街の片隅に佇んで、『Vegetables Me!』と思わず叫び出したい衝動に駆られる様に、最近のB食クラバーは野菜炒め定食を欲してやまない。ソコには、ドンナ僅かなウソも偽りもない。誰からも何の注意も払われなくて理不尽な攻撃を受けても、自分はココにいるんだ!って、ソレはまるで証明するかの様でもある。
天気の良い夕暮れ時。何人かの友達と一緒に公園で遊んでいたのに、お迎えのお母さんが来て、1人、マタ1人帰って行き、気がついたら自分1人ダケが取り残されていたとする。大きな夕日が真っ赤に大空を染め上げて、カラスもソレに向かって飛んで行く。
1人ぼっちでジャングルジムのてっぺんに登り、人もカラスも、猫もいなくなった公園で寂しく呟く。『…野菜炒めが食べたい』と。
そんな、なんて言うか叙情的と言うか郷愁を誘う様なムードの時は、子供の頃食べたいわゆるお袋の味的な料理を食べたくなるんじゃないかと思うが、ソコで野菜炒めを思い浮かべてしまうとは。もちろん、B食クラバーの中で野菜炒めがお袋の味なワケではない。
料理には何でも塩オンリー!天ぷらも天つゆじゃなくて塩つけましょうよ!カツ丼もソースじゃなくて塩ですぜ!なんだったら刺身だって醤油じゃなくて塩つけて食べましょうぜ!塩サイコー!ザッツオールライトソルト!的なムードが漂う最近のコトを考えれば先鋭的とすら言えるのかもしれないが、B食クラバーの母親が作る野菜炒めは、塩のみによって味付けされていて、どうもイマイチ、パンチに欠けていた様な気が幼心にもなんとなくこう。
ドコカの食堂で友達が食べてる、醤油で味付けされた野菜炒め定食を軽くツマんでみた時の衝撃と言ったら、何やってんだYOオカーチャン!ぐらいのインパクトを受けていたので、まぁコノ辺のコトが、B食クラバーにとって野菜炒め定食がお袋の味では無い理由として充分なのではないだろうか。
お袋の味じゃないのに、お袋の味クラスの料理の仲間入りを果たした野菜炒め定食。ソノ美味しさを追求するのは、人間として至極当たり前のコトでしょ?と、自分自身に無理矢理納得できる理由を見つけ、今日も新たなる店へと行ってみた。ソレは仁井田にある中むら。
中むらと聞くとB食クラバー的には、必殺の中村主水さんを思い出してしまうが、ソコで食べてしまったが最後、マサカ夜中にコッソリと仕事されてしまうなんてコトはあるまいな。
国道13号線から牛島商店街への分岐点近くに、何やら飲食店らしきモノが沢山あるのは知っていたが、ソレゾレの1軒々々が、どんな店なのかってコト迄は気にしたコトが無かった。唯一気になっていたのは沖縄料理と書かれた看板の店であったが、ソレでも何か、入ってみよう!って気にはならず、ヤハリ通り過ぎていた。
ソレら多くの店が並ぶ建物は、2階建てのビル(!)らしい。ソノ中の1店舗である中むらは、聞くトコロによると物凄くボリュームがあるとのコト。マサカでも、力食堂程量が多いコトもあるまいと、呑気な気分で店に突入してみた。駐車場はドコにあるかと心配したが、店の裏側と言うか、建物によってコの字型に囲まれた部分が、このビルに用事がある人向けの駐車場だと書かれていた。
ヤヤ急勾配な階段を上って店内へ突入。長いカウンターとあとは、小上がり席にテーブルが5つ程横並びになっている長方形のレイアウト。早速メニューを確認する。期待通り、野菜炒め定食を発見出来た。
定食類は他にもスタミナ定食・天ぷら定食・ホルモン定食・肉鍋定食などとあり、ソレら全てが11:00〜14:00のランチタイムには\600。他の時間帯でも\650で食べるコトが出来る様だ。水はセルフサービス。野菜炒め定食を注文し、しばし待つ。
待っている間店内を見回すと、こう言う食堂にありがちな不思議なオブジェに混じって、サイン色紙を何枚か発見した。ソノ中に1枚、三洋電機ラグビー部と書かれているモノがあった。
そう言えばず〜っと以前、三洋のラグビーチームが秋田で試合をした様なしてない様な、かすかでアヤフヤな記憶が。ソノ時のモノだろうか。他にもドコカの高校生チームらしき色紙もあったので、何か関連性があるのかもしれない。その中に混じって反省ざる太郎・次郎の色紙もあるのは何でだろう?とかソンナことを考えている内に、野菜炒め定食が運ばれて来た。
唖然。ソノ量をみて声も出ない。いや、メインであるオカズの量コソはソレ程でも無いと言うか、ソレでもヤヤ多めでウレシイかな?って感じもするのだが、ご飯の量がパない。本気で半端ない。明らかに力食堂よりも大盛りのソレは、しかもカナリの高密度である様子迄伺えた。横には懐かしくもウレシイ、おべんとスパゲッティ付き。
先程メニューに、ゴハンのお代わり自由ですって書かれていたと思ったんだケド、コレってヤッパ気のせいだよね?って思いながら、恐る恐るメニューを見返してみると、ヤッパリ確かに確実に、ソコにはお代わりできますと書かれていた。
容赦のない炭水化物天国。コノ御飯を食べ終わった後に、更にお代わりする人なんているんだろうか?そう思うと、色紙の写真に写っていた高校生(ラガーメン?)達の、弾ける様な笑顔の理由がようやく解った。コンナに沢山炭水化物を摂取出来て、僕たち幸せで〜すっ!ってコトなのに違いない。一体どんだけ食べれば気が済むのか。こうなったらとりあえずもう、ご飯のコトは気にしないで野菜炒め定食を食べるコトにした。
ご飯の量に気にとられて注意がそがれていたが、コチラの野菜炒めはウレシイコトになんとキャベツがメイン。なんて言うか探し求め追い求め続けて来た野菜炒め定食に、ようやくめぐり会えた様な気がした。コノ比率での野菜炒め定食の出現に、震えが止まらない。野菜炒めと言いながら、肉も入っている点が見逃せない。
味付けも非常に好みな野菜炒めをいただきながら、ご飯も進む。進む。進む。…進むが半分あたり食べ終わったトコロでピタリと箸が止まった。もうコレ以上、1口もご飯なんか受け付けませんよ!と、体が拒否を始めたのだ。
コンナ時、ご飯は残さずに食べないといけません!と教育され、ソレを打ち破るコトの出来ない自分が恨めしい。一食分の食事が終わり、続けて2食目を食べている様なソンナ気分に。胃袋付近を中心に、舐めたらきっと苦そうな汗が出て来た。
横にはフツーのサラリーマンらしきトーサンが2人いるが、彼らはキッチリと食事を終えて休んでいる。特に太っている様にも見えない彼らの様子を見るにつけ、ひょっとして人間としてコノ位の量は当たり前なのだろうか?と思えて来た。むしろコノ量を食べるのに四苦八苦している自分の方に問題があるのではと。
キャベツ率も高いし、味付けもB食クラバー好みだし、野菜炒めを食べたくなったら、再びコノ店に来るコトは間違いないが、ソノ時は御飯半分にして下さい。エヘエヘ。と頼むコトで、残すコトを回避する手段に出るとしよう。