□Raiders of the lost mistery about can.


 高揚した気分のまま、りあさんの方を振り返る。先程とは違って、嬉々とした表情で缶ラ
インを見つめていた。コレで贖罪はなされた。そもそも缶の謎を解くために来たのだし、コレ
以上のコトって臨めないだろう。ココまで来て、コノ10分程のワタクシが、缶飲料にはどうや
って中身を詰めて、どうやって栓をするのかって疑問を解決するために来たと言う、当初の
目的を忘れていたコトに気が付いた。自分の中の疑問ではなく、同行者の機嫌をとるため
オロオロしていたのでは、本末転倒も甚だしい。本来の目的を果たすべく、その疑問を
素直にツアーガイドさんにぶつけてみた。何よりその回答こそ、りあさんも待ち望んでいた
モノのハズであるのだから。

 ツアーガイドさんの顔が、一気に花開いた様に見えた。もしかしたら、コノ質問を待ち望ん
でいたのだろうか?と思えるぐらい。ガイドさんがTVモニターの裏から何かを取り出す。
ツアーガイドさんは、栓をされる前の缶と、缶のフタを両手に持って、我々の前にさしだした。

 缶のフタとは、缶上面の銀色の部分全体で、それを中身を注いだ缶に対してフタとして
利用するのだと言う。言葉だけでは上手く説明しきれない。写真を撮れなかったのが悔し
くて悔しくて仕方ない。缶の側面を切る缶切りがあると思うが、それで缶のフタを切った状
態がスタートだった。

 成る程コレならば、缶に対しての注ぎ口も大きいし、フタだって閉めやすい。缶の一部に
穴を開けてソコから中身を流し込み、更にハンダとか使って熱処理しながら密封するんだ
ろうとか考えていた自分が恥ずかしい。そんな非効率的で、衛生的でない方法でなんて、
作るワケ無いじゃないか!IQ120のサプリ問題を解けずに回答を聞いた気分である。モチ
ロンもやっとボールを投げる必要もない。100%スッキリ!である。

 気持ちに余裕もできたワタクシは、ツアーガイドさんに質問を連発。どうにか15分位前の
状態に戻すコトが出来た。実際に缶に中身を入れるトコロ、フタをするトコロは遠くにあっ
たので見えなかったが、商品に製造年月日を打つトコロを間近で見るコトが出来た。コカ
コーラ工場の10倍位で進む製造ラインには、やはり人が1人も存在しない。全てがオート
メーションで動いている。

 機械によるチェックで引っ掛かった商品は、ラインの横にあるターンテーブルに弾き出さ
れ、それはサスガに誰か人間が取りに来る様だ。誰かが手を差し伸べる迄、同じトコロを
グルグル回っている。…それって自分の人生にも似ているんじゃないかと思えてきて、
思わず冷たいモノが背中を伝った。

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