店  名
 あっけら館
食べた日
2006/09/07

住  所
 秋田県秋田市太平田中256
営業時間
11:00〜15:00

電話番号
 018-827-2480
定休日
月曜日

麦切り・そば
そば
麦切り
天ぷら
店入口
前  説

 ムダに長く続けているB食倶楽部では、サルガッソー、カリスマ、廃屋のような店などに代表される、様々な特異点とでも呼ぶべき店や人にめぐり会うコトが、特異点なダケにゴク希にある。

 しかしソレらについても時を経、色々な店を経験してみるとある程度、なんて言うか分類みたいな物が出来てくる。コノ店はサルガッソー、コノ店はカリスマってな具合にだ。そしてそれらのパターンは、もう出尽くした物だと、最近のB食クラバーは思っていた。ソレが間違っているコトに気付いたのがコノ店、あっけら館だ。

 タウン情報を広げてみると、秋田市の郊外に、新しくソバ屋が出来たと書かれている。以前は秋田市中心部で営業していた方が、場所を変えてやっているらしい。先日本場鶴岡で食べた麦切りも提供しているらしい。鶴岡でなければ食べられないモノと思っていた麦切りを秋田で食べられるなんて!と思い、もはやコノ店に行くのは必然だ!とさえ思えてきた。

 ネット上を少々巡回してみると、土曜日だか日曜日だかに行った人がソノ様子を書いている幾つかのページに辿り着き、ソノどれもが、混雑していた。美味しかった。などと言うキーワードを羅列している。益々以て行かなければならない店になった。

 あっけら館がある秋田市太平には、つい最近までB食クラバーは足を踏み入れたコトが無かった。ソレはタダ単純に用事が無いからってダケのコトだったのだが、仕事で訪れた太平の某所にてソンナ話をついウッカリ話してみたトコロ、『太平だって秋田市ダスで!』と、妙に荒い語気で言われたコトがあった。

 本当にタダの事実を、初めて来る事が出来てウレシイです!位の感情を込めて言ってみたツモリなのだが、ヤハリ言葉に出して言わなければ、相手には伝わらないらしい。最近多いと聞く熟年離婚も、コンナ感じの擦れ違いから発生する物なのだろうか?ヤハリ常日頃から自分の思いを言葉にして相手に伝え、接していなければダメと言うコトか。

 とにかく、それ以後もそんなに度々とは出掛けているワケでもない太平方面であると言うコト。そしてお昼の時間帯しか営業していないのは少々ツライが、なんとか時間を見つけて行ってみるコトにした。


Comment

 晴れた、秋の日。順調に車を、目的地たるあっけら館へと走らせる。事前に確認した地図によると一本道の脇にある様だし、車で20分位とも聞いていたので、アクセルを踏む足は軽かった。マサカ道に迷うハズも無いだろうと思っていた。

 だんだん細くなって行く道路。少なくなっていく民家。ソレに反比例する様に増えて行く大自然の緑に対しても、だから全く不安を感じていなかった。もうソロソロ見えてきても言い頃だよなぁ〜と思っていたトコロ、道路脇に『蕎麦やってます』的な文句を書いた看板が見えて来た。

 あっ、もうすぐなんだ〜!と、目的地に到達するために更に強くアクセルを踏み込もうとしたB食クラバーを、同行のクラバーRさんが制止する。『ココなんじゃないの?』

 ソコに店らしき物を発見できず、更に遠くへ行こうとしていたB食クラバーは大変戸惑ったが、なんとか状況を整理して、改めて周囲に広がる景色を解析してみたトコロ、確かにあっけら館はソコにある様であった。しかし、道路からどうやって店まで辿り着けるのか、ソレは解らなかった。

 行き過ぎた分を引き返し、もう一度あっけら館に近付いてみると舗装された道路から、カナリ細めの道路が分岐していて、どうやらソレを通ると店迄辿り着ける様だ。どれぐらいの細さかと言うと、軽トラが通るのには充分だが、例えばクラウンとかマーク×とかセンチュリーとかでは少々ムリ目な、ランボルギーニとかフェラーリだったら完全に両サイドとシャーシを削りながらではないと通れない様な道路。

 ちょっとした排他性を感じながら、その道を進む。コノ時点でB食クラバーのトキメキゲージは、レッドゾーン突入間近であったコトは、言うまでもない。

 店の入り口に着くと、ソコには蕎麦打ちブースが設置されている。蕎麦打ちブースが入り口と言うのは、最早スタンダードなのか。そう思いながら店内へ足を進めると、『あぁ、違ったぁ〜』と言う声が聞こえて来た。一体何が違うのかと思ったが、当日店内では何かのギャラリーが開催されていて、ソノお客では無い!と、判断しての結果の様だ。

 コノ辺が客に丸聞こえな辺りから、コノ店独特のユルさと言うかヌルさが感じられ、思えばコノ時点から、B食クラバーはあっけら館が醸し出すマジカルなパルスに、やられ始めていたのかもしれない。

 昔はさぞ立派な身分の方が住んでいらっしゃっただろうと思わせるに充分な程の、豪奢な造りの日本家屋で営業しているコノ店は、外観同様、室内も立派な物であった。ファミレス等でありがちな、狭い店内に小さいテーブルを一つでも多く並べるせせこましい様子とは正反対の、広く部屋に大きいテーブルをホンの幾つか置いたダケの店内には、重量感と共に落ち着きを感じる。部屋の隅にある棚の中には手作りであろう焼き物の和食器が並び、重厚感に厚みを加えている。

 テーブルに座ると程無く、男性が注文を取りに来た。コノ時点ではマダ気づかなかったが、コノ男性こそが、B食クラバーの中であっけら館の印象を決定づける存在になったのだ!ソバと麦切り、そして天ぷら盛り合わせを注文した。

 その物腰と言うか佇まいは、非常にソフト。コノ世知辛くも厳しい現代社会で対応していけるんですか?と、失礼ながら思わずにはいられない。メニューを持って来てくれたなぁと思ったらテーブルを離れ、お茶を忘れていました、と言っては再び登場し、おしぼりを持って来ましたと言って三度登場する。他の店だとコレらのコトは1回で済ませなきゃならないものだろうが、ソノ男性が醸し出す不思議な雰囲気に、B食クラバーは吸い込まれてしまいそうになった。

 そばつゆや薬味なんかを持って来た時に、『コレが有名な、高い割り箸でございます。』とか言うので、ほう、ソンナに高い割り箸ですか、と感心したトコロ、ソノ男性は不思議な顔をしてコチラを見ている。コノ微妙な擦れ違い感は何かと思ったらソノ男性は、『最近は中国でも木材が…』とか話し始めた。どうやら一般的に割り箸の価格が高くなり始めたコトを喋っているダケで、別に今目の前にある割り箸が高級品だと言うコトでは無かったらしい。ソノ擦れ違いを、男性の方は男性なりに、オカシイと感じていたっぽい。

 …ヤバイ。完全にコノ男性のファンになってしまった。次は一体どの様な用事で現れ、何を喋ってくれるのか楽しみで仕方ない。ソバと麦切りを運んできた時は、それぞれの茹で時間が違うんだと言う当たり前のコトを喋ってくれたのだが、ソレすらも何か、珍しい現象であるかの様に思えてしまう。コノ気分を例えて言うなら、いっこく堂の『あれ?声が、遅れて聞こえるよ?』を人格に形成し直した様な、そんなイメージの男性。

 食事をしている時も、男性がスグ横に座っているかの様に感じられてしまう。そばはソレ程固くはなく、しかしコシが強く大変美味しかった。しかし麦切りについては、弾力と言うかツルツル感がソレ程無く、少々残念に感じられた。コレも茹で時間の違うモノを頼んでしまったせいだろうか?

 天ぷらはパリッと揚がっていて大変美味しく、天つゆと一緒に塩でも食べるコトが出来た。コノ塩も選び抜かれた物なのだろうか?一度口にしたらマタ塩で食べたくなる衝動が沸き起こり、結局全部使ってしまった。今思えば、コレは一体どんな塩なのかと、聞いてくれば良かったと後悔している。

 食事を終えて会計を使用とした時、先程の男性がレジに立った。ソレ程難しい計算では無いモノの、しばらくレジの前で考え込み始めた。レジを使い慣れていないのは一目で解るのだが、スグ横に電卓があるのに使おうとしない。ココに電卓ありますよ、と言ってみると、いや、暗算で…とか言い出す始末。何とか苦労した結果、正しい料金のお釣りを貰うコトが出来て安心した。

 実に最後の最後まで、飽きさせてくれない男性であった。B食クラバーの個人的な感想だがコノ男性は、店員では無いんじゃないかと想像する。本職の店員の方が急に都合悪くなったとかで替わりに来たって感じのが強い。って、実はホントの店員さんだったら、失礼なコトこの上ない話だが。次回あっけら館に行った時、コノ男性がいるかいないかが、現在のB食クラバーの、最も大きな興味である。