たぬき煎餅

住 所

東京都港区麻布十番1-9-13

初めて食べた日
2003/10/26
TEL.

03-3585-0501

 

営業時間
9:00〜20:00

前 説


 以前、麻布のたい焼きについてB食クラバーがどの様に感じているのか、その思いの丈を
女王様にホットに、ほとばしる情熱を抑えきるコト無く一気に、捲し立てる様に語ってしまった
コトがあった。そう言う人に対しては全てを語り尽くさせ、相手が落ち着いたトコロでコチラか
らの話を始めると言うのは常套手段で、その時の女王様も恐らくその様なコトを考えていた
に違いない。

 コチラが話し終えたコトを察した女王様は、絶妙なタイミングで次の話を切りだした。『麻布
だったら、たぬき煎餅が美味しいんだケド。』…!?今迄B食クラバーが話すのに消費した
時間を全てリセットする、桃源郷を思わせる様な甘美なキーワードが、女王様の口から発せ
られ、その後の時間と空間を全て支配し始めた。

 麻布に…、たぬき?何とも不釣り合いな両者の組み合わせには、新鮮さを感じずにはいら
れない。ヒョットしてその昔、今程東京がモダニズム溢れるメトロポリスになる前は、麻布の
辺りはたぬきの生息地として有名だったのだろうか。気が付くと、頭の中で猫の形をしたバ
スが、10台程一斉に走りだした。

 食べたコトも見たコトも聞いたコトも無いが、女王様の口から聞くと、とても美味しそうに感
じる。コレは次回、東京に行ったら絶対に買ってみなければなるまい。そう思いながらも、実
際には時間の経過と共に、いつもの様にきれいサッパリ忘れていた。

 そのコトを思い出したのは、突然の東京旅行が決定してからである。何か良いお土産は無
いかと考えを巡らせていたトコロ、本当に不意に、突然たぬき煎餅のコトを思い出した。いつ
も甘いモノばかり買ってもしょうがない。タマにはしょっぱいモノを買おう!と思い立ち、今回
の東京旅行のお土産は、たぬき煎餅にするコトにした。インターネットで検索してみると、た
ぬき煎餅とは、全体が若干たぬきの姿を象ったモノになっており、表面にはたぬきの絵が焼
き印されている様だ。

 美味しい(っぽい)モノを紹介して貰ったし、そう言えば秋田小雪の代金は払ってないし、女
王様にもお土産として買ってこよう!と思い伝えると、『たぬき人形の入ったモノを希望しま
す。』と言うコトであった。更に続けて、『ちょっと箱が大きいので恐縮ですが。』と言うコトであ
った。コノ時のB食クラバーは、多少箱が大きい位どうってコト無いでしょ!と気楽に思い、引
き受けるコトにした。コレが後程、華厳の滝の様な冷や汗を流す結果に繋がるとも知らずに。

Comment
phase #1


 以前東京に住んでいた時は、麻布に行くためには広尾駅辺りからチョット時間をかけて歩
くか、バスを利用する位しかなかったのだが、地下鉄大江戸線と南北線が開通して麻布十
番駅が出来、駅を降りたらスグに商店街が広がると言うのは、現在秋田に住むモノにとって
は時代の流れを感じるトコロ。

 平面だけを考えると近くに駅が出来て非常に楽になったと考えられるのだが、大江戸線は
都内を走る地下鉄の中でも、最深部に路線が作られており、ホームが地下8階にある駅もザ
ラである。そのため、一時ゆめもぐら何てニックネームが考えられていたそうだが、コレはどう
言う理由かで却下されたらしい。

 麻布十番の駅も、ひたすら長いエスカレーターを何度も何度も乗り換え、ようやく地上に到
達するコトが出来る。青く広がる空が見えたのは、自力で長い時間土を掘りながら突き進ん
だもぐらの心境が、手に取る様に解った気分になる瞬間であった。実際のもぐらは、地上に
出た瞬間にコノ世とグッバイするが。

 さて、地上には出たモノの、麻布十番商店街のどの辺にあるのかと、商店街の地図を一
所懸命見て悩んでいると、B食クラバーの頭の後方から、同行していたクラバーMTが素っ
頓狂な声を挙げた。クラバーMTの視線の先を追うと、ソコにはたぬき煎餅の看板が。なん
と駅から出てその真ん前にあったのだ。何だか地図を見ていた時間を損した気分になった。

 他にお客さんはおらず、カナリ清潔な店内。入り口には宮内省御用達の文字が。現在で
はその言葉にはホトンド意味は無いが、その栄誉を授かったのは昭和10年とのコト。多分、
審査が厳しかった頃のコトなので、どこからともなく自然と威厳が込み上げてくる。

 店内に入ると、70代か80代かと思しき、しかしソノ年齢には思えない程矍鑠とした老婦人
が1人、店番をしていた。秋田でよく見掛ける御老人とは、ひと味もふた味も違う。至る所に
試食のせんべいが設置されており、迷うコト無く口に運んでみた。すると、口一杯に広がる
香ばしさ。醤油が違うと言うコトであったが、まさか醤油ダケでソンナ。と高をくくっていたの
のに、素直に脱帽せざるを得ない。気が付くと店内は他に4組位のお客さんで一杯になって
いた。

 一通りの人達に対するお土産を手にした後、女王様が所望している人形入りの煎餅を探し
てみた。人形とは言いながら、勝手にぬいぐるみの様なモノを想像していたのだが、ドコを探
しても見つからない。おっかしいなぁ〜と思いながら更にショーケースを見てみると、\5,000
の詰め合わせセットが目に入る。うわっ高いなぁ〜コレ、とか思って、ドンナ内容なのか興味
半分で見てみると、その中には瀬戸物で出来た、高さが2cmにも満たないたぬきの置物が!

 まさか女王様が所望していたのはコノ商品なのか?そう言われれば『恐縮です。』って言
われたコトにも合点がいく。実はコノ時迄、女王様は人形が欲しいんだろうと思っていたのだ
が、ココに来て、\5,000の煎餅詰め合わせが欲しかったコトに気が付いた。マジですか。フト
横を見ると、\10,000の詰め合わせがあり、ソレにもたぬき人形が入っていた。

 コレは探せば他にも人形が入っている詰め合わせがあるかもしれないと思い、\1,000とか
\2,500とかの安い箱を見てみたが、それらにはドコをどう見ても人形等入っていなかった。
どうやら\5,000以上の高級な詰め合わせにのみ付属してくる様だ。多量の発汗が全身を襲
い、目の前が真っ暗になる。\5,000と言えば、今回の旅行の総お土産代に匹敵する程の金
額である。

 真っ青な表情で何かに救いを求めるB食クラバーの視線に、しかし光は射し込んできた。店
内の一角に、
三浦精肉店と同規模のショーケースがあり、ソコにたぬき人形が勢揃いしてい
る。それらは1個1個販売されている様だ。ココでドラスティックな思考プロセスの変換が実行
された。すなわち、女王様が欲しているのはたぬき人形で、煎餅はついでで良いのだ!と。

 コレぞ、人間の理性を木っ端微塵に粉砕した、動物本来の自己防衛本能の現れか。ドラマ
ティックな発送転換をしたB食クラバーは、ココには値段を書くコトも憚られる様な安い煎餅と
たぬき人形を1つ買い、女王様とのロマンティックな(ハズの)対面に臨むコトにした。

Comment
phase #2


 サスガに、\5,000の詰め合わせを買わなかったコトを伏せたまま女王様に手渡せる勇気
が無かったため、メルを入れてみた。コレも、何の工夫もなく事実のみを伝えるメルでは、
アッサリ却下される可能性を見いだしたため、推敲の上に推敲を重ね、その上で推敲したコ
トをまるっきり感じさせない文章を入力してみた。所要時間約30分。このメルを見た女王様
は、まさかB食クラバーがコノ様な苦労をしたとは思っていないハズである。

 読み返してみる。我ながら傑作と自画自賛。コレを読んだ女王様は、『アッハッハー。解っ
たよぉ〜。大変だったねぇ〜(笑)』とか言う返事をスグに送ってくるだろう。送信する。…が、
返事は来ない。夜になっても返事が来ない。まさかコレは、『んなモンいらねぇよ!』って言
う気持ちを伝える沈黙のアピールなのだろうか。帰りの飛行機がヤケに揺れた様に感じたの
は気のせいか。

 翌朝、ようやく女王様から届いたメルには、B食クラバーが考えたのと、ほぼ変わらない内
容の文章が書かれていた。ホッと胸を撫で下ろしたが、何故今迄返事がなかったのかも気
になるトコロ。予断を許さぬまま、女王様にたぬき煎餅を渡す時間が訪れた。尚、たぬき煎
餅が気に入らない場合の保険として、うさぎやのどらやきも用意するコトにした。

 約束した時間よりも少し早めに持ち合わせ場所に着く予定だったが、うさぎやのどらやき
を会社に忘れたコトに気づき引き返す。こんなトコにもB食クラバーの動揺が見え隠れ。先に
待ち構えていた女王様に、まずはうさぎやのどらやきから渡す。大変喜んだ様子の女王様。
ツカミはオッケーである。

 そして遂にメインのたぬき煎餅を渡す。その時のB食クラバーの指先は、僅かに冷たかっ
たハズであるが、女王様が気が付いたかどうかは解らない。袋を開けて中身を見た女王様
は、意外な程簡単に喜んだ。『コンナのもあるんだぁ!』予想外の反応に、一気に緊張がほ
どける。続いてたぬき人形を見せると、コレも予想以上に楽しんでいる様に見え、更に次の
様なコトを喋った。

 『この人形が欲しかった。』 …!歓喜するB食クラバー。苦し紛れに自分への言い訳半分
で思いついた行動が結果として正しかったのだ。後はイツモの様にWe have a royal time。
時間はあっと言う間に過ぎて行った。

 落ち着いて考えてみると、B食クラバーのアマリの狼狽振りに、女王様が優しく対処してく
れたのかもしれないが、コレからこんなコトがあった時は、まずソノ値段を聞くコトから始めよ
うと、至極当たり前のコトを心に誓った。

 

1枚 \120〜 \500 \600 \1,000 \2,500〜\10,000等各種詰め合わせもゴザイマス。