品 名
たいやき

住 所

秋田市牛島

初回訪問日
2002/12/14
TEL.

営業時間

前 説


 かまみ特派員より、最近牛島で販売しているたいやきにハマっているとの報告が入った。
皆、知ってるよね?ってコトだったが、知らなかった。続いてさくやさんより詳細な情報が送
られて来た。まあ女王様は店に行ったコトは無いが、食べたコトはあると言う。

 やや焦るB食クラバーの好奇心に火を付ける様に、その店では老婆が1人でたいやきを
作っているらしいと言う情報が寄せられた。なんで?って言う位無愛想で(さくや氏談)、
それは耳が遠いからだ(かまみ特派員談)ってコトだったり、更にあお猫。さんより、昔っか
ら老婆だった。そしてアンドロイドだって噂がある。等と、その人物像に対して、無限の想像
力が働く様なキーワードが羅列されて来た。

 たいやきを食べたい!って言うよりも、その老婆を見たい!と言う情熱がヒートアップ。
まだ見ぬ彼女への想いは、異常に高まりつつあった。

 実は先週の日曜日、一度出掛けてみたのだが、やっていなかった。平日でも早めに、
夕方近くになると店を閉めてしまうと言う老婆が、日曜日なんて楽しげな日に仕事している
ワケ無いよな、等と思いながら、一縷の望みを託して行ったのだが、マイノリティレポート
よろしくトムに調査を依頼するまでも無く、予想出来た結果ではあった。『あたしゃ日曜日に
仕事なんかしないよ!』と言うセリフを吐く、気難し屋の老婆を勝手に想像し、まだ見ぬ老婆
の姿が徐々に形作られて行った。想像の中での彼女は、グラサンって言うか色眼鏡を掛け
ている。…ドコとなくソノ面影はサッチーに似ている。

 店の場所は一応確認出来たのだが、皆さんから話を聞かなければ、タダの廃屋だと思っ
て通り過ぎていたでしょう。コノ店がある牛島商店街は、ワリと通る機会が多い道路なのだ
が、今迄気付かなかった理由がココで判明。コノ店の前では
三浦精肉店すらソノ存在感を
霞ませてしまう。上には上がいるモノだなと、タダタダ実感するしかない。(ん?上って言葉
であってるのだろうか?この場合。)

Comment


 さて、本日土曜日。日曜にやっていないんだから、土曜日もやってないかもな?と思いな
がら、でも土曜日に買えないとなると仕事サボって来なきゃいけないってコトになるジャン!
とワケの解らない理論(?)を展開。絶対やっているハズだ!と根拠にもならないって言うか、
甚だ自分勝手な思い込みを胸に抱き、道路脇に雪の残る午後、車で出掛けてみた。

 一見廃屋なので、モチロン駐車場もあるワケが無いコノ店の前には、道路脇の雪のせい
もあり路駐なんか出来ないので、ちょっと離れたトコロに車を停め、徒歩で向かうコトにした。
残雪の上は非常に歩きにくかったのだが、なんとか到着。店の中でたいやきを焼き焼きして
いる老婆を確認。開いてて良かった♪

 あお猫。さんより頂いたアンドロイドのイメージがあり、ちょっとC3-POっぽい感じを想像し
ないでも無かったが、至ってフツーの老婆に感じた。コノ辺少々ガッカリ。傍らに縦長ドーム
型の掃除機でもあればバッチシだったのだが。(←R2-D2ね。)

 ぱっと見、現在焼き焼きの真っ最中で、作り置きが無い様に見えたので素通りした。出来
上がる迄寒さを堪えながら路上で待っているのはツライと思ったからだ。で、用事もないの
に牛島商店街を闊歩。時々雪に足を取られたり、車に雪をかけられたりしたが、もう辛抱堪
らん!他に何もするコト無いし、たいやき屋に引き返した。さっきの感じからして、もうソロソ
ロ出来ているハズである。

 再び店の前に近づくと、老婆が2人いるのが見えた。ん?増殖?と、三浦精肉店でも経験
したトワイライトゾーンが渦を巻きながら近づいてくるのを感じたが、良く見ると、焼き焼きして
る老婆は1人で、もう1人はお客の様であった。廃屋の一角を利用して営業しているのかと
思ったが、彼女御自慢の焼き焼きブース以外の場所は、空間を無駄なく利用したくつろぎ
スペースだったのだ!良く考えたら子供が注文した後路上で待ってたりすると危ないしね。

 ドアの一部に『出入り口』なんて丁寧に書いている。盲点。先入観ってホントに恐ろしい。
その客は、自分の分を買い終えると、『どーもー』とか言って帰って行った。その時、不愛想
なハズの老婆が、油断すると聞き取れない位のボリュームで、『はい、どーも。』と言ったの
を聞き逃さなかった。アノお客の耳には届いたのだろうか?

 さて、いよいよ彼女に注文をする時が来た。しきい戸のガラスには、あずき、しろあん、
クリームと書かれている。クリームがあるとはコノ時初めて知ったが、マズはあずきとしろあ
んを頼むコトにした。何故か高校受験や、就職試験の面接時の気分を思い出す。少々声が
震えていたかも知れない。

 コチラの言うコトに頷くでも無く、何か言葉を発するでも無く、タダ一瞥をくれるダケで自分
の仕事に没頭する彼女の姿に不安を覚えたが、かまみ特派員とさくや氏の談話を思い出し
黙ってみていた。眼光の鋭さにはブンタ兄ぃを彷彿させるモノがある。固まったまま動かな
いでいると、おもむろに今焼き上がったバカリであろう、たいやきの塊を手に取り、ハサミで
ジョキジョキ切り始めた。

 彼女には、たいやき器の形通りに作ろうと言う意識が全く無いのか、全てのたいやきは
繋がっている。昔っからこうなのだろうか?その、重ねた年齢のせいで目元や指先が不確
かなのかも知れないし、めんどくさいダケかも知れない。それとも若かりし頃の彼女は牛島
商店街きってのモガで、型にハマった生き方は嫌いよ!とか言いながら、青春を謳歌してい
たのカモ知れない。

 とにかく、無造作に手に取り、中身を確認するそぶりも見せずに、たいやきを2つ袋に入れ
て手渡された。かまみ特派員によると、お金の計算が出来ないってコトであったし、消費税
の計算なんかどうするんだろ?とか思いながら、\140キッチリ渡してみた。ホンの一瞬間が
空いたが、彼女はそれ以上はコチラに興味が無いかの様に、再びたいやきを焼き始めた。

 その孤高振り。思わず雪原に佇み、ヒタスラ列車が到着するのを待っている、ポッポ屋た
る健さんとイメージがダブる。良く見ると、焼き焼きブースの隅には、木箱があって、その中
に切断前のたいやきがイッパイ入っていた。何だ、作り置きがあったのか。解っていれば、
車に雪をかけられるコトも無かったのにな。と自分の行動を少々後悔した。

 店を出る時、老婆の声を聞こうと思い、先程の客宜しく『どーもー』と言いながら、ゆっくりと
店を出、静かに扉をしめてみた。が、もう一度彼女の声を聞くコトは出来無かった。おそらく
先程の客は何十年も通っている常連なのだろう。彼女と共に、世の中の酸いも甘いも噛み
しめあった仲なのかも知れない。一見さんで声を掛けて貰おうなんて、甘かった。

 車に戻り、ドキドキしながらたいやきを割ってみると、当たり前のコトなのだが、チャンとあ
ずきとしろあんが1つずつ入っていた。コチラには皆目見当も付かないが、彼女なりの法則
があって、たいやきを焼いているのだろう。少々シャイな彼女は、常連さんにだけようやく
愛想を振りまける程ピュアで、型からハミ出たたいやきの皮も、もちろんサービス精神の現
れなのに違いない。初めての来店で彼女の声を聞くコトが出来たのは、正にラッキーとしか
言いようが無い。

 今度は彼女のスマイルが見たいな、と思いながら、たいやきを頬張った。

たいやき あずき・しろあん・クリーム 各\70