店  名
 鶴亀屋食堂
食べた日
2008/11/02
住  所
 青森県青森市大字浅虫字蛍谷293
営業時間
8:00〜20:00
電話番号
 017-752-3385
定休日
年中無休

まぐろ丼
まぐろ丼(アップ)
まぐろ丼(side view)
まぐろ丼(取り皿)
穴子天ミニ丼

前  説

 ワリと最近まで、青森県と聞いてB食クラバーが思い付くイメージと言えば、りんご!イタコ!!一文字会話!!!の3つだった。B食クラバー以外の方に一文字会話って言って通じるのかどうか解らないが、いわゆるアレだ。

 『け』 (どうぞ、お食べ下さい)
 『く』 (はい。頂きます)
 『め?』 (…美味しいですか?)
 『め!』 (はい、とっても美味しいです!)

 コレはアクマでもネタであって、コンナ会話のヤリトリが、まさか真剣に行われていると思ったコトは無かったが、青森県出身の友人が何故か知らないケド、『コレは本当です。実際使っております。ウソじゃありません。』と言う様な意を津軽弁混じりで力説したりしていたので、ますますウソだろ!との疑念が巻き起こったモノだった。

 もう何て言うか、B食クラバーの友人以外の全青森県民の方が、『コレは本当です。実際使って…』っていくら言ったってB食クラバーは、『もう全く。青森県民の方々は面白いコト言うなぁ』って言う感想以外持つコトが出来ない。

 まるで、関西以外の地域に引っ越した大阪生まれの小学生の様でもある。転校して初めての朝の挨拶で、大阪出身って言ったダケで級友達のスイッチが入り、好きな言葉は一期一会です!ってマトモなコトを喋っているのにも関わらず大爆笑をかってしまうって言うのと、B食クラバー的にはイコールだ。

 まぁしかし、一文字会話が実際に使われているとして、コノ舞台が新婚家庭だったら一体どうなるだろうかと考えなくもない。

 『け』 (アナタ、一日中ご苦労様。ワタシの手料理、食・べ・て!)
 『く』 (今日も一日、コレが楽しみで頑張ったんだ。
     モチロン食べるよ!)
 『め?』 (…今日3時間かけて煮込んだせんべい汁、美味しい?)
 『め!』 (美味い!チョー美味いよ!…あぁ〜もう我慢できない。
     ヨシコォォォォォ〜[仮名]!○×△◇●×▼◇)

 ってな流れで新婚夫婦のハッピーナイトライフが始まるのかと思うと、もう何だか両目と両耳をふさいでイヤン!と叫ばずにはいられない心境に。

 そんなイメージが付きまとっていたB食クラバーのアバウト青森県だが、今時だともう一つ、大間のマグロなんてぇモノが思い浮かんだりする。ずっと以前から有名だったのかもしれないけれどもB食クラバーがそうと認識する様になったのは、築地市場で一本二千万円のマグロが揚がった!とか言うニュースが報道されてからだ。

 いつもスーパーで買っているあのマグロが二千万円もするのか…。と、そりゃぁB食クラバーがイツも食べているマグロとは品質が全然違うのだろうが、一気にB食クラバーの頭の中で、二千万円のマグロ⇒青森県の名物!と言う命題が成立した。

 サッカーのクラブワールドカップを独占中継する某TV局が、サッカーに興味のない人をも視聴者に取り込もうとして毎年の様に、『コノ選手は年俸○○億円貰ってます!』って繰り返すのを、もっとサッカーの魅力ソノモノを掘り下げてを伝えるべきだろう!安直化爆弾投下かっ!ナドと思ってイツも辟易していたのだが、実体に興味を持たない人を惹き付けるのに、金額に勝るモノは何一つ無いと実感した今日コノ頃。(それでも試合中にソノ選手がボールを持つ度、年俸の話をするのはイカガなモノかと思ってみたり。)

 とにかくこうまで有名なのなら、隣県でもあるコトだし一度青森県で名物のマグロとやらを食べてやらなきゃなるめぇ!と鼻息も荒く情報を仕入れてみるも、高額マグロのメッカであろう大間は秋田市からだと6時間半もかかると知って早くも意欲減退。

 6時間半もあったら、高速を使えば東京まで辿り着けるし、7号線を南下するダケでも新潟県まで行くコトが出来る。ソレが何て言うか、秋田と青森の2県しか滞在しないのに6時間も費やすと言うのが、時間当たりの県滞在数率が少なくて勿体なくないだろうかと考えてみて、どうもイマイチ気が乗らない。

 どうしようかなぁ〜と思っていたトコロ青森市内で、ドンブリに大量のマグロを盛りつけてくれる店があるとの情報をキャッチした。何年か前の話みたいだが、ドンブリに乗り切らないぐらい大量のマグロを乗っけたマグロ丼が、\800で提供されているとのコト。

 写真で紹介されてはいるが、ソレをみてもニワカには信じられない。横から見ると、ゴハンの入った瀬戸物のドンブリの上に、更にマグロで出来たドンブリが乗っかっているかの様だ。マサにドンブリonドンブリ。

 こりゃぁ食べ切られないだろうなぁ、って気持ちが浮かぶと共に、コレ食べてみたい!絶対食べてみたい!!って気持ちが交互にせめぎ合う。

 まぁケド、青森市まで行くって話もB食クラバー的にリアリティ無いしね、とか思っていた2008年の秋。降って涌いた様に青森県まで出掛ける予定が出来た。

 ならば行くしかあるまい。コノ大量のマグロ丼を見事に完食し、暁の青森港に向かって、『めっ〜〜〜っ!』と大声で叫んでみたい。


Comment

 大量のマグロ丼を提供してくれる店の名前は、鶴亀屋食堂。鶴に亀と、何とも縁起の良い名前だ。B食クラバー的に青森で鶴亀って言うと、黒石市の鶴亀焼きを思い出す。

 血も凍り付く様な寒さを体験した黒石市行脚の中で、雲の切れ間から差し込む日差しの様な暖かさと明るさをB食クラバーの心に取り戻させてくれた唯一の存在、ソレが鶴亀焼きだ。

 久々に触れる人の心の温かさに、B食クラバーは嗚咽、むせび泣きながら(モチロン心の中で)食べたモノだ。しかしソノ鶴亀焼きの店も、何年か前に閉店したらしい。2代目鶴亀焼きガールが頑張っていると聞いていたのだが、3代目は頑張ってくれなかったのだろうか。

 とか思いながら鶴亀屋食堂に到着。付近には浅虫水族館・道の駅・宿泊施設などもあり、カナリ賑わっている気配が感じられる。件のマグロ丼は一日中提供されているらしいとは聞いていたが、夜になると品切れになる場合がマレにあるとか、マグロの刺身が漬けになるよって話もあったので、安全策をとって午前中に出掛けてみた。

 こう言う時の道連れはクラバーRさんに決まっている。試しに鶴亀屋食堂のマグロ丼の話をしてみたら、途端に瞳をランランと輝かせ、ソノ期待値はあっと言う間にB食クラバーを超えてしまった。クラバーRさんをガッカリさせないタメにも、安全策をとらないワケにはマスマスいかなくなった。

 行列が出来ているかもよぉ〜って話もあったので覚悟していたが、ドライブインの様にカナリ広い店内には5組程の先客がいるダケ。初々しいカップル、生活レベルの高そうなマダム達、家族連れ、運送業らしき方々など、客層もバラエティに富んでいる。

 席についてメニューを広げるが、マグロ丼の文字がドコにも見つけられない。冷たい汗が背中を伝う。クラバーRさんの顔を見るコトが出来ない。思わず、店内を見回す仕草をしつつ顔を背けてしまう。すると、ソコには思わぬ僥倖あり!生ウニ丼・甘エビ丼の文字と共に、マグロ丼と手書きされたメニューが壁に貼られていたのだ。

 ホッと胸をなで下ろしながらクラバーRさんに向き直り、あ、マグロ丼アソコに貼られてる。やっぱ特別なんだよね。と、平静を装いながら言ってみたが、気が付くと言葉に抑揚が全くなかったかもしれない。クラバーRさんの表情から何かを読みとる程の余裕があるワケもなく、構わず一人で喋り続けた。

 資源としてのマグロ不足と、燃料高騰のダブルパンチによってマグロ丼の値段も徐々に上がり始め、本日の価格は\1,200。それでもアホみたいな量のマグロを提供してくれるので、割安感には何の陰りも見られない。

 クラバーRさんはマグロ丼を食べる気満々だが、普段朝食をとらないB食クラバーは、念願の鶴亀屋に付いたと言うのに一向に食欲が起こる気配がない。店に来れば一気にアドレナリンが分泌されて食べられる様になるだろう!と言う甘い目論見の元、はるばる秋田から出掛けて来たと言うのに一体何たるコト。絶対にマグロ丼を食べ切るコトって出来ないよなーと思ったB食クラバーは、軟弱にもミニマグロ丼を注文するコトにした。

 色んなトコロから得た情報によると、ミニマグロ丼だってフツーじゃない量のマグロが提供されると言う話だ。マグロ丼とミニマグロ丼を2つ並べて写真に撮ってみるのも一興だろう。クラバーRさんがマグロ丼を食べきれない場合の保険の意もあるしと気持ちを固め、店員さんを呼ぶコトにした。

 アノ人と眼を合わせるのはやめようやめようと思えば思う程不思議と目が合ってしまうモノで、店に入った時からアノ人に頼むのはやめよう!と思っていた店員さんと、不覚にも目が合ってしまった。ソノ風貌や振る舞いから、間違いなく店主であろうと想像できる人物ではあるが、スゴ味のある声とドスの利いた恰幅の良い体付きに、B食クラバーは無条件降伏してしまいそうな迫力がある。

 意識しているワケでも無いのに、少しビブラートのかかった声で『マグロ丼とミニマグロ丼下さい』と、どうにか声をひねり出して伝えると、店主の鋭い眼差しがB食クラバーに向けられた。

 『2人で分けて食べるのなら、マグロばっかりだと飽きるから違うモノにした方が良いょ』と、(失礼ながら)外見からはまるっきり想像もできない優しい言葉を(重ねて失礼)かけてくれた。

 考えてみれば客商売だし、お客さんに対してソンナに厳しい言葉を吐くハズがない。B食クラバーときたら外見に惑わされ過ぎだ。ココは店主と思われる人物が勧めてくれる通り、他のモノを食べてみるコトにしよう。

 真っ先に浮かんだのはB食クラバーの大好きな生ウニ丼だが、マグロ丼の飽きがウニで解消されるのだろうか、逆に増幅されるのではないだろうかと考え、ココは生モノでは無く、火を通したモノにするべきだろうと思い至った。火を通したモノでは、えび天2本・イカ天5ヶに野菜天が1ヶが乗っかった三天丼が、コチラではマグロ丼と並ぶ目玉料理なのだが、コレを食べると言うのなら、マグロ丼だって食べ切るコトが出来ると言うモノだ。散々迷った挙げ句、穴子天ミニ丼を注文するコトにした。

 注文と言う大仕事を終え、安心した風情で店内を見回す。先程見かけた初々しいカップルのテーブルには、マグロ丼が2つ運ばれていた。そのボリュームに驚きつつ、写真を撮りあったりしてイチャイチャしながら、初々しくマグロ丼を楽しんでいた。

 もう1つのテーブルを見てみると、生活レベルの高そうなマダム達が、恐らくラーメンであろうドンブリの横にミニマグロ丼と思しきモノを並べて呆然としていた。そう、マサに呆然。ソノ証拠に、ソレらミニマグロ丼には一切手が着けられている痕跡を発見するコトが出来なかった。まさかコンナにボリュームたっぷりのモノが出てくるとは、想像すら出来なかったのに違いない。コンナのとっても食べられないザマスわっ!と、薄い色したサングラスの奥で瞳が訴えていた。

 いよいよB食クラバーズの前にマグロ丼が運ばれて来た。写真で見るのと、遠くのテーブルで見るのと、実際に目の前で見るのとは全く違う。外見からでは計り知るコトの出来ないボリュームが、我々の不安を更に募らせる。

 当然と言うか、一人前の料理が乗っかったお盆には、取り皿が一枚添付されている。当たり前に食べてもゴハンに辿り着くコトが出来ないので、マグロの刺身を取り皿に寄せつつ食べると言う寸法だ。クラバーRさんがマグロの刺身を取り皿に寄せながら、一体何切れ乗っかっているのか数え始めた。

 …10切れ。…15切れ。確実に取り皿に寄せているハズなのだが、一向に減っている気配を感じるコトが出来ない。ソノ一切れ一切れが、通常の刺身の2〜3倍位の厚みがある。寄せているソバからワープかなんかの技術を使ってドンブリに戻って来ているんじゃないだろうかとの錯覚が2人を襲う。

 ようやくドンブリの表面にゴハンの白が見えて来た。総数実に32切れ。全くあり得ない数の刺身がゴハンの上に盛りつけられていた。ソノ辺の和食屋だったら、5切れ位で\1,000とかで提供されていそうな気がする。5切れで\1,000だとすると、32切れの場合\6,400。一体どんな価格破壊がコノ店で行われていると言うのだろうか。

 クラバーRさんがマグロ丼を食べ始める。B食クラバーは穴子天ミニ丼を食べ始める。マグロ丼に比べて穴子天ミニ丼と来たら、食玩位の大きさにしか見えない。食玩レベルの穴子天ミニ丼は、そのサイズ通りあっと言う間に食べ終わるコトが可能だが、B食クラバーの食事は当然のコトながら簡単には終わらない。クラバーRさんが分けてくれるマグロを食べながらの食事だからだ。

 安くて大量に盛られているからと言って、決して品質の劣る部分が乗っかっているのでは無く、鮮度が高く、柔らかくて食べやすい(しかも厚い)刺身バカリ。以前赤坂で\4,200の中トロ食べ放題店に行った時、最初はもちろんピンク色の刺身が出て来たが、注文をしすぎたのか最終的には真っ赤な切り身が出て来た時があったが、アレと比べると完全にトロ。赤坂の店がまだ営業しているかどうか解らないが、もっと鶴亀屋食堂を見習えと言ってみたい。

 クラバーRさんが若干飽き気味になって、B食クラバーがモチョットいけるなって位の比率で、無事に完食するコトが出来た。我々の作戦勝ちと言えよう。しかしコレも、店主の助言あったればコソだ。見かけだけで人となりを判断してしまった、店に入った瞬間の自分を何様のツモリだ!と怒鳴りつけたい気分だ。

 しかし振り返ってみると、B食クラバー的にはイマイチまぐろ丼を存分に食べ尽くした!と言う実感が湧いていないコトに気が付いた。コレでは本末転倒も甚だしい。無事にまぐろ丼を食べ終えるコトを最優先に考えてしまい、向こう3年間はマグロ食べたくないよ!って言うぐらいマグロを胃袋に詰め込む作業に没頭するコトを忘れてしまった。

 コレでは鶴亀屋食堂に勝ったとは口が裂けても言えない。って言うか逆に負けている気がする。コノ雪辱を果たすためにも、次回訪れる機会があった場合には、必ずやマグロ丼を食べてみたい。ソノ時は、ついでに三天丼も食べるべきだろう。そうしてコソ初めて、B食クラバーは鶴亀屋食堂に勝ったのだと、胸を張って言える気がする。