店  名
 蕎麦屋 杉野十兵次
食べた日
2008/11/21
住  所
 秋田県秋田市山王3-1-24
営業時間
11:00〜14:00 17:00〜22:00
電話番号
 018-863-3740
定休日
無休

すんげえかき揚げ天丼
すんげえかき揚げ天丼(俯瞰)
すんげえかき揚げ天丼(横写)
ミニかき揚天丼&そばセット
ミニかき揚天丼
そば

前  説

 山王に杉野十兵次なる蕎麦屋があるとはワリと前から知っていたが、気になりだしたのはごく最近のコト。いや正確に言うと、店名に関してはずっと気になっていたのだが、肝心の食べ物について興味を持ったのが最近だと言う話。

 杉野十兵次と言えば、蕎麦屋に身をやつして吉良邸の回りを(主に諜報の目的で)夜な夜なウロウロする四十七士きっての軟弱モノで、コノママじゃ皆の足手まといになってしまう!と、槍名人俵星玄蕃に弟子入り志願。玄蕃の娘とチチクリ合いながらも、なんとか一人前に成長し、見事本懐を成し遂げた人物だ。(カナリ強引な解釈が混ざっている可能性大。)

 一方の玄蕃は十兵次の正体に薄々感づきながらも気付かない振りをして寝ていたある雪の晩、江戸の夜に響き渡る一打ち二打ち三流れ、山鹿流儀の陣太鼓の音に目を覚まし、槍を持って吉良邸へと駆け付ける。赤穂の方々、助太刀致すぞぉ〜〜〜と乗り込んだモノの、大石内蔵之助にお気持ちだけで結構、コノ場はお下がり下さいと言われ、ならばと吉良邸に通じる橋の袂に立ち、コノ討ち入りを邪魔するモノは一歩も通さんぞ!と仁王立ちし、討ち入りを影ながら助けた人物として語られている。

 そんなコトをツラツラと考えてみると、コノ蕎麦屋も実は、世を忍ぶ仮の姿なのだろうかとか思わなくもない。普段は蕎麦屋を営みながら街中の情報を分析し、しかしイザという時には武勲を打ち立てる、ソノ様な目的を持っていないと、一体誰に言い切るコトが出来ようか。いや出来まいっ!(若干講談風味)

 まぁ分析とか武勲とかはおいといて、俵星玄蕃並に立派な先生に弟子入りしたんじゃないかと思わせる辺り、カナリ期待値も高かろうモノなのに、一体何故B食クラバーが出掛けなかったのかと言うと、ソレはヤッパリ店名によってしまうだろうか。

 コレが杉野十兵次じゃなくて俵星玄蕃だったら間違いなくソッコーで出掛けていたに違いない。しかしソノ場合、蕎麦屋の店名としてはイマイチぼけてしまうワケで、じゃぁ一体どうすりゃ良いのサこのワタシ。…って、別にどうもしなくて良いが。

 で、近頃各種メディアで目にする機会が多いのがコチラで提供している、すんげえかき揚げ天丼。ドンブリと同じ直径を持つかき揚げ天がゴハンの上に、一打ち・二打ち・三…は流れないで四打ち・五打ちと、都合5ヶも乗っかっていると言うから驚きだ。コレだけでもスーパーボリュームなのに、更にミニそばと小鉢2つが付くと言う。

 コレは何かへの挑戦なのか。十兵次よりも玄蕃の方が良いんじゃない?って思ったB食クラバーの心の底に、遅まきながらもようやく闘志の炎が、一つ、マタ一つと燃え始めた。

 コレは食べないワケにはまいるまい!いや、正確な表現を試みるならば『食べる』では無くて『体験する!』だ。もしかしたら12月14日を以て閉店してしまう可能性だって、無いとは言えないだろう。(討ち入りの日ね。念のタメ。)


Comment

 時に平成二十年十一月二十一日。秋田の北風を震わせて、響くは炎の竿燈太鼓。しかも一打ち二打ち三流れ…とB食クラバーの心の中では、隅から隅まで太鼓の音が鳴り渡っている。扉を開ける時に合い言葉が必要かもしれないと躊躇したが、ソノ時は『山』・『川』と受け応えれば良いハズだ。

 今回のお供もクラバーRさん。最近、ヤケにメガ盛りメニューを共にする事が多い。と言ってもクラバーRさんだって別に大食漢なワケでは無い。面白い料理があると食べずにいられない。ソレがクラバーRさんとB食クラバーの心を一つにするのだ。チナミに念のタメと言うか、B食クラバーの周囲において、クラバーRさん以外でメガ盛りに付き合ってくれそうな人なんて1人も見当が付かない。

 そんなコトを考えつつ、やや緊張しながら店内に突入する。『いらっしゃいませー!』との明るい声が鳴り響く。合い言葉は必要なかったらしい。少々ガッカリしながら席に着く。

 テーブル席が4つ程とカウンター。あとはお座敷席が4つと、なかなかの集客力。外見から受ける印象ではもっと狭い店内を想像していたのだがサスガ十兵次。敵(?)の目を欺くのは朝飯前と言ったトコロか。

 メニューには沢山の品目が並ぶ。ざるそば・冷やかけ・とろろそば。海老天丼・穴子天丼・しょうが焼きなどに、そばのセットなんてぇモノもある。ハーフサイズなどもあり、ソレらのバリエーションはカナリ豊富だ。

 一瞬、コレとかアレも良いな。あ、コッチも良いな!え〜何食べたら良いの?♪とか言う気持ちが盛り上がりかけたが、いやいやいや、ココにはすんげえかき揚げ天丼を食べに来たのだから、ソレ以外に迷っている場合じゃない。

 改めてメニューを見直してみる。しかし、すんげえかき揚げ天そばなるモノは載っているが、すんげえかき揚げ天丼がドコにも載っていない。あっれ、天そばの間違いだっけ?でも確か…と、店員さんに確認してみようかと振り返った時、手書きのメニューが壁に貼られているのを目撃した。ソコに目的の品、すんげえかき揚げ天丼の文字が書かれていた。

 最近のB食クラバーは自分の記憶力に自身が持てない。以前ならば(メニューに限らずなんでも)特に確認しなくても確信を持てていたのだが、近頃のB食クラバーと来たらこう言う場合、先ず自分の記憶力を疑ってしまう。何か脳味噌のトレーニングでもしなければ、コノ傾向にはマスマス拍車がかかってしまうに違いない。あぁ誰かB食クラバーに、DSを恵んではくれないだろうか。

 そんなB食クラバーの塞ぎがちな気持ちとは裏腹に、ヤケに元気で気持ちが良い感じの店員さんに向かって、すんげえかき揚げ天丼下さいと言ってみた。すると、変わらぬ明るい笑顔で、『2人ならば食べられるかもしれませんね』と言ってくれた。

 コノ感じ。先日鶴亀屋食堂で、似た様なヤリトリを店員さんとした記憶がある。ココは店員さんの言うコトに従って間違いないだろうとの確信を得た我々は、すんげえかき揚げ天丼を1つ頼み、もう1つは店員さんオススメの週替わりランチであるトコロの、ミニかき揚天丼&そばセットを注文した。

 普段は\880で提供されているミニかき揚天丼&そばセットであるが、週替わりランチに設定されて\780で提供されている。そしてコーヒー付き。オソラクではあるが何種類かあるミニ天丼とそばのセットが、入れ替わりでランチとして提供されているのに違いない。

 店員さんがアクマで爽やかに、『食べ切るのは大体5人に1人位ですかねぇ』とか言っていたが、我々は2人組なのだから大丈夫だろう!と、ソノ時は何とも思わなかった。

 ミニかき揚げ天丼とすんげえかき揚げ天丼で、かき揚げ天が被っていると思ったが、店員さんが勧めてくれるのだから大丈夫だろう!と、ソノ時は何とも思わなかった。

 そして、すんげえかき揚げ天丼が到着した。恐ろしすぎて声も出ない。ドンブリの上に、その高さの3倍はあろうかと言うぐらいのかき揚げ天が銀色の鉄串によって、文字通り串刺しにされている。ソノ様はまるで、ターミナルドグマに拘束されているリリスの体に刺さる、ロンギヌスの槍の様でもある。

 アダムと称されるリリスを前にして、『違う。コレはリリス…。そうか、 そう言うコトかリリン。』と力無く呟いたカヲルの気持ちが今、解らなくもない。しかし、こうして目の前にある以上、戦わなければならない。心の壁を取り除いて、誰とでもあっと言う間にモノスゴク仲良くなれちゃうステキなアイテム、ロンギヌスの槍を引き抜き、マズは1ヶ目のかき揚げ天を食べてみた。

 かき揚げはサクッと揚がっていてアツアツ。決して衣が厚かったり、油でギトギトなんてコトはない。しかもほぼ玉ねぎとゴボウで構成されているので、こりゃぁ健康に良いや!と勘違いしながら思いながら、クラバーRさんと1枚ずつ食べ進める。

 そばの方もエッジが立ってるし透明感があるしで良い感じ。冷やがけがメニューにあるので、ルーツは西馬音内にあるのだろうか。成る程、師匠を玄蕃に例えたとしても、一切の見劣り感があるワケがない。

 ソノ様に美味しく食べ進めていたのだが突然、閉店ガラガラ〜とシャッターが下りるかの様に、B食クラバーの胃袋と言うよりも体全体が、かき揚げ天を食べるコトを拒否し始めた。本当にあっと言う間。さっき迄美味しいと思いながら食べていたのに、一体コレはどう言うコトか。見るとクラバーRさんも、同じ様に苦しみに満ちた表情を浮かべている。

 ヤハリ油モノは胃に溜まると言うコトだろうか。食べ始めた時には思いもよらなった事態が発生して狼狽える。しかし、勝負はココからだ。主君の仇を討つタメ討ち入った赤穂浪士達だって、決死の覚悟で臨んだコトであろう。B食クラバーの場合、実際に生命の危険に晒されているワケでは無い。ならば、完食出来ないハズがあるだろうか。

 最後の力を振り絞り、かき揚げ天を食べ進める。一噛みする度に、サクッと言う軽やかな音が鳴り響く。サクッ・サクッ・サク・サク・サク・サク・サク・サク・サク・サクッ!。

 遂に食べ切った瞬間、討ち入りの最中、どうにか遭遇出来た十兵次と玄蕃のヤリトリを思い出す。

 『先生!』

 『おう、蕎麦屋かぁ〜〜っ!!』

 と言うセリフを熱唱する三波春夫のハリの強い声と、爽やかな笑顔が同時に脳裏に浮かぶ。(ジャパニーズオペラと名高い、『元禄名槍譜〜俵星玄蕃と杉野十平次』からの一節。言葉遣いが難しいので、是非歌詞も見ながら!)

TawaraboshiGenba 俵星玄蕃 三波春夫 歌詞情報 - goo 音楽

 十兵次同様、見事所期の目的を果たしたB食クラバーは満腹のお腹を抱え、店の前で玄蕃の様に仁王立ちをしてみた。