、仲間内で一杯やった後なのだろう。色々なモノの違いにとまどいながらも、ようやく市場
の正門に辿り着いた。
正門と言うソコには車道のみがあり、特に歩道と言うモノは用意されていない。大型のトラ
ックが通るトコロを、邪魔にならない様に歩いて場内に辿り着く。場内は人と自家用車と特
殊車両が、まるで無軌道に行き交っているかの様であった。例えるならばフィフスエレメント
とかSWEPUで、自動車が列をなして空中を飛んでいる様な、そんな危うさと言うか、頼りな
さを感じた。目の前でいつ事故が起こってもおかしくない気配である。コレも市場の活気と言
うコトか。
チョット迷いながらも、どうにか目的地のとんかつ八千代の看板を発見。店先を見ると、10
人以上の行列が出来ている。うわっ、ソンナに混んでいるのか!と思ったが、良く見ると混
んでいるのは両隣の寿司屋であった。両店共築地では有名な店である。もし寿司を食べに
来ようと思っていたら、あの人込みの中に紛れていたのかと思うと心なしかホッとする。が、
逆に何故八千代には行列が出来ていないのか、少し不安にもなった。
暖簾をくぐると、6畳間程の空間が広がる。左右の壁にそれぞれカウンター風にテーブル
が設置されており、5名ずつの、計10名程が食事出来る様になっている。その中にポツポツ
と人が座っている。八千代には、B食倶楽部東京支部のMT&Eと訪れたのだが、そう言った
事情で、3人一緒に座るコトが出来なかった。他の人が食べるメニューもどんな感じか調査
したいB食クラバーとしては心残りであったが、コレも致し方のないトコロ。予定通り、車海老
・カキフライ定食を頼んだ。
待っている間暇だったので壁を見てみると写真が貼ってあり、その中には渥美清が写って
いるモノがあった。他にも松坂慶子等もいた様な気がするが、少し古めの写真だったため、
ホントかどうか正確ではない。また、背景も店内の様子とは違う様に見えたので、渥美清が
この店に来たのではないかもしれない。いや、ハッキリしないので、来たのかもしれないが。
待つコト数分、料理が到着した。シッカリ頭もくっついた車海老のフライが2尾と、カキフライ
が3ヶ皿に盛られていた。千切りキャベツとコールスロー、みそ汁とお新香付きである。車海
老の頭はどうしようか考えたが、どうしようも出来なかったので、文字通り頭からかぶりつい
てみた。口の中が血みどろになりそうだったが、パリパリした感じがタマらない。身に辿り着
くと、プリプリした感じがタマらない。天然の車海老とはコンナものか。カキフライも柔らかく、
ジューシーでベリグッ。
カツ丼を食べたクラバーMTはもう1つだと言っていたが、とんかつ定食を食べたクラバーE
は、そのボリュームに驚いていた。2cm程の分厚さで、大きさも20cm位あったみたいだ。そ
のクセとんかつは非常に柔らかく、とても満足したと語っていた。この店はどちらかと言うと、
海老、カキ、キス、アナゴ等海のモノがメインの様だが、とんかつもイケるらしい。
料理全体の量はヤッパリ多く、カナリ満腹になった。もう1度、車道しかない正門を、車の
邪魔にならない様に歩いて出て行ったのだが、不思議と中にいる程の人影はその通路に
は見あたらない。後から思ったのだが、世間の人は正門は通らずに、場外市場の方から
色々な店を見つつ、辿り着いていたのではなかろうか。B食クラバー3人衆は、市場の人達
から見ればカナリ危うい存在だったに違いない。
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