寒気がした。悪寒が走る。あれ?何だかチョット気持ち悪いな。熱でもあるんだろうか?と気になった。どうしたんだろ?と思っていると先程から、人が出入りする度にそうなっている様に感じられる。
あっ、今年も花粉症シーズンが来たのか!と、春の浮かれ気分とは反対方向にテンションがメルトダウン。そう思うと鼻がムズムズしだし、クシャミもしたくなって仕方ない。
B食クラバーが晴れて花粉症キャリアの仲間入りを果たしたのは、東京生活4年目の春。それまで花粉症に対して無知だったB食クラバーは、花粉症も風邪と似た様なモノで、体調管理に気をつけていれば絶対にかからないモノだ。風邪対策同様に、毎日気を引き締めて生活していこう!などと心の中で寒風摩擦を繰り返し、通勤電車の窓から東京タワーを見上げつつ思ったりしていた。
ソンナある日の朝、目が覚めると花粉症になっていた。以前からTVで夕モリが、夕べまで何ともなかったのに、朝起きたら花粉症になっていた!と騒いでいるのを見ていて、そんなワケ無いジャン。全く笑い話が上手だよな、とか思っていたのだが、ソレが真実であると知らされた。
何しろ身を以て体感しているのだから、一片たりとも疑いようがない。誰かに目の前で、延々とコショーを振りかけられ続けている様な気分。鼻の中がむず痒くてしょうがなく、ソレに刺激されて涙も止まらない。明らかに風邪とは違う症状に直面し、コレがウワサの花粉症なのか!と、思わず『花粉症にかかりましたので今日は休みます。』って会社に電話しようかと思うぐらいショックを受けた。
あぁ、なんてコト。昨日までは楽しくて仕方なかった春の訪れなのに、コレからは春になる度こんなツライ思いを繰り返すコトになるのか。一生花粉症と闘わなくてはならないなんて酷すぎる!
やさぐれたB食クラバーは、心の闇から黒B食クラバーを召還し、ノビ太から取り上げた独裁スイッチを片手に、『誰もかれも消えちまえ!』と言つつポチッとな!と、握りしめた親指に力を込めたい衝動に。いや、って言うかコノ場合、『スギ花粉よ、消えちまえっ!』と言うべきか。
そんなB食クラバーだが、秋田に帰ってくると花粉症の症状はだいぶ和らいだ。最盛期には1月半モノ間、外に出掛ける時は両方の鼻穴にティッシュを突っ込んで歩き、たまりかねた誰かが『あのぉ〜、鼻にティッシュが詰まってますよ?』と話しかけて来ても、『あっ、花粉症なんです。気にしないで下さい。』と、平気で言い返せるぐらいだったのが(ソレぐらいの気分だったってコトで実際にはしていない)、現在では長くて半月ぐらいの期間、チョット人より鼻水が多く出て、ホンの少しクシャミの回数が多いかな?ってぐらいになった。
さすがは都市化が進んでいる地域ほど患者が多いと言われている病気だけのコトはある。東京に比べるとソノ辺がカナリ進んでいないんじゃないなかーと思われる秋田では、症状も軽減されるのだろうか。TVドラマでよく、子供が喘息だから…と言って都会から田舎へ引っ越す家族がいたりするが、東京で花粉症に苦しんでいる人達は、皆秋田に引っ越してくればいい。そしたらきっとカナリ楽になるハズだ。大丈夫。都会から人がいくら移住して来たって、秋田は絶対にメガロポリスたり得ない。
なぁ〜んて少々ブラックなコトを考えつつ、『ソレにしても今年はチョット早いな。いつもは3月の下旬くらいから始まるのに…』と思っていたB食クラバーの、ケータイメールの着信音が鳴った。誰から来たのかな?って思い、鼻先を気にしながら差出人の名前を見るとソコには、クラバーKの名前が表示されていた。
あぁ、思い出されるのは2週間前の惨劇。盛岡からの帰り道の状況が、走馬燈の様に甦る。悪寒がしたのは花粉症のせいではなく、クラバーKからのメール着信を暗示する虫の知らせだったのか。今度は一体どんなコトが、B食クラバーの身に降りかかると言うのだろうか。
2週間前、春物の服を探しに盛岡へ出掛けたクラバーKと付き添いのB食クラバーだが、まだ時期が早かった様で、春物の服は入荷していなかった。少々間隔は短いが、前回果たせなかった目的のリベンジのタメ、もう1度盛岡へ出掛けたい!とのコトだ。
今度は前回と違い、天気予報でも晴れと示されている。少しイヤな予感はするが、特に断る理由もないので再び、クラバーKの運転する車で奥羽山脈を越えてみた。
そして盛岡。2週間前と同じ2人組が、2週間前と同じ店を2軒見て回り、しかし結局、何も買うコト無く店を後にしていた。特にソノコトについては触れなかったのだが、クラバーKの気に入った服が無かったんだろうなーと思いつつ、盛岡の大通りで人混みに紛れたりしていた。
それ程間をおかずに来たせいか、盛岡の街中にいても、特に違和感を抱いたりしない。仕事終わりでフォーラスに寄る様な、ソンナ普通の気分で歩いていた。ヤッパリ少し、寒かったケド。
予定外の買い物をし、お金を存分に使った2人は、そのムードに比例する様に盛岡満喫気分が盛り上がり、あとは晩ご飯を食べて帰るダケだね!ってコトになった。ラーメン好きでは定評のあるクラバーKのコトだけに、今日はらーめん山頭火で食べて、そして盛岡行脚を〆よう!と話が落ち着いた。
以前東京駅近くの山頭火で食べた時はメニューにつけ麺があったので、当然ココにもあるのだろうと思って入ってみたのだが、メニューの中に見つけられない。店員さんに聞いてみようと思ったのだが、どうやら海外の方らしかったのでやめてみた。
東京の店でも店員さんは海外の方だったのだが、普段アマリ海外の方と接し慣れていないB食クラバーは、『ツーケーメンハ・アーリーマスカ?』と日本人のクセに片言の日本語で喋ってしまい、『普通に話せよ。』って逆に言われたりしそうでイヤだからだ。
そんなワケで、B食クラバー的に山頭火イチ押し!の、特選とろ肉ラーメンを食べてみた。コレの良いトコロはモチロン、特選とろ肉。一頭の豚からワズカに200〜300gしかとるコトの出来ない頬肉を使用したチャーシューは、ラーメンの上に乗っけてしまうとソノ熱で溶けてしまう程柔らかく、そのタメ、具は麺と別皿に盛られて提供される。
初めて食べた時から、コノとろ肉の柔らかさの虜になったB食クラバーは、一刻も早く秋田にも出店しろ、山頭火よ!と、『分け入つても分け入つても青い山』って頭の中で吟じながら、いつもいつも願っている。とろ肉は通販もされているが、もしかして店で食べるのとはチョット味が違うかもねーとか思ってしまい、ナカナカ購入するまで踏み切れない。
ソモソモとろ肉ってネーミングが良いよなー。溶けちゃうからって具とラーメンは別盛だケド、B食クラバーはコノとろ肉チャーシューを、溶けそうになるぐらいスープに浸してから食べるのが好きなんだよなーと思いつつ、そう言えばクラバーKの反応はドンナだろう?と気になって覗いてみた。
初めて山頭火のラーメンを食べるクラバーKは最初、とろ肉ラーメンにするツモリでいたようだが、途中で気が変わって辛味噌らーめんを注文していた。ソノ後、ヤッパリとろ肉にすれば良かったかも!と心変わりした様だが、既に作り始めている様子だったので、とろ肉を断念していたのだ。
心優しいB食クラバーはそんなクラバーKに対し、とろ肉を1つ譲ってやったのだが、ソレを食べても特に無反応だったクラバーKの様子を受けて、只々ヒタスラ、自分のラーメンを食べるコトに没頭していた。今コノ空間には、目の前にあるラーメンと自分しか存在しない。ならば心を込めて食べるべし!食べるべし!食べるべし!と。
クラバーKは、スープを全て飲み干していた。思い返してみるとクラバーKは、チョット自分好みの味とは違うなーと感じた場合、おそらくは店主が100パーの自信を持って提供しているであろうラーメンに対して、卓上にある調味料を惜しげもなく次々に投入し、元の味付けがサッパリ解らなくなったトコロで食べ始めると言う、ラーメン職人泣かせなワザの持ち主だ。
だが今日は、他の調味料は一切入れていなかった様だ。調味料も入れず、スープも全て飲み干したクラバーKの横顔からは、山頭火のラーメンをカナリ気に入った様子が伺える。何も聞かずとも答えは態度で示されている。余計な心配だったかと思い、店を後にした。
2週間前とは違い、晴天を告げる天気予報の元では、帰り道に猛吹雪に遭遇してホワイトアウト!なんて目にはあわない。和やかな気分で進む帰り道の車中で、何となく気になったし、クラバーKに質問をしてみた。
『そー言や今日は買いたい服が無くて残念だったね。』と問いかけると、
『あーうん。ソロソロ春物が入荷したかと思って来てみたケドまだだったみたいで。』との返答が。
…。
2週間前に秋田←→盛岡間を(命がけで)移動し、ソノ時はマダ春物が入荷されていなかった。そして同じ店へ2週間後に再訪する場合、大概の場合はソノ店に、春物が入荷したと確認できた上で出掛けるモノではないだろうか。少なくともB食クラバーならそうする。ソレなのにクラバーKときたらソンナ確認など一切せず、まるで会社帰りにナガハマでコーヒー飲んで帰るぐらいの気軽さで盛岡へと、B食クラバーを再び誘ったのだ。
結局所期の目的を果たせずに帰路に就いたワケだが、コレがクラバーK以外の人と出掛けた結果だったら、B食クラバーも相当憤慨するに違いない。チャンと確認してからにしろ!と。
しかしコレは何分にも、クラバーKの所行である。そう思うとB食クラバーの心の中には、一点の曇りも濁りもない。鹿威しが甲高い、しかし心地よい音を遠くでならしているのを聞きながらお茶を飲んでいる気分のB食クラバーには、もし今クラバーKが月旅行から帰って来ました!って言っても、全く驚かない自信がある。