ありがたいコトに、今年も女王様からバレンタインの手作りチョコを頂けた。だが、お返しをマダ渡せていない。別に忘れているワケでは無いが、何事も早めに行動するのに越したコトはない。ホワイトデーのお返しをしつつ、ランチにお誘いするのが良いだろう。急ぎ、女王様にコンタクトしてみた。
某大事件の判決公判日と重なった昼下がり、女王様のご希望によりTempo di Kでの接見となった。いや、正確に言うとB食クラバーの希望。マダ違う。より確実を期して言うならば、女王様には何軒かご希望の店があったのだが、B食クラバーの生活力でもギリギリ無理がなかったのがTempo di Kだった次第。
約束の時間からは少々遅れ気味に到着した。正面から見えるTempo di Kには窓が無く、中の様子を覗くコトは出来ない。壁一面が透明ガラス的なモノによって、風除室風味で覆われている。左端に入り口らしき扉があるのを見つけた。
店舗中央やや右寄りの部分にボードが設置されていて、本日のランチメニューが書かれているが、既に女王様が店内でお待ちだと言うのでアマリ内容は見ずに、入り口らしき扉が正面に見える自動ドアを通過すべく、店舗左端に移動してみた。
…。
しかし、自動ドアが開かない。
何だよ、マタかよ。と、一歩下がった後再び自動ドアの前に立つ。それでも開かない。なに?もう1回っ!?と、急に全身の毛が逆立つ程のアドレナリンを分泌する。
実はB食クラバーはカナリの確率で、自動ドアの前に立っても開かない場合が多い体質の持ち主だ。重量だったり超音波だったり赤外線だったり何でも良いが、とにかくコレ迄に、最新鋭の科学技術を駆使して設計されているハズの自動ドアの前で立ちつくした回数は、40〜50回ではきかないだろう。
もしかしてB食クラバーの体は、自動ドアに反応しない位軽いのだろうかと思ってみても、体重計に乗るとキッチリ人並みなトコまで目盛りは動くし、自動ドアの前では透明人間になっているんじゃないの?とか思ってみても、コイツなにやってんだろって視線をチラつかせつつ、自動ドアの前で途方に暮れるB食クラバーの姿を横目で見ながら進んでいく人の数はカナリ多い。
だからB食クラバーは自動ドアの前では、スキー場でリフトに乗る時ぐらい緊張する。8割方は大丈夫だろうと思って通過するのだが、あとの2割が、気をつけろ!とサインを出しているのだ。
さて。何度やり直しても自動ドアが一向に開かない場合、他の人が通るのを待つのも1つの手段だ。ソノ人が開けてくれたトコロで、B食クラバーも一緒に通るって寸法だ。…こうやって書くとなんだかまるで、オートロックのマンションに忍び込むコソ泥みたいでイヤだ。
だが今の場合、辺りを見回してみても他の人影は見当たらない。中では女王様がお待ちなのに一体どうすれば!焦ったB食クラバーは、念のためドアを手で引いてみた。しかし開かない。もしかしてっ!と思い、力強く押してみたけれどもビクともしない。
中に入れなくて困ったB食クラバーは、こうなったら店に電話して、あのぉ〜入り口開かないんですケド。でへでへでへ。とか言ってみよう!そう言えば電話番号が書かれてたっけなーと、再びメニューが書かれたボードの前に立ってみた。
すると、メニューボードの背後にあった透明のガラス板が横に動く。えぇ〜っ!コッチが入り口なんですかっ!と、ようやく状況を把握するB食クラバー。良く見ると、さっきまで開けようと苦心惨憺していた自動ドアの方には、ドント☆オープン!的なコトが書かれていた。
いやコレ、フツー間違えるかよ!と、自分で自分にツッコミを入れつつ、何事もなかったかの様に店内へと突入してみた。ソノ瞬間、女王様と目が合った。B食クラバーの顔は心なしか紅潮していたと思われるがソレは何も、女王様のご尊顔を拝見したからダケではないコトに、女王様はお気づきだったろうか。
周囲に人はいなかったと思うが、例えば近隣のビルの上の方から、中に入れずまごつくB食クラバーを見て笑っている人がモシいたら!とか思うと、恥ずかしさのあまりドコでも良いから誰も知らない遠くの街に引っ越したくなる心境に。とにかく、ようやく女王様とのランチタイムが始まった。
本日のランチはA・Bが共にスパゲッティで、スパゲッティじゃないのはCダケだった。今日はスパゲッティ気分じゃないよなー。でもCは¥1,050だからチト高いなーとか、先程までの動揺を引きずりつつイツモの様に迷いまくっていると、女王様が突然カウントダウンを始めたので、慌ててCランチを注文。Cランチは若鶏のトマト煮込み。パンかライスを選べる様なのでパンをお願いした。
程なく、サラダとスープが運ばれて来た。レタスの緑と、パプリカの赤と黄色の組み合わせが目に鮮やかに映える。コレにキッツいドレッシングがタップリかかってる店って良くあるよなーとか思いつつ、コノ店はそんなコト無くって良いね!とか思っていると、続いてメインが運ばれて来た。
トマトソースの赤と、付け合わせ野菜の緑が美しいコントラストを描く。コチラの色合いもマタたまらない。早速頂こうとしたB食クラバーを制する様に女王様が仰った。『良い仕事してるねー。』
最近B食クラバーは、特に誰かに褒められたりする様な仕事はした記憶がない。一体何のコトだろう?と首を傾げながら女王様の方を見てみると、女王様はメイン料理の皿を注視していた。
B食クラバーも視線を移してみるとソコには、中央部分に切り込みを入れて細くした後、まるで三つ編みの様にグル巻きにデコレーションされているアスパラがあった。
確かに美しい。過去にコノ様にデザインされているアスパラを、B食クラバーは見たコトがない。せいぜいがベーコンに巻かれたぐらいで一杯一杯だ。女王様がそのコトに触れなければ、全く気付かずに食べ切っていたに違いない。女王様の鋭い洞察力に感服だ。って言うか、もっとジックリ料理を見ろよ!ってコトなのかもしれないが。
女王様がお褒めになるなんて、コチラはなんて素晴らしい料理店なんだろう!と、自分では一切そう言った判断基準を持ち合わせていないB食クラバーが感心しながら食べ進めていると、半分ぐらい食べたトコロでお腹が一杯に。
いやマサカこれ気のせいだろ。とか思ったのだがヤッパリ、もう充分ですよぉ〜とのシグナルを胃が発している。女王様を見てみると、特に問題なく食事を進めていらっしゃる様子。
コノ差は何なんだろう?と考え込むB食クラバーに、解答はアッサリと示された。モシカしたらB食クラバーの体は、\500以上の量を食べると満腹になる様に設計されているのかもしれない。
そう言えば…。と、デザートのジェラートとコーヒーを口にしつつ、思い当たる節が数え切れない位浮かび上がって来るのを感じる。中でもハッキリとイメージ出来るのは、姉家族と高級レストランに行くとスグにお腹一杯になるのに、祭りの屋台では焼きそばを何個食べてもへっちゃらだってコトだ。
あぁ、コノ骨の髄まで染み込んだ貧乏症が憎い!もしB食クラバーがBIGで6億円当てて、世界中のあらゆる豪華な料理を何の不自由もなく食べられる身分になったとしても、ヤッパリ\500分食べたトコロで箸を置きそうな気がする。どんなコトをしても、自分の体の基本スペックは変えられないってコトなのかもしれない。
万が一B食クラバーが6億円当てたら、自分の体のタメじゃなくて他のコトにお金を使うとしよう。マズは手始めに、100パーセントB食クラバーに反応出来る自動ドアの設計から始めるか。