待ちに待った日曜日がカムヒア。コレから食べるコトが出来るであろう、パイシューに対す
る胸の高鳴りを示す様に、3月の空は高く青い。かなり春めいた気分をまといながら、B食ク
ラバーKと共に出掛けた。
しょっちゅう店の前を素通りしてはいたのだが、何年振りかで訪れるデュプレいしい。少々
緊張しながらドアを開けてみた。昔の店内の配置はどうだったのかサッパリ覚えていないの
で、まるっきり新しい店に入った気分だ。目に入るモノが全て美味そうで、B食クラバーKが、
『パイシューはドコやねん。』と言っても聞こえない振りをして店内を歩き回った。
一通り満足した後フト我に返り、『はっ、そう言えばパイシューってドコにあるんだろう?』
って辺りを見回すとB食クラバーKが得意げに指さしている。ソコには3種類のシュークリーム
が置かれており、右からパイシュー、小町シュー、小゛町シューと商品名が書かれていた。
小町シューねぇ。最近は秋田の特色を出そうとするモノについて、何でもかんでも『こまち』
って付けたがるよなぁ等と呑気に構えていると、さっきは何げに素通りした小゛町シューと言
う商品名に異常に目を惹かれた。小゛町シューと書いて、ごまっちシューと読む様だ。その
ネーミングセンス。一流の技を感じる。
パイシューはパッと見、おでんの揚げ物みたいな外見をしている。小町シューは表面に、
何だか良く解らないケド四角くて薄くて小っちゃいのが降りかかって焼かれている。小゛町
シューは小町シューの表面にゴマが振り掛けられている。一番人気はやはりパイシューな
のか、1種類だけ数が少なく、7ヶしか無かった。
もう一度、シュークリーム以外のケーキが並んでいるショーケースに目をやっていると、『こ
れドーゾ。』ってな感じで、ショーケースの上にお茶が差し出されていた。お茶を飲みながら
ゆっくりと商品を吟味して欲しいと言う店側の心遣いだろうか?早速頂いた。その方面には
詳しくないので残念だが、ハーブティーであるコトは間違いない。
数々のスウィーツが、極彩色を散りばめたがごとく美しく並んでいるショーケースを見てい
る内に、何故か三浦精肉店のショーケースが脳裏に浮かんだ。見事な迄に対照を成す2つ
のショーケースに、数学的な対称を感じた。こうして世の中のモノは全てバランスがとれて
いるのだと、素直にならざるを得ない。
パイシュー2、小町シュー1、ごまっちシュー1、ついでにくりくりとか言うモンブラン風シュー
クリームを1つ頼んだ。すると、そのシューを持って後に下がり、クリームを詰め始めた。店頭
に並んでいるのは皮だけで、注文を受けてからクリームを詰めるって言うのは、パイシューと
しては当たり前の行為なのだが、お茶なんか出して貰ったコトもあってか、モノスゴク丁寧な
様に感じた。
B食クラバーKも独自にパイシューを頼もうと思っていた(らしかった)のだが、まず最初に
頼んだ分が出来てから注文しようとしていた(らしい)。その時、1人のお客がフラリと現れ、
店頭に並んでいる残りの5ヶを指さし、『コレ、全部良いですか?』と注文してしまった。電光
石火の早業に、青ざめるB食クラバーK。その様子を見て、何だ、B食クラバーKも買うつもり
だったのか!と初めて解った。
呆然とその場に立ち尽くすB食クラバーK。その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる(様に
見えた)。店内は暖房が効いていて暖かいのだが、B食クラバーKの周りだけ寒風が吹きす
さぶ。その様子を見かね、『(しょうがないから)後で1ヶあげるよ』と、天使の様な心で囁くと
気持ちが落ち着いたのか、グイッとお茶を飲み干した後、ケーキを2種類注文し始めた。
シュークリームが5ヶ詰められた箱(くりくり含む)はズシリと重い。シュークリームでコノ重
さは無いだろうし、くりくりが異常に重たいのかな?と考えながら、家路についた。帰宅し、
パイシューを手に取ると、1ヶがやたら重い。今迄に食べたコトのあるシュークリームの中で
も間違いなく最重量級である。
やたら質感のあるシューはかなりパリパリ。クリームももちろんバニラビーンズが入ってい
るし、ベリーグッドだ。この瞬間、秋田市NO.1パイシューが決定した。(B食倶楽部が勝手に
認定。)ビアードパパの、もうちょっとライトな口当たりも捨てがたいが、東北六県の中で秋
田にだけビアードパパが無い事実を払拭させるのに充分な実力を感じた。
油断しているとあっと言う間に売り切れる可能性があるので、次回からは入店と同時に
ソッコーで注文するコトを固く決意したB食クラバーKの瞳に、もう涙は無かった。
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