B食クラバーには1つの記憶がある。以前渋谷の会社に勤めていた頃、お昼御飯を食べるタメに何度か、天下一番と言うラーメン屋に入ったコトがある、って言うモノだ。記憶の中にある天下一番は値段も安く、焼肉ラーメンが好きで良く食べていた。
醤油ラーメンの上に、肉とタマネギを甘辛く炒めた具が乗っかっていて、サッパリ目のラーメンのスープと、焼き肉のコッテリ加減が絶妙で好きだった。ラーメンには必ず、無料で半ライスって言うか、ボリューム的には1/4ライスが付くのも見逃せなかった。
秋田に帰って来ると、街角の何ヶ所かに天下一番の看板を見るコトが出来て、あぁ、天下一番って全国チェーン店だったんだ!と、何も考えずに受け入れた。秋田で知り合いになった人と、希に天下一番のコトを話す機会があったがソノ度に、天下一番では焼肉ラーメンが好きなんですよねぇ〜とか言うと話が通じていたので、ヤッパリ全国チェーン店なんだなと、まるっきり疑うコトをしなかった。
ソレがどうやら違うらしいと思い始めたのはワリと最近のコト。数年前秋田市内に、全国チェーンのラーメン店が何軒か出来たコトがあった。ソノ時に、全国チェーンのラーメン店が秋田に来るなんて珍しいよね!って話は良く聞いたが、秋田には有名な全国チェーン店であるトコロの天下一番が既にあるじゃない!って言葉を全く聞かなかった辺りから、アレ?と思い始めたのだ。
もしかして天下一番は、渋谷で良く食べたアノ店とは縁もゆかりもない、全く無関係の店なのだろうか?でも焼肉ラーメンとそして、定食系のメニューが多いってコトでも話は通じているのに!
もしかして東京から秋に帰る時に次元の壁を越え、コノ平行宇宙に無数に存在するパラレルワールドへと迷い込んでしまったのか?…それにしては天下一番に関する点以外は、全ての情報が一致しているのが気に掛かる。せっかく見知らぬ世界に来たのなら、もっと色んなコトが食い違ってる方がよりドラマチックだろう。そんな体験コソしてみたい。
ま、SFチックな妄想は置いといて、謎は究明しなければならない。そうでなければ気になって、ますます夜も眠れなくなっちゃうよっ!ってなってしまう。ソンナ時に、頼りになるのはインターネットである。渋谷・焼き肉ラーメン等と入力して、バーチャル世界へと疑問を投げかけてみた。
程なく答えは見つかった。そのラーメン屋の名前は天下一と言うらしい。誰かが食べたと言うヤキニクラーメンの写真を見るとマサに以前、B食クラバーが食べたモノと同じ外観をしている。コレで間違いないだろう。B食クラバーが何度かランチを食べたラーメン屋の名前は天下一で、そこのヤキニクラーメンが好きだったのだ。
心のわだかまりが消え、身も心も楽になるB食クラバー。しかし便利な世の中になったモノだ。自分が忘れていた事柄でさえも、キーボードを10ヶも弾けば事実が明るみにされる。この調子で進んで行くと近い将来、記憶を必要な時ダケ出し入れ出来る様な、そんな時代が来るんじゃなだろうか。って、またもやSFチックな話になっているが。
さて、クラバーKである。つけ麺好きのクラバーKは、ドコからか大勝軒がオープンすると言う情報を聞きつけ、開店の2〜3日前にB食クラバーに、一緒に行こう!と誘って来たのだ。ソノ時は丁寧に断ったのだが以後、コトある毎に大勝軒に行こうと誘ってくる。昨日も今日もそうだった。
クラバーKのつけ麺に対する執念は恐ろしい。そもそも取り立てて宣伝もしていない大勝軒のオープン情報を、一体ドコから聞きつけたのか。仕事中のB食クラバーに電話をかけて来、今日の晩御飯は大勝軒にしよう!と誘われる。断る理由もないので、仕事が終わった後で良かったらと答えてみたが、ソノ時から嫌な予感はした。
大勝軒についたのは19:00頃だったのだが、既に暖簾はしまわれ、店の灯りも落ちていた。前回B食クラバーが行った時は空いていたのだが、東京の名店大勝軒が秋田にオープンした!と聞きつけた方々が沢山来店し、最近は混雑も激しいらしい。ソンナ中、19:00頃にノコノコ行って、果たして食べられるのだろうかと密かに思っていた心配が、現実のモノとなったのだ。
つけ麺スイッチがオンになっていたクラバーKはどうするコトも出来ず、自分が一番好きなつけ麺を食べられる赤坂ラーメンへと車を走らせ、ソコで何とか気分を紛らわす作戦に出た様だ。
そうして納まったかの様に見えたクラバーKのつけ麺心だが、どうやらソレは1日すら持たなかった様だ。気だるい午後のまどろみを迎えていたB食クラバーの耳元で、携帯が激しい音を出して鳴った。発信者はクラバーKである。ちょっと早いケド大勝軒に行こう!と言うコトだった。
更に嫌な予感が走るB食クラバー。14:30頃店に着いてみると暖簾は片づけられていて、入り口には本日の営業は終了しましたとの貼り紙が。ヤハリ。昼の営業で一日分のラーメンを作り切っているんじゃ、午後は何時に行ったって食べられるワケはないのだ!大勝軒で食べるには、お昼時でなければ無理なのだ。いや、その時間に来たからって確実に食べられるってコトでもないだろう。もしかしたら東池袋並に行列が出来ているかもしれない。
そんなワケでクラバーKには、大勝軒に行くんだったら昼の、可能な限り早い時間に来なきゃねと言い聞かせ、取り敢えず今日の晩御飯はドコで食べようと、考えをめぐらせた。大勝軒のつけ麺を食べる気満々だったクラバーKには、気の利いた代替案は思い浮かべられなかった。コンナ時は基本に帰ろう。何年も行ってないし、天下一番に行ってみよう!と、ようやく話がまとまった。
店の駐車場に入っても、何だか気分が高揚しないクラバーK。ソレを尻目に店の中に見えるメニューを見つめるB食クラバー。するとソコに、なんとつけ麺の文字を発見した。直ぐさまクラバーKに、ココにもつけ麺がある!と報告したが、全く盛り上がる気配が見えない。しかし一瞬で、天下一番のつけ麺を食べる気満々になったB食クラバーは、そんなクラバーKを意に介さず、店内へと足を踏み入れていった。
つけ麺には味噌としょうゆの2種類があり、味噌の方にはピリ辛と書かれていたので、ソチラを頼むコトにした。何を頼むか散々迷ってクラバーKも、結局はつけ麺を頼んでいた。どうせつけ麺しか食べないのなら、最初っから迷う必要もないのになと、思わなくもない。
思ったよりも大きい器に入って、つけ麺は運ばれて来た。とろみの強い味噌ダレ。そう、スープと言うよりはタレと表現した方がシックリする。大きくて柔らかいチャーシューの他にはメンマ、カナリ小さくカットされたキャベツ炒め、メンマと、そしてレモンの輪切りが入ってラー油がかけられている。
柑橘系の果物がスープに入っているラーメンは何度か食べたコトがあるが、つけ麺では初めてだったため驚く。このレモンについて、B食クラバーは濃い〜味噌ダレの影響であまりレモンの風味は感じるコトが出来なかったなと思ったのだが、クラバーKはとても鮮烈にレモンの風味を感じたらしい。どうやらクラバーK、コトつけ麺になると、五感の全ての官能が鋭く研ぎ澄まされるらしい。
比較できないので違っているかもしれないが、麺は普通のラーメンに使用しているのと同じモノではないだろうか。そして、秋田で何軒かつけ麺を食べたが、コノ店で始めてスープ割りを出して貰った。食べ終わったタレに混ぜてそば湯風に使っても良いし、スープが薄くなる後半、スープ割りを入れてしまっても良い。食べ方は自由だ。今回はそば湯風に使ってみた。すると何故か、つけ麺を食べたはずなのに、フツーの味噌ラーメンを食べた様な後味になってしまった。今日は使い方を誤ってしまった様だ。
トコロでクラバーK。つけ麺は好きだけど、秋田じゃつけ麺だしてる店が無いからね!と言って、ず〜っと赤坂ラーメンで食べ続けていたのだが、最近食べた何軒かに加え、天下一番でもつけ麺を出していると知り、もしかしてつけ麺ってのは、自分が思っているよりも多くのラーメン店で提供しているんじゃないかと考えた様である。コレから秋田市内のラーメン店を全て周り直してしまいそうなオーラを感じ、B食クラバーの背中に、気持ち悪い汗が流れる。コノ嫌な予感は、是非とも予感だけで終わって欲しい。
『I have a bad feeling about this.』と言ったオビワンやルーク、ハンソロの気持ちが今なら解る。