Title
ルパン三世
Theater
TV
Day
07/05/03

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Comment

 TVで放送されていたので見たんですけれども。ルパン三世の劇場版第一作でして、後に第二作のカリオストロの城が公開されビデオ発売なんかがされるにつれ、いつの間にか『ルパン対複製人間』とかってサブタイトルが付いちゃったりしています。

 ルパン対複製人間…。コノ、ストーリーの表面構造をそのまま型枠付けしちゃいました感が漂いまくるサブタイトルはどうにかなりませんか。ルパン1作目の映画のビデオ出すんだケド、カリ城と区別したいから何かタイトル考えてくんない?って無理矢理押しつけられた担当者が、コレで良いんじゃない?って軽〜く考えた様な思い付きテイストが滲み出ているようにしか感じられないのはワタクシだけですか、そうですか。

 もしかしたらですね、仮で付けていたサブタイトルが、時間切れでそのまま採用されちゃったとか、何かの手違いでボツ原稿の方が印刷所に回ってしまったとかって可能性も捨てられませんが。え〜、もし真剣に考えた結果こうなっているのだとしたら、関係している皆様に謝ります。ゴメンナサイ。

 封切り当時はですね、TVシリーズでは大人気を博していたモノの、映画的には全くの未知数で、日本に数多くいらっしゃる興行主の皆様方からは、『ルパン?なんやねんソレ?』(何故か大阪弁)的な発言を数多く浴びたらしいのですが、興行的に大成功を収めた一年後、カリ城が公開される時には、『ルパン?オッケー!オーライッ!メニーピーポーがワッチするから、オレもメニーマネーをワッチ出来るワンダフルムービーじゃない!!だからルパンのムービーをエヴリバディ、トゥギャザーしようぜ!』(何故かルー大柴風)的なフィーリングでウェルカムされたってんだから、そのフェイマスさがうかがえるグッドなエピソードじゃないの。オッケー!サンクス!

 …コノ第一作目は、翌年公開されたカリ城と常に比較され、ソノ時々で評価が変わったりしている奇妙な作品でもあります。公開直後はですね、ルパンの旧TVシリーズ初期にも共通する大人のムード、ハードボイルド風味、ウィットに富んだ会話、そしてモチロン忘れちゃいけないお色気シーンなんかがふんだんに盛り込まれておりまして、SF映画が流行していた時代背景も踏まえたストーリーはカナリのお客さんに受け入れられ、ソノおかげでカリ城の制作が決まったワケです。

 しかしカリ城がですね、旧TVシリーズ後期のほんわかムードをふんだんに取り入れた映画として登場した結果、お客さんの反応ってのがリアルに現れまして、興行的にはイマイチとなり、ルパン映画の三作目が公開される迄にはソノ後、7年位待たなくてはいけなくなったワケです。

 当時のお客さんは一作目を支持していたってコトだと思いますが後に、純粋にアニメーション映画としてカリ城が評価されるにつれて、両者のステイタスも微妙に入れ替わり始めます。一作目ってSF風味だったりハードボイルドだったり、なんか無理矢理背伸びしたルパンって感じだったよね。その点カリ城は現実的な世界を舞台にしているし、安心して観ていられるし、考え直してみたらカリ城こそ皆が待ち望んでいたルパンの姿なんじゃないの!?的な風潮が盛り上がったりしまして、ソレからしばらくはルパンの映画=カリ城!的なムードの中、一作目の映画は皆の記憶から埋没させられそうになった時期もあった様な気配がチラホラと。

 その後ですね、カリ城のルパンって義賊っぽくね?良い人過ぎね?正義の味方?って言うかお色気シーン無くね?って言う意見が出始めると、やっぱ一作目のがルパンっぽいんじゃね?って再評価されてみたり、例えて言うならば両者は、オセロの駒の裏表の様な存在になっているのではないかと感じます。現在ではですね、ルパンとしては一作目、アニメーション映画としてはカリ城って言うトコロに落ち着いているのではないかと。え〜ドチラにしてもですね、3作目以降の映画や、数多く放送されているTVスペシャル辺りが、一作目、二作目の映画と並べて評されているなぁ〜んてのに遭遇したコトがないのでソレがですね、コノ両者がいかに際だっているかってコトの証だと思われます。

 コノ第一作目はですね、TV電波に乗る当たって、ノーカットで放送されるってコトがありえない悲しい映画でもあります。『白痴』とか、『(クルクル)パー』とか『精神病院』とか『キチガイ』とか、現在では差別用語に認定されているのであろうセリフがカットされていたり、ルパンがテレパッチを食べるシーンとか、本作品随一のお色気シーンなんかがカットされていたりしています。

 会話の掛け合いで持っていく様なシーンで、最初っからソノ単語が無かったかの様に編集されていたり、チョット気になる無音場面があったりするのですが、気にならないっちゃぁ気にならないので、それなりに楽しめる内容にはなっていると思うのですが、やっぱり前後の関連性が希薄になっている様な気がします。

 敵役であるマモーがルパンのコトを『不確定性が産んだ私生児』と称するセリフがあるんですけれどもコレはですね、ソレまでのウィットに富んだ会話に慣れていたり、マモーって白痴とかって言葉を神の目線から言い放つヤツなんだよなぁ〜とか思うからコソ受け入れられるのであって、そう言うやり取りがないままこのセリフを受け取ったTVでしか見たコトのない人はですね、何じゃコノ映画?って感じるんじゃないかなーとか思ったりします。フルで第一作目を見たコトの無い人にとっては、ますますカリ城との評価に差が出そうで恐いです。

 映像的にもですね、スタイリッシュと言うか、非常に惹き付けられるカットがあったりします。暗闇を車で切り裂いて走るルパン。夕焼けの中をバイクで疾走する不二子など。ルパンに対して持っている格好良いイメージってコンナ感じってな画面が、大スクリーンの至る所で映し出されます。

 好きなセリフも色んなトコロにバンバンありまして、切羽詰まって逃げている状態なのにルパンが次元に対してタバコをオレにもくれって言ったり、マモーに連れ去られた不二子を助けに行くのを止める次元に対してルパンが、夢を盗まれから取り戻しに行かなきゃ、とかってあたりはですね、モノスゴクしびれるワケですよ。絶体絶命の時でも余裕があると言うか冷静さがあると言うか、もしかしたら何も考えていないのかもしれないんですけれども。夢だって思われる程惚れられている不二子も惚れているルパンも、ドチラもサイコー!ってな気分です。

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 Director 吉川惣司   Running time 1:42  Cast 山田康雄 小林清志 増山江威子 井上真樹夫 納谷悟朗